おじさん、水族館デート
第四層で海賊たちとの戦いの後、俺は時空戦艦の温泉に浸かってきた。少し遅めの昼食をとり、夕方までどうしようか。などと考える。アクアリウムでも見に行こうか。
「アイ、ちょっとリッチ先生に会ってくる」
先生は先にアクアリウムエリアに戻っている。彼、結構真面目だね。たまにはゆっくりしてほしい。まあ、言われなくても適度な休憩はとっているのだろうが。
「アクアリウムエリアまで行くのでしたら、ご一緒します」
「そう? ありがとう」
アイと一緒に食堂から目的地まで転移する。ほどなくして到着したアクアリウムエリアは落ち着いた雰囲気。先生が設置してくれた魔法の光球が良い味を出している。
水槽の方を見ると、色とりどりに光る魚たちが優雅に泳いでいる。他にも水槽は沢山あるし、もっといろんな魚をどんどん増やしていきたいね。
「……おや、ヨータさん。こっちまで来ていたんですね」
「ああ、リッチ先生。魚たちが見たくてな」
「水槽を泳ぐ魚たち。良いですよね。いくら見ていても飽きません」
それから、先生と魔法について話をする。この前、使う魔法の方向性を決めるようにと言われているけど、これがなかなか難しいんだよな。もう少し時間がかかりそうだ。
「それはそうと、魔法で周囲の温度を調整できるようになったんだよ。これって結構凄くないか?」
「ふむ、ヨータさんは大気を操る魔法が得意なのかもしれませんな。水を操る適正もありそうですが」
「大気と水……か」
考えることは多そうだ。うん、すぐに答えは出そうにない。焦っても仕方ないし、ゆっくりやろう。
「焦らず考えることですね。アイさんと水族館デートをしながら考えるのも、悪くないのではないですか?」
「水族館デート!?」
「おや? 違うのですか?」
言われてみれば確かに、デートということになるのかなあ。アイの方を見ると、彼女はいつも通りの様子。俺がデートという言葉を気にしすぎなだけか。なんだか少し恥ずかしい。変に慌てることなかったな。
「……じゃあ、行こうか。アイ」
「はい、お供します」
「というわけで先生、また」
「水族館を楽しんでください」
先生と別れ、アクアリウムエリアを進んでいく。多くの水槽に、多くの水生生物たちが居て、立派な水族館になったと言えるだろう。人は居ないが、可愛いロボットたちが巡回しているので寂しくはない。
「ヨータ様、見てください。あのイミテーション。作るのを頑張ったんですよ」
「へえ、あそこの岩は時空戦艦で作ったんだ?」
「そうです。何の飾りもない水槽は寂しいですから」
アイはいつも色々なところで働いてくれている。きっと俺の気付かないところでも、色々と動いているのだろう。そして、それらの動きに俺は助けられている。改めて、彼女に感謝したい。
「……アイ、いつもありがとうな」
「どうしたんですか。急に」
「日頃、アイには助けられてるなって」
「ふふっ。私はヨータ様のAIにしてメイドですからね」
「それに、相棒だし家族だ」
何気ない俺の言葉に対して、アイの顔が紅くなる。機械の体でも、顔が紅くなるんだな。そんなことを思っていると、彼女はツカツカと先を歩きだした。
「い、行きますよ。ヨータ様っ」
「了解」
さっき先生から水族館デートって言われた時は平気そうにしてたのに……俺が言ったってのが大きいのか? アイの見せた反応は可愛くて、少しからかいたい気持ちが沸く。が、やめておく。それは彼女が望んでいることではないだろう。
その後もアイと共に水槽を見て回る。そのうち第三層で捕獲したクリオネたちの水槽の前も通った。丸みのある透明なフォルムの中に、強く主張する赤い器官。さっき見た触手には驚かされたが、こうして見ていると可愛いね。
アイとの水族館デートは楽しく過ごせた。楽しい時間というものはあっという間に過ぎていくもので、気付けば夕方も近い時間になっている。
「……もうこんな時間か。そろそろ剣の稽古だな」
「では、水族館デートもここまでですね」
「ああ、またこうして二人でどこか歩きたいな」
「そうですね。また」
道場へ行く前に、先生に声をかけた。先生は「行ってらっしゃい」と言ってくれて、ありがたい。アクアリウムエリアから自室移動し、道着に着替える。
もう少しだけ時間があるので、自室で軽く竹刀を構えてみた。中々、様になっている。
「船上で戦う機会があれば、剣を振る機会もあるかな?」
メグ師匠から剣を学び、それなりに使えるようにはなったと思う。実戦で上手くいくか試してみたい。今からすでに、ワクワクしている。そんな俺の元へ、アイがやって来た。
「ヨータ様、時間です」
「ああ、分かった」
「それと、帰ってきたら何が食べたいですか? できれば、ワイバーンの肉を消費したいのですが」
ワイバーンの肉か。この前、渋谷ダンジョンで狩った分が、まだまだ残っている。時空戦艦の倉庫なら腐らせずに保管できるが、いつまでも残しておくのも、あれか。できれば、ちょっとずつでも消費していきたい。
「なら、ステーキとか」
「ステーキですね。承知いたしました」
夕食も決まったし、道場へ行くとしよう!




