おじさん、再びダンジョンへ
翌々日、俺は再び渋谷ダンジョンへやって来た。ポーションなど、しっかり準備してきたつもりだが少し不安はある。けれど、それ以上にワクワクしている自分が居た!
装備は監理局で借りたもの。警棒と盾、そして防刃ベストの組み合わせだ。これでも、なんとか第三層辺りまでの魔物とは戦えるらしいが、それ以上の階層の敵が相手だと心もとない。
俺が目指すのは第十層。というわけで、考えがある。時空戦艦のファクトリーを使い道中で武器を作成するのだ。素材は、ダンジョンの魔物から手に入れる。それまでが不安だが、まあ時空戦艦のスキルがあれば死ぬことはないだろう。
第一層の草原を眺めながら軽くストレッチする。折角のダンジョンなのだから自分の足で進んでいきたい。アイが言うには時空戦艦を飛ばして一気に十層へ行くことも可能ではあるそうだ。が、それでは面白くないし、目立ちすぎる。
「アイさん、ダンジョンの攻略を始めようか」
「了解です。私はヨータ様の冒険をサポートします」
「よろしく頼むよ」
「それと、今は私の体がありません。人前で話していると独り言をつぶやく怪しい人物と思われるので、ご注意を」
「分かってるって」
今は夏休みシーズン。ダンジョンを訪れる人も多い。アイといつでも話せるように、なるべく人の居なさそうなルートを進んでいこう。
俺は軽い足取りでダンジョンを進んでいく。第一層の入口付近ではスライムくらいしか出てこない。まだまだ安心だな。なんて考えているとスライムを発見。こっちから仕掛けていこう。
「行くぞっ」
スライムへ向かって走る。結構離れていたはずだが、一瞬で魔物との距離が詰まったことに自分でも驚く。
アイは俺の肉体が強化されていると言っていたな。俺の体は、思ってた以上に強化されているのかもしれない。
警棒でスライムを叩き潰す。スライムの体が弾けて、後には魔石が残される。ちょろいね。この調子で、湖まで行ってみよう。
第一層の湖までの攻略はサクサクと進んだ。出てくる魔物がまだ弱いからな。ここまでは余裕よ。以前は、ここまで来るのに一時間はかかっていたのだが、今回は十分くらいしかかかっていない。それに、全然疲れてないな。
疲れを感じにくい体っていうのは素直に嬉しい。第一層の湖周辺は地面がぬかるんでいる場所が多いらしいが、なんとかなりそうだ。
第一層の湖は広い。ここを迂回するだけでも数時間はかかるって話だったが、頑張ろう。
「ヨータ様、泳いで渡れば一直線ですよ」
「今の肉体ならそれもできそうな気はするけど……やめとこう。湖の周囲を探索しながら進むとするさ」
この辺り、確かにぬかるみが多い。けど今の俺はそんな地形をものともせずに進む。スライムとの戦闘も起きたが問題なし! 順調に進めて嬉しいね。
俺が湖の対岸へ着くまで、数十分程度だった。やっぱり、アイがおこなった肉体強化の効果は大きい。その事実を実感するほど、自信につながっていく。さあ、第一層の後半戦も進んでいこう。
休憩は必要無さそうだ。ダンジョンを進み続けると、スライム以外の魔物を発見する。丸い角の生えたウサギ、アルミラージ。
角ウサギは俺の姿を見るや、跳び跳ねながら襲いかかってきた。が、時空戦艦のバリアが魔物を弾く。弾かれた魔物を叩いて倒す。まだまだ余裕だな。
さて、倒した魔物をどうするかだが……ちょっとアイに相談してみよう。あまり悩む必要はないかも。
「アイさん、倒した魔物は時空戦艦の倉庫に保管できる?」
「ええ、問題ありません。収納しますか?」
「じゃあ、お願いね」
荷物の収納に関しては問題なし。この前、時空戦艦の見学で見せてもらった倉庫はかなり広かったし、すぐに収納が足らなくなるということは無さそうだ。荷物の不安が無いってのは良いね。
一応、リュックくらいは持ってきてる。この中には回復薬のポーションが入っていたりするが、使わないで済むことを祈ろう。
その後もスライムや角ウサギと遭遇するが特に苦戦することもなく、楽しくダンジョンを進んでいく。そんな折、草原のあちらこちらが焦げている場所を発見した。
あの時のワイバーンの姿を思い出す。本当に、ルリカさんを救えてよかったと思う。それだけでも俺がこの力を得た意味があるというものだろう。
ダンジョンをさらに進む。やがて、俺はダンジョンの第一層が終わる場所へ到達した。黒い壁がそびえている様子はダンジョンの入口を思い出す。
ダンジョンはこうやって端から端へ、黒い壁から黒い壁へと進んでいく。壁の向こうの景色を思うとドキドキする。まあ、向こう側がどうなっているかは前もって情報収集して知ってはいるんだけど。
「ヨータ様、少しお休みになられますか?」
「その必要は……まだないかな? このまま第二層へ向かう」
「休憩が必要な時は、いつでもおっしゃってください」
「ああ、その時はお願いする」
アイと話しながら、俺は黒い壁に触れる。一瞬景色が真っ暗になり、ぐんっと上昇する感覚があった。そして、俺の目の前にはうっそうと繁る森が広がる。ここからが、冒険の本番だ!




