おじさん、幽霊退治
翌日、俺は艦橋の館長席に座り、外の様子を眺めていた。第四層は相変わらず嵐が吹き荒れている。たぶん、嵐がやむまで待つというのは無駄だろう。それなら、このまま進んでいくべきか。
「アイ。嵐の中で、また海賊船が襲ってくると思うか?」
「襲ってくる可能性は高そうです。ですが、それなら迎え撃てば良いだけのこと。昨日のように敵が戦力の逐次投入をしてくるのなら、むしろ好都合です」
「海賊艦隊の戦力を削りつつ、先へ進めるわけだからな。であれば、このまま前進するべきか」
「はい。それがよろしいかと」
なんて、アイと二人でかっこいいやり取りをしていたところ。「何やってんの、あんたら」と呆れた様子で話しかけてきたのはメグ師匠だ。来てたのね。というか、んもー。良いところだったのに。
「館長席で良い感じに話してると、なんか楽しいのよ」
「さいですか。それより、ヨータの兄さん。この層は荒れた天気だねえ。海上に出たって聞いてたから、良い景色が見られるかと思ってたんだが」
「残念だったね」
そして、艦橋にやって来たのはもう一人。メグ師匠の後ろで困ったように笑っているのはルリカさん。彼女も海の景色を見に来たのかな?
「皆さん、こんにちは。この層は……荒れてますね」
「そうだね、ルリカさん。さっさと次の層を目指したいところだよ」
そんなわけで、出発進行! 時空戦艦は嵐の海をぐんぐん進んでいく。船が大きいからなのか、時空戦艦が特別だからか。揺れはあまり感じない。今のところ船酔いは平気だし、助かるね。
しばらく進んでいると、前方に船を一隻発見する。様子を見ていると、砲撃してきやがった。が、バリアがあるから効かないぜ。安心安心! 攻撃してきたということは敵だな! 容赦しないぞ。
「アイ、魚雷で反撃だ」
「承知いたしました」
「撃ち方初めっ」
俺の命令に合わせ、時空戦艦から魚雷が発射される。魚雷は海の中を進み、敵船に直撃! 攻撃を受けた船は嵐の海に沈んでいく。やったぜ。
などと嬉しく思っていたのも束の間。敵船から何か白いものがいくつも飛び出してくる。あれは、いったいなんだ?
「アイ、何か、たくさんこっちに飛んでくるぞ」
「ご安心ください。時空戦艦にはバリアがありますから」
たくさんの白い何かは、時空戦艦の艦橋に向かって飛んでくる。そして、それらはバリアに阻まれることなく、時空戦艦の内側に入ってきた。つまり、艦橋の内部へだ。これ、ちょっとやばくないか?
「アイさんや、敵が入ってきちゃったよ」
「これは……計算外ですね」
良く見ると白い何かは、俺がよく知る幽霊みたいな姿をしていた。とどのつまり、ゴーストと言ったところか。良いさ。相手になってやるっ。
俺は館長席から立ち上がり、跳躍。ゴーストに蹴りを叩き込……めない。スウッと攻撃がすり抜けてしまう。これは、困ったな。
「こいつら、物理攻撃が効かない」
俺が困っている間も敵は待ってくれない。気付けば複数のゴーストが俺に群がり、手を伸ばしてきた。俺は縮地を使い、瞬間的に移動。攻撃を回避する。しかし、ここからどうしたものか。
「ヨータさん、後ろへ!」
「ああ」
ルリカさんに言われ、俺は後方に下がる。それに合わせて彼女が前へ。って、ルリカさん!?
「ちょっと試してみたいことがあるんです」
「試してみたいこと?」
「はい。私の魔法、効けば良いんですけど」
そう言ってルリカさんは両手を前に突き出した。そして、二体のゴーストが握りつぶされるようにして、圧縮される。これは!?
いや、よく見ると……腕のような形に空気が歪んでいる。なるほど、空気の腕。凄いぞ。ルリカさん。これが彼女の魔法か。
「……まだ、不可視の腕を作るには至りませんが、この敵に魔法の攻撃は効くみたいっ」
喜ぶルリカさんが可愛い……なんて思ってる暇は無いな。ゴーストはまだまだたくさん艦橋に居る。俺も手を貸すぞ。そう思って空気の球を手元に発生させる。やり方は水球と同じだ。
「メグ師匠はアイを守っていてくれないか? ここは俺とルリカさんでやる」
「……任された。あの幽霊どもをなんとかしてくれ」
俺は再び前に出る。ぶっつけ本番だが、空気の球をさらに変化させてみよう。空気の剣をイメージ。一つの剣のようになったそれを、俺は構えた。
師匠に教わった剣の動きを思い出す。それから、俺は前に出た。俺へ迫ろうとしていたゴーストを一閃。確かに斬った感覚。いけるぞっ。これは。
俺とルリカさんによる魔法攻撃。艦橋に入ってきたゴーストたちを次々に倒していく。こいつら、攻撃さえ当たるなら驚異度はCランクくらいのものじゃないか? 物理無効っていうのには、なかなか驚かされたがな。
ともあれ、艦橋の魔物たちは全滅した。もしかしたら、外の場所にもゴーストが入り込んでいるかもしれないからと、ルリカさんとメグ師匠は艦内の見回りを申し出てくれた。正直、助かる。
「じゃあ、俺は俺であっちを見てくるよ。アイ、何かあればすぐに俺たちを呼んでくれ」
「承知いたしました。私はこのまま時空戦艦を進めます」
任せた。こんな嵐は、さっさと抜けちゃいたいね。




