おじさん、宝箱を開ける
それでは、宝箱を開いてみよう! ガチャっとな! おお! 金のコインや銀の彫り物、色とりどりの宝石がたっぷり入っている。宝箱はこうでなくちゃ! 実はミミックでした~なんてオチにならずホッとした。
さて、これだけの金銀財宝。いくらになるか、気になるねえ。この部屋にある飾り物とかも含めて、ハナヤギ会長に買い取ってもらおうかな? 彼女経由で買い取ってもらうのは地味に助かるんだよね。
ダンジョン監理局の受付で珍しい物を出すと、目立ちすぎるからな。まあ、多少目立つのには、もう慣れたが。それでもね。
「アイ。とりあえず、この宝箱は回収だ。その後、会長に売却する」
「承知いたしました。では、一旦預かりますね」
アイに宝箱を預かってもらい、部屋の飾りを見て回る。どれも人骨をイメージしたもので、この幽霊船には合っているな。人によって好みの分かれるところだろう。
そのほとんどは、ただの飾りだと思う。ただ、一つだけ妙な飾りがあった。それは金のドクロの飾り物で、さっき倒したリッチと同じ気配がするような……たぶん、思い過ごしではない。
「うーむ……」
「……」
どうにも気になるなぁ。ちょっと小突いてみるか。エイエイッ!
「——痛っ! 痛あっ!?」
「あ、怒った?」
「怒った? ではない! 我を破壊する気か貴様ぁ!」
「まあ、回答によっては破壊するが。間抜けは見つかったようだなぁ」
「はっ! あわ、あわわ……」
「あんた、さっき倒した海賊リッチだろ?」
「……はい。そうですぅ……」
驚いたな。本体が別にある魔物か。そういえば、何かの小説でリッチは宝石に魂を分けるとか聞いたことがある。こいつも、そういう能力を持っていたというわけか。
「で、素直に答えてくれるのは助かるが。あんた、ワンチャン魔法で復活しようとか考えてたりする? リッチだし」
「め、滅相もないですぅ。我、こうして大人しく余生を過ごそうと思ってます!」
「ほんとかなぁ?」
「ほ、本当ですよぅ……信じてくださいよ旦那ぁ……」
……なんというか、今のこいつに体があったら、もみ手とかしてるんじゃないかと思えた。凄く下手に出てくるが……まあ、仕方ないか。生殺与奪の権利はこっちにあるからな。
「さて、あんたは状況をよく分かってるようだ。なので、俺の頼みを聞いてくれると助かる」
「……た、頼みですか?」
「そう怯えないでくれ。あんたが頼みを聞いてくれるなら、破壊はしないと約束する」
「本当ですか? ひひっ。どんな頼みでも聞きますよ。旦那ぁ」
下手に出てくるっていうか、卑屈になってない? キャラ変わってない? 大丈夫? 俺、今からあんたに頼みを聞いてもらうんだけど、なんか不安になってきたぞ。
「……じゃ、頼みなんだけどさ。あんた魔法が使えるだろ? それを俺にも教えてくれよ」
「魔法を教える……そんなことで良いのですか?」
「少なくとも、東京には魔法の学校なんて無いしなあ。あんたが教えてくれると、助かる」
「え、ええ! 分かりましたよぉ……我、あなたに魔法を教えます!」
おお、結構簡単に承諾を得られたぞ! ならば一度、時空戦艦に戻るとするか。
「アイ、帰還する。バンノウマルのところまで戻るから、そしたら俺と先生の回収を頼む」
「先生とは、そのリッチのことですか? はぁ……分かりました。ですが、相手は魔物です。注意してくださいね」
「もちろん注意するさ。それでも、魔法を覚えるには先生が居た方が良いだろ?」
なにせ、魔法の知識なんか無いのだ。であれば先生は居た方が良い。と、思うのだが。迂闊だろうか?
バンノウマルまでの戻り道は特に面白い発見もなく、無事に進むことができた。先生は大人しくしてくれていたので、面倒がなくて良い。これからも、面倒を起こさないでくれると助かる。
周囲の景色が歪み、転移する。数秒後には時空戦艦のドックに到着していた。そこにはニコニコと笑うアイの姿が、手には怪しい輪っかを持っている。それは、なんだい? 気になるね。
「アイ、ただいま」
「おかえりなさいませ。ヨータ様」
アイはそそくさと俺に近づき、先生を取り上げてしまった。そして、先生に怪しい輪っかを装着させる。お、おお!? 素早い動きにびっくりしたぞ……!
「えっと……アイ。その輪っかは?」
「孫悟空の輪っかです」
「うん? 孫悟空って西遊記の?」
「はい。正確には、それを模した物になります」
なるほど? 西遊記に出てくる孫悟空の輪っかというと、確か。
「まあ、もっと簡単に言えば万力です。先生が怪しい動きを見せた時に、ドクロを粉砕します。いつでもドクロを粉砕できます」
「ええ!? 我になんてものを着けてるんですか、お姉さん!?」
「念のため、です。魔物が相手なら用心するに越したことは無いですから」
「そ、そんな我は心を入れ換えた善良なリッチなのに!? よよよ」
ま、アイが必要だと思ったなら、俺はその意思を尊重するよ。魔物相手に用心した方が良いっていうのは、確かにそうだからな。
「先生、あんたが変な気を起こさなければアイは何もしないよ。と、いうわけで、これからよろしくなぁ」
「私は先生の動きを常に監視していますからね」
俺の手元で先生が「トホホ……」と嘆くのが少し不憫ではあった。まあ、諦めて俺に魔法を教えてくれ。




