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おじさん、魔法を教わる

 お昼までもう少し時間がある。その時間を使って、食堂でリッチ先生に魔法を教わることにした。そんなタイミングで、メグ師匠とルリカさんがやって来る。賑やかで良いね。


「よーっす。ヨータの兄さん」

「こんにちは。ヨータさん。ミニマイコニドを捕まえたんですけど、お昼にいかがでしょうか?」


 二人は足の生えたキノコを持ってきていた。だいたい一メートルくらいの大きさだろうか。埼玉のダンジョンから持ってきてくれたのかな? 嬉しいね。


「今日の昼に使えるかな? キッチンのアイに聞いてみよう」


 俺の言葉に応えるように、アイが転移してくる。キッチンまで声が届いたかな? まあ、実際は艦内で起こることは全部把握してるからなんだろうけど。


「アイさん、これ。今日の昼食に使えますか?」

「ありがとうございます。ルリカさん、メグさん。美味しく調理させていただけます。ぜひ、お二人も食べていってください」

「良いんですか。ごちそうになりますっ」


 ルリカさんが嬉しそうに笑う横でメグ師匠は「ん?」と何か違和感を覚えたようだ。お、先生の存在に気付いたかな?


「ヨータ兄さん、なんか変な気配がするぜ?」

「分かるかい。メグさん」

「あんたほど、遠くまでの気配は分かんねえけどな。すぐ近くから妙な感じがする」


 メグ師匠はテーブルに置かれたリッチ先生をまじまじと眺める。そして「なるほどねぇ」と口許を緩めた。


「黙ってじっとしてるが、このドクロは魔物だな? あたしの目は騙せないぜ」

「正解だよ。メグさん」


 あ、ドクロが汗かいてる。骨しかないのに汗かけるんだ。どうなってるんだろう? 不思議だ。と、リッチ先生のことを二人に紹介しておくか。


「彼はリッチ先生。俺に魔法を教えてくれることになっている」

「え、リッチ? まじかよ? S級指定のアンデッドじゃん」


 へぇ、リッチ先生。S級の判定を受けるくらいの魔物だったのか。他のスケルトンよりは強いと思ってたけど、流石だね。S級という言葉を聞いて、ルリカさんは不安そうな顔になる。


「S級の魔物……大丈夫なんですか? その、安全とか……」

「ルリカさん、その心配は要りません。このアイが常に目を光らせています。そこの魔物が何か悪さをしそうになれば、すぐ粉々に破壊しますので、ご安心ください」


 アイったら、目が笑ってない。リッチ先生は汗をかきっぱなしだ。その汗って魔法で出してたりする? ますます気になる。


「や、やだなあ。我は心を入れ換えた善良な魔物ですよぅ」

「善良な魔物はヨータ様を襲ったりしません」

「な、なので心を入れ換えたんですよぅ……」

「どうだか。それではヨータ様、私はキッチンへ行きますので、何かあれば呼んでください」

「いつもありがとう、アイ。そうするよ」


 アイは「それでは」と一礼し、その場を去った。ミニマイコニドを持っていったが、どう調理をするのだろう。楽しみだね。


「二人とも、食材をありがとう。俺は、これから先生に魔法を習うんだけど、もしよかったら二人もどう?」


 俺からの提案に二人は顔を見合わせる。ほどなくして彼女たちは「それじゃあ」と提案に乗ってくれた。どうせなら、皆でやった方が楽しいもんね。


「というわけで、よろしく頼むよ。先生」

「……分かりました。ただ、魔法の素養は個人差があります。ダメな人はほんとにダメなんです。魔法が使えなくても、恨むのは無しですよ」

「了解だ。恨んだりしないよ」


 そんなわけで、魔法を教わる。ファンタジーの魔法使いみたいなことができるかもって思うと、今からワクワクする。


「……まず、魔法というものは大気中に含まれる魔素を使って発動するものです。魔素の存在を把握するのはとても難しいのですが、今回は魔素に色を付けてみます」

「なるほど。視覚的に分かりやすくするってわけだね」

「そういうことです。ヨータさん」


 いうが早いか食堂中にいくつも青く小さなものが発生した。それらは空中を漂っている。ほほう、これらが魔素か。なるほど、面白い。それにキラキラしていて綺麗だ。


「これらを使って魔法を発動するのかい?」

「はい。まずは手本として、小さな水球を作ってみます。良いですね?」

「構わないよ」


 まあ、アイの目は常に光っているし、ここで俺たちを攻撃しようとするほど先生は馬鹿じゃないだろう。そんなことをしたら先生が死ぬわけだしね。


「魔法はイメージが大切です。大気中の魔素を思った通りの形に変化させる技術。それが魔法なのです」


 先生が作り出した水球は小さく可愛らしいものだった。ビー玉くらいの大きさだろうか。


「ヨータさん、この玉に触れてみてください」

「了解だ」


 言われるがまま、水球に触れてみる。すると、それが硬いと分かった。まるで本物のビー玉みたいだ。おお! 魔法ってこんなこともできるのか!


「魔法はイメージ次第で、質感の再現は自由自在です……我がさっき作った大水球はこの何倍も硬かったはずなのに……破壊されたのやっぱりおかしいだろ……」

「……何か言ったか?」

「い、いえぇ!? な、なんでもありませんよぉ。ヨータさん。説明を続けますねぇ……!」


 アイが施したリッチ先生への枷は良い判断だったかもしれない。そう思いながら、俺は先生の話を聞くのだった

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