おじさんVS地獄のサメ
バンノウマルに乗り、再び海底ダンジョンへ。戻ってきてすぐに気付いた。時空戦艦と向き合う形で幽霊船が残っている。
戦艦ほどではないが、こちらも結構な大きさだ。鹵獲できそうではあるけど、手に入れたところで使い道はあるか? 結構なオンボロ船である。でも、このままにしとくのもなあ。悩むねえ。
「アイさんや、あの船は鹵獲する価値はあると思うかい?」
「あれもダンジョンの遺物ではありますから、ハナヤギ会長に送れば喜ばれるかもしれません」
「なるほど、じゃあ幽霊船も回収してもらって良いかい?」
「承知いたしました。幽霊船を回収します。まずはこの船で魚を捕まえる練習といきましょう。船に近づいてみてください」
「あいあい。やってみよう」
バンノウマルの右ハンドルを回し、徐々に船へと近づいていく。船は今も透明な膜をまとっており、触れると弾力を感じた。このまま腕を突っ込むこともできるが、やめておく。必要以上に膜を壊す必要はないだろう。
「アイ、回収だ」
時空戦艦の回収能力は凄い。半分くらいのサイズがある幽霊船を簡単に収納してしまった。あんまり時空戦艦の収納限界とか考えたことないけど、まだまだ余裕で色々入りそうな気がする。頼もしいよ。
さて、それじゃあ魚獲りを始めるとしよう。夕方までに色々捕まえてやるぞぉ! 今日はどんな魔物が捕まえられるか楽しみだ!
まずは暗い海で光る魔物を積極的に探していく。魔物の気配を探ることもできるけど、光る魔物が欲しい。だって綺麗だもん。
それほど苦労することなく、タイやイワシのような魔物を発見。近づいて、横を泳ぐ。そうして充分に距離が詰まったところで、アイに回収してもらう。順調で良いねえ。
イワシの魔物は群れになっていたので、どんどん捕まっていくのが楽しい。そうやって群れを追っていると、後方から追ってくる気配に気付く。そちらに顔を向けるとチョウチンアンコウの怖い顔があった。こいつ、結構積極的に襲ってくるな!?
チョウチンアンコウの魔物に食われたりなんかしないぜ。その大きな顔に向けて手を伸ばす。巨大な口に腕をちぎられるより早く、アイが魔物を回収してくれた。
まあ、バリアがあるから実際に腕が千切られることはないんだけど。大きな口が迫ってくるというのは心臓に良くない。前、鳥の魔物に飲み込まれた時のことを思い出すと、少し気が沈む。ま、更に魔物が捕まったし良しとするかぁ! クヨクヨしてたってしょうがない。
気を取り直して魔物を捕まえていく。リュウグウノツカイのような美しい魔物から、よく分からない深海魚のように不気味な魔物まで。捕まえること、しばらく。
向こうから、光る何かがこちらにやって来るのが見えた。積極的に向かってくるのは結構獰猛な魔物であることが多いみたいで、ちょっと嫌な予感がする。とはいえ、なんとかなるとは思ってるけど。
「さて、次はどんな魔物が出てくるかな? というか、なんか暑くなってきてないか? 気のせいじゃないと思うんだけど」
「実際、辺りの水温が上がっていますね。あれは……ヨータ様、お気をつけください。Sランクの魔物です」
「またSランクか。ここのダンジョンは魔境だな」
魔物との距離が近づく程に、水温が上がっていくのが分かる。熱だけでやられそうだ。バンノウマルを旋回させ、魔物から離れながら考える。こういう時は……ぶっつけ本番だが、魔法の出番か!?
自分の周囲に熱が伝わらないイメージ。魔法を発動し、これで熱を……普通に感じるな。やっぱり覚えたての魔法を実戦に活かすのはまだ早いか。ちょい残念。
俺は後方を見る。もう魔物との距離はそんなに遠くない。赤熱するサメがこちらを追ってきていて、なんか怖い。てか、あのサメ燃えてないか?
「ヨータ様、あれはインフェルノシャークです。マグマの中でも泳げる強力な魔物です」
「サメがマグマを泳ぐってのは変じゃないか?」
「サメですよ? マグマくらい泳ぎます」
アイから、お前は何を言ってるんだ。みたいなテンションで困惑する。だってサメは普通マグマは泳がない……俺の方がおかしいのか?
とにかく、あれは捕まえられないな。Sランクの魔物なら空間転移に抵抗してくるだろうし、近づくだけで火傷しそうな魚は嫌だ。そんなわけで、倒す方向で考える。
金色の槍をぶつけるのは、なんか槍が溶けそうで躊躇するな。と、なれば戦艦の火力を頼るか。幸い? 時空戦艦は少し離れた位置に留まっているし。
「アイ、ミサイルで支援を頼む。俺はなるべくあのサメを引き付けるから。合図したらミサイルで攻撃してくれ」
「承知いたしました。グッドラックです。ヨータ様」
後方から迫る熱を感じながら、バンノウマルを走らせる。背中がどんどん暑くなって、熱攻撃のやばさが嫌でも分かる。
「アイ、狙いは定まってるか?」
「いつでもいけます。ヨータ様」
「ああ——今だ!」
瞬間的にバンノウマルを加速させた。サメの魔物から一気に距離を放し、さっきまで俺が居た位置にミサイルが着弾! 爆発の衝撃が、離れた位置まで伝わってくる。
サメは……体のところどころを失いながら、海の暗闇に消えていく。赤い光がゆっくり遠退いていき、次第に周囲の熱も下がっていく……やれやれだ。
「水中だと、ミサイルの威力がどうしても落ちますね。やはりヨータ様の提案したように武装の強化が必要でしょう」
「そうだな、アイ。俺はもう少し水中ドライブを楽しむ。帰ったら色々、楽しみにしてるよ」




