おじさん、海賊船に火をつける
艦橋へリッチ先生も呼び、作戦会議をおこなった。その結果、シンプルな作戦が決まる。まず、時空戦艦は敵の大ボス。魔王サン・リバイアにぶつける。かなりの大任だが、アイを信用して任せる。
その間に、俺たちは魔王と共に行動する海賊船を狙う。時空戦艦の転移能力で飛び、船に侵入したら火をつける。久しぶりに、アーマーの火炎放射器が活躍する時だ。ワクワクするね。
そこから先は臨機応変だ。より複雑な作戦を作っても良いけど、敵の情報が少なすぎる。これでなんとかするとしよう。というか、なんとかなってくれ。
「ヨータ様、時空戦艦はミスリル装甲により、雷に対する耐性を得ています。仮にバリアを破られたとしても、しばらくは耐えられるかと」
「しばらくは、じゃない。耐えてくれ。墜ちたりしないでくれよ」
「承知いたしました。全力で船を持たせます」
「それじゃあ、作戦も固まったし、海底ダンジョンの決戦を始めようか」
時空戦艦が空へ上る。最高速で嵐の海を進んでいく。せっかく晴れてたのによ。魔王のせいで天気が最悪だぜ。
「……それで」
俺は艦橋に集まったメンバーを観る。リッチ先生は震えているが、メグ師匠もルリカさんも覚悟の決まった顔をしている。ただ、正直複雑なんだよな。手を貸してくれるのはありがたいけど、危険が伴う相手に向かっているのは事実だからな。
「二人とも、良いのかい?」
「ああ、魔王種への雪辱を果たすぜ!」
「私も、今度は一緒に戦います!」
ふむ、彼女たち。状況が分かってからすでに戦う気充分だ。リッチ先生の方へ目をやると、彼は震えながらも「心配いりませんよ」と言ってくれる。その言葉は、彼自身を鼓舞するために使っているように見える。二人はともかく、彼は大丈夫かなあ。
「先生は無理せず、戦艦に残ってても良いんですぜ?」
「いえ、ヨータさん。我はあなたたちに魔法を教えた身ですから、先生として最後までついていきますよ」
アイのリングがある以上、土壇場でも裏切ったりはしないだろうが……彼はだいぶ無理をしているのが分かる。ほんと、無理はしなくても良いのだが……心配だぞ。
「……それに、我も新しい魔法を開発しましてね。きっと皆さんの役に立ちましょうぞ。それと、少なくとも魔法に関しては皆さん充分な力量です。ですから、敵船に侵入して火をつける作戦。うまく行きますよ」
リッチ先生。あんたがやられても骨は拾ってやるからな。と、そろそろ敵船団が見えてきたな。そして、船団の上を浮遊する巨大な龍の姿も見える。まるで大陸が空に浮かんでいるよう。第四層の白鯨すら上回る大迫力だ!
あれが、大魔王サン・リバイア。時空戦艦の接近には向こうも気付いたようだ。魔王は大きな口を開け、そこから稲妻が走る。艦橋の外が光に包まれ、轟音が鳴り響く。
「被害、軽微。思ったよりは耐えられますね。ですが、流石は魔王の一撃。バリアを貫通してきます」
「アイ、ここは任せても大丈夫か?」
「ええ、ヨータ様たちは海賊船団を」
「分かった。転送してくれ」
俺はもう一度、皆の顔を見る。皆、やる気充分という感じ、ならば俺は止めないよ。これからの戦闘、よろしく頼む。
「皆、力を借りるぞ!」
「「「おおー!」」」
俺たちの叫びに合わせ、転送が始まる。周囲の景色が歪み、数秒後には敵船の上に立っているようだった。転送と同時に俺はアーマーを纏っている。これで、思いきり暴れてやる! やったるぜ!
「ヨータ様、今回はヨータ様以外の皆さんにバリアを張っています。存分に暴れてきてください」
「ああ、分かった!」
アイからの頼もしい言葉を受けとりながら周囲を確認する。この船は、ゴブリンたちが乗っているようだ。その多くは突然現れた俺たちに動揺している。
「ヨータの兄さん。こいつら大砲で時空戦艦を狙おうとしてたみたいだぜ」
「なんだと。そんなことさせるかよ」
こいつらの海賊船。見た目は木造の帆船だが、水中を進んできたり、大砲はかなりの射程距離があったりで侮れないんだよな。最も、こいつら海上で密集しすぎて潜ることもできないだろうが。数が多いってのも考えものだね。
「——チェストー!」
メグ師匠が叫び、大砲を準備していたゴブリンたちを一閃する。おーおー張りきってるね。なら俺は、そんな船に火をつけるとしよう。ヒャッハー! 海賊船は消毒だあ!
メグ師匠が手近なゴブリンを刀で切り裂き、俺は火炎放射器で船に火をつける。少し離れた所を見るとリッチ先生が空気の球でゴブリンたちを蹴散らしていた。
ルリカさんは——ゴブリンの中でも一際強いゴブリンロードと対峙している。確か、あの魔物の強さはBランクに指定されていたはず。今のルリカさんにとって、そのランクの魔物は厄介な相手になるのだろうか?
少し不安な気持ちで見守っていると、ルリカさんが動いた。空気で作った腕を使いゴブリンロードを一方的に掴み、甲板に叩きつける。す、すげえ! やっぱあの腕の魔法こええ!
今のルリカさんならBランク程度の相手には苦戦もしないだろう。少し安心しつつ、俺は船を焼き続けるのだった。




