おじさん、魔法をぶっぱなす!
物体が持つ衝撃や破壊力は、質量が大きく、速度が上がるほど大きくなる。つまり、メグ師匠やルリカさんの魔法には重さが足りなかったというわけだ。分かってしまえば、なんとかなりそう。だが、上手くいくか不安がないではない。
あるいは、水球の速度を極限まで上げるというプランもある。確か、重さが増すより、速さが増す方が、破壊力というものは上がりやすかった気がする。とはいえ、師匠以上の速度で水球を放つのも、結構大変そうなんだよね。
水球をできるだけ重くし、できるだけ速く飛ばす。そんなイメージ。簡単そうで難しい。物体を重くすれば、それだけ速く動かすイメージがしにくい。のは、俺だけだろうか?
ただ、その無理難題を解決するための良いアイデアが俺にはある。さっきも考えたように、不安がないではないが……やってみるとするか!
「それじゃ、始めるぞ」
俺はリッチ先生に指定された位置に付き、魔法を発動する。水球を宙に発生させるイメージ……成功。ここまでは慣れたものだ。今度は、水球に重さを足していく。水球を膨らませながら、なるべく重くなるようにイメージしていく。
「これくらいの、大きさなら、鉄球のようなイメージだっ」
「……水球に重さを足す。気付きましたね。ヨータさん」
先生に褒められたようでちょっと嬉しい。そんな先生はまだ余裕そうだ。その余裕、崩してやるからな。俺はあんたがビックリするところを見たいぜ。
バスケットボールくらいの大きさまで水球を膨らませた。そして、質量は同サイズの鉄くらいだ。これを普通に飛ばすのは、今の俺にはちょっと難しい。なので、もう一手間かけたい。
「ところで先生、確認だが、水球の撃ち方は自由なのかな?」
「ええ、撃ち方は自由です……ヨータさん、何をするつもりですか」
「ちょっと……発射装置をねっ!」
俺は水球を維持しながら同時に大砲の筒をイメージする。大砲の細かい造りなんて分からないし、分かっていたとしても、魔法で大砲の細かいところまで再現するような技術は今の俺には無い。だから宙に筒が浮いているような……すごくシンプルなデザインになってしまう。が、これでよい。
大砲の形を細かく再現できずとも、大砲が砲弾を撃つ姿はイメージできる。その、力強さもだっ。俺は水球を筒の中へ装填しながら、自信をもって先生に宣言する。
「今から、この大砲で、的をぶっ飛ばす。覚悟しなよ。先生っ!」
「むむむっ」
ただの水球ならともかく、大砲を出されては先生も、的が破壊されてしまう姿が頭をよぎったのではないだろうか。魔法ってのはイメージが大切。それは魔法を使う相手にも言えること。そうなんじゃないか?
「先生、最近分かってきたことがある」
「な、なんでしょう?」
「魔法戦ってのは相手をびびらせるのも大事。魔法使い同士の戦いは勢いのある方が勝てるってな!」
勝負ってのはノリの良い方が勝つ。かつて、そんなことを話していた人が居た。魔法戦も、それに通じるものがある。ハッタリが大事なのだ。
大砲の筒を細かいところまでは作れないが、それっぽく形を弄ることは、ちょっとぐらいなら可能。出きる限り、大砲を強そうに飾っていく。が、やはり不格好だな。そのうち、よりかっこ良い大砲を作りたいものだ。
「重さ、速さ、発射装置! 先生、覚悟はできてるなっ!」
「えっと……今から的を強化しても……」
「ダメに決まってんだろ! 先生!」
そうして、俺は砲から水球をぶっぱなす! 水球は勢い良く的に迫り——着弾! 水球が盛大に弾け、的を粉砕した! 良いねえ。流石は大砲だ。
「いよっしゃあ!」
「おお……我が結構ガチで作った的が……」
先生、的をガチで作ってたのかよ。彼、自慢の的を破壊されて、しょんぼりしているようにも見える。励ますべきなのか……? いや、今は素直に喜んでて良い時だよな。なんて思っていると。
「ヨータさん、凄いですっ」
「流石あたしの弟子だぜ。リッチの先生にやられっぱなしは悔しいもんな。よく敵を取ってくれたっ」
ルリカさんとメグ師匠に褒められて、なんだか照れてしまう。こうやって褒めてもらえると、やっぱり嬉しいね。
「……ヨータさん。流石です。そして、魔法使い同士の戦いにおいて、相手を動揺させること。相手の強いイメージを崩すこと。自分の得意を押し付けること。それが重要です」
「やっぱり、そうだと思ったんだ」
「ええ、ヨータさん。魔法戦の重要な要素については、もう少し後で教えるつもりだったのですが……皆さん、我が思っていた以上に成長が早い。これなら……」
「これなら……?」
先生は少しの間、何かを考えるように黙っていた。やがて、うんと頷き、興奮した様子で話しだす。
「皆さん、ここから先はそれぞれの戦闘スタイルに合わせて、使う魔法を調整していきましょう。そう遠くないうちに、皆さんの戦闘に魔法を取り入れられるようになるはずですっ」
なるほど? 魔法ってのは臨機応変に使うより、ある程度使い方を決めていた方が成功しやすいのかな? なんだか、第二のスキルみたいでワクワクする。
なら、俺の魔法はどんな感じにしていこうか? ここはしっかり考えないとな。




