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おじさん、頑張る

「ヨータさん、良い手を思い付いたのですが」

「良い手?」


 少し離れたところから、リッチ先生が俺に話しかけてきた。良い手とはなんだろう? 気になるね。


「数十秒いただけませんか」


 ふむ。リッチ先生がここで裏切る可能性は低いかな? すでに彼は海賊船団に敵対してるし、ここで俺たちを倒そうとしても、勝てないのは分かっているだろう。なら、彼の言葉は信じても大丈夫だと思う。判断ミスでなければ良いが。


「分かった。その間、あんたを守れば良いのか?」

「いいえ、ゴブリン相手に遅れは取りませんよ」

「だろうな。じゃあ、俺たちは適当に暴れてるぞ」

「ええ、暴れちゃってください」


 この船につける火は、こんなもので良いだろう。ゴブリンたちの多くは船の上を逃げ惑っているが、中には俺たちに向かってくる者も居る。まあ、ゴブリン程度の相手なら簡単に倒せるのだが。


 近付いてきた一体に対し、腰の刀を抜く。抜刀して一瞬でゴブリンを斬り伏せる。船の上で戦いながら、時空戦艦の状況も気になった。空を見ると戦艦が魔王と戦っている。そんな戦艦に向けて船から砲弾が打ち込まれていた。


「アイ、そっちは大丈夫か?」

「魔王にバリアを破られるのが厄介ですね。下から飛んでくる砲弾もチクチクして嫌な感じです」

「俺たちも頑張る。なんとか船を持たせてくれ」

「承知いたしました。全力で対処します」


 アイと話ながら、手近な魔物を斬り伏せる。いつの間にかゴブリンに混じって魚人のような魔物が居ることに気付いた。こいつら、泳いでこっちの船に渡ってきたのか? 泳ぎが得意な種族ってのは良いねえ。


 考えながら戦っていると、リッチ先生の方から「準備ができました!」と聞こえてくる。もう数十秒経ったか。さて、どうなることやら。


「魔法を発動させます。驚いても良いですからね」

「自分からハードル上げていくじゃん」

「それくらいの大魔法ですぞ」


 リッチ先生の回りに魔方陣が展開され、光った。これは……海の神でも召喚するのか? なんて思ったものの、特に何も起こらない。失敗か? ちょっと肩透かし。


「先生? 今、何か……?」


 起きたのか? と聞こうとした時、足元が揺れた。何かが船にぶつかった感じだ。俺に見えていないところで何かが起きている。それは直感的に理解できた。


「ヨータさん、三国志はお好きですか?」

「ん? まあ、嫌いじゃないけど」

「赤壁のあれですよ」


 赤壁のあれ? 考えを巡らせ、あるものが思い浮かぶ。走り、船の縁を見ると、燃えている船から別の船へ木の幹らしきものが伸びている。そのような幹が、また別の船へ伸びているのではないか? だとすれば、やるじゃん! リッチ先生!


「船の素材から幹を生み出し、船同士を幹で繋げました。これで、この船を機転に別の船へと火は燃え移っていくでしょう」


 船同士が繋がってしまっては、動きは更に制限されただろう。可哀想、だなんて思わないぜ。相手は魔物の海賊団だからな。


「皆、こっちだ。次の船へ移動する」

「「「おおー!」」」


 皆の返事に元気をもらう。俺たちは幹を伝って次の船へ移動する。先生の魔法、移動にも便利だ。さっきはあまり驚いてあげられなくて悪いことしたかな? 驚くタイミングを逃しちゃったなあ。


 さて、皆頑張ってくれてるんだ。おじさんも頑張っちゃうぞ! 奮闘しているところを皆に見せちゃる!


 次の船でも適度に火をつけ、混乱した魔物たちを倒していく。俺やメグ師匠、リッチ先生の強さはある程度分かっている。驚いたのはルリカさんの急成長ぶりだ。


 今のルリカさんは魔法の腕を使い、盾と刀を併用した戦闘スタイル。人間って腕が二本増えるだけであそこまで強くなるものか。いや、違うか。ルリカさんがそれだけ頑張っていたということ。そして、メグ師匠やリッチ先生といった師に恵まれたこと。


「おじさん、感動しちゃったな……」

「ヨータさん、何か言いましたか?」


 近くを走るルリカさんに聞かれ「独り言だよ」と誤魔化した。素直な気持ちを伝えるのは今じゃない気がしたから。


 ますます、頑張りたい気持ちになる。そして、俺の刀を使った戦闘技術はかなり形になっていた。俺の一つ一つの動きが、これまでの戦闘よりも綺麗だと思う。形稽古ってのはここまで効果があるものか!


「うおりゃあああー!」

「ヨータさん、張りきってますね。なら、私も!」


 そして「うおりゃあー!」と叫ぶルリカさん。ル、ルリカさん!? 彼女のそういう叫びは初めて聞くので、驚いてしまった。


 なんだか、面白くなってきた。皆、この戦闘の中でハイになっているのかもしれない。ただ、ハイになって悪いということはないと思う。このまま勢いで辺りの船をぶっ潰してやる!


 船から船へ移り、魔物たちを倒していく。そんな中、アイから連絡が入る。


「ヨータ様、先程より、こちらからの攻撃が魔王に効いているようです。そちらで何かありましたか?」


 こっちで何か? 魔王にダメージが効いているのは嬉しい知らせだが、その理由か。うーん……あ!


「もしかして、サン・リバイアは配下の海賊から力を得ている?」

「だとすれば、ヨータ様。このまま暴れ続けてください。私は魔王との戦闘を続行します」

「ああ、お互い頑張ろう!」


 予想が正しければ、俺たちが頑張るほどアイの方も楽になる。この調子で戦っていくぞ!

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