おじさん、第三層を進む
バンノウマルを操り、アイスゴーレムの周りを大きく回る。コアらしきものは……あっ。胸の辺りに赤く光るものが見えるぞ。あれがコアだろう。弱点の位置さえ分かれば占めたものだ。やってやるぞ!
次の一撃で決める自信はある。金色の槍を握りしめ、アイスゴーレムに突進! 俺の動きに対して、敵はガードを固めようとする——だが!
俺は更にバンノウマルを加速させ、槍を構えて突進する。最高速度で放った槍の一撃は、敵の胸に風穴を開けた。爽快感! 気持ちの良い一撃だった!
「ヨータ様、ナイスファイトです」
「ああ、アイスゴーレム撃破だなっ」
胸を貫かれた氷の巨人は、ゆっくりと海の底へ沈んでいく。もう、こちらに襲いかかってくることはないだろう。
さて、気持ちよく勝ったところで一息つきたいな。適度な休憩は必要だろう。
「アイ、一旦ドックに戻る。温かい飲み物を用意してくれ」
「承知いたしました。飲み物は、少々お待ちください」
ほどなくして、俺は時空戦艦のドックへ転移した。バンノウマルから床に降りる。ここに戻ってくると、帰ってきたって感じがしてホッとする。
第三層の海は結構冷えたなぁ。この前遭遇した灼熱サメのこともある。温度の対策、用意しとかなきゃだ。新たな問題が出てくると悩むことになるが、ワクワクもする。どうやってこの問題を解決しようかな。
ドックへ転移した俺の元へと整備ロボットたちがやって来る。時空戦艦に存在する他のロボットと同じ形。だが、一体一体名前は違う。俺はもう全てのロボットの名前は覚えられないと諦めた。仕方ないね。
ロボットたちが俺のアーマーを外してくれるのを待つこと数十秒。俺のまとっていたアーマーが全て剥がれる。ここまで手際が良いと、少し怖いくらいだな。それだけ優秀な整備員ということだろうが。
なんて思っていると空間が歪み、アイが転移してきた。彼女からマグカップを渡される。甘い香りのする液体を見るとチョコレートが溶けたような色をしていた。
「ココアです。アハトアハトが用意してくれました」
「アイの調理を手伝ってくれる子だっけ。今度会ったら、ありがとうって、言っとかなきゃな」
「私から伝えておきますよ」
「じゃあ、俺からも後で改めて礼を言うよ」
ココアの味は……かなり濃厚。甘味も強い。疲れを飛ばすには最高だね。こりゃあ美味いココアだぜぇ。体が温まる。
「……ふぅ。当面の問題は、第三層の冷水だな。外に出ると寒くて良くない」
「では、この層は時空戦艦で進みますか? 問題は無いかと思います」
「時空船艦で進めるとしても、俺は俺で探索したい」
「……でしたら、アーマーにヒーターを取り付けましょうか? 時間はかかりません」
「それも良いが……俺に良い考えがある。まずは、それを試してみたい」
「なるほど? その良い考えとはどのような?」
俺はアイに良い考えを伝える。アイは「まあ、良いんじゃないですか」と薄い反応だった。俺の考えに反対はしなかったし、多少の思い付きは問題ないということだろうな。好きにさせてもらう。
時空船艦で少し休憩した後、再び海底ダンジョンの第三層へ。アーマーを着込んでいても、やはりこの海は寒いなあ。バンノウマルの上で寒さに耐える。
「ヨータ様。いつでも、時空船艦に戻ってきてくれて良いですからね。気楽にプランを試してください」
「ああ、気楽にやってみる」
すでに一度失敗したことではあるが、魔法を使って周囲の温度を変えてみようと思う。ただし、今回は前回の失敗を踏まえ、より狭い範囲で魔法を使うぞ。今回は上手くいくかな? 上手くいくと良いんだが。
前回は、魔法で周囲の水を変化させようと考えた。だが、今回は違う。今回は、アーマー内の隙間に存在する空気を変化させてみる。より体に近い方が、変化をイメージしやすいだろうと考えたのだ。
体に触れる空気を暖かくするイメージ。そう、例えるなら春の陽気のような暖かさだ。いけるか……む、少しずつだが、暖かくなってきているか?
暖かく、なってきてるな。ヒーターを入れたみたいにポカポカだ。ちょっと暑すぎるかもしれない。が、調整は可能そう。良い感じだね。
前回は焦っていたこともあり、魔法の使用に失敗した。だが、落ち着いてやればなんとかなったな。リッチ先生の元で練習を重ねた成果もあるだろう。これは結構嬉しいぞ。
「アイ、こっちは結構快適だ。後でリッチ先生には、ありがとうって言っとかないとな」
「それは、先生も喜ぶと思います」
アイから伝える気は無いらしい。この頃は仲良くなってきたと思っていたが、なんだかんだでアイと先生の間には溝があるのかもしれない。少し寂しい気はするが……人の距離感に口出しするのは良くないよな。
「寒さの問題は解決したし、第三層を攻略していく。今日の目標は第四層への到着だ」
「頑張ってくださいヨータ様。温かい飲み物は用意しておきますか?」
「良いねえ。今度はお茶でも頼もうかな?」
「お任せください。食料庫から、お茶に合うお菓子も出しておきます」
流石、できるメイドさんだ。気が利くねえ。じゃあ、俺も頑張らないとなっ。




