おじさん、サポートAIと話す
ワイバーンを倒した後、ネットでルリカさんの無事を確認した俺は、一度自宅に戻ることにした。今は落ち着いて確認したいことが多い。
そうして多摩の自宅、ワンルームにて。管理AIさんとやらに質問タイムだ。彼女? さっきからずっと黙ってるけど答えてくれるよね。ちょっと不安だ。
「あの、管理AIさん?」
「なんでしょうか。マスター」
相手が答えてくれたことにひと安心しつつ、俺から最初に言うべきことは……そうだな。
「まずは、君のおかげで恩人を救うことができた。ありがとう」
「どういたしまして。とはいえ、この力は、元々あなたのもの。私は補助役にすぎません」
「そうなの? と、管理AIさんっていうのは呼びづらいな。もっとこう、なんというかだな。名前はないのかい?」
「名前……あなたの好きに名付けてください」
好きなように、と言われても困るな。うーん、管理AI……えーあい……あい……ではこんなのはどうだろう?
「アイ……という名前はどうかな?」
「アイですか。AIだからアイとは、なんともシンプルですね」
「別の名前を考えるか……」
「いえ、その名前気に入りました。では今後、私のことはアイとお呼びください」
「了解、よろしく頼むよ。アイ」
管理AIさんの名前が決まった。ところで、気になっていることもあるんだよね。
「アイ、君の姿というか、実体はないのかい? こうして話してると、独り言みたいで落ち着かないな」
「私に実体はありません。材料があれば、仮の体を作ることは可能ですが」
「……体を作る? それも時空戦艦のスキルによるものかな?」
「ええ、そうです。時空戦艦内にあるファクトリーを稼働させることで、私の体を作ったり、戦艦自体を強化することができます」
「ふむ……」
たぶん、ここまでの会話の内容からして、戦艦そのものやファクトリーとやらがどこかにある。それは、どこだ。
「戦艦っていうのは呼び出したりはできないの?」
「可能ですが、かなり目立つことになるかと。注目を浴びるのはお好きですか?」
「注目を浴びすぎるのは、遠慮したいね」
ここまで帰ってくるまでに、スマホでネットの反応は確認している。光の帯が一撃でワイバーンを倒したことで、ネットはかなり盛り上がっている。幸いなことに、俺の顔なんかが動画に映ったりはしていない。そこは良かったが……む?
「アイさんや。まさかとは思うけど、君が俺の身バレを防いでくれてたりとかは……」
「ふふっようやく気付きましたか。結構鈍いですね? マスター」
「こいつ、まじかよ。でも、ありがとう。それと、俺が君をアイと呼ぶんだ。君も俺のことは、ヨータと呼んでくれ」
「私の手にかかれば、ネットから情報を隠蔽する程度のこと、朝飯前です。それと、これから先はマスターのことをヨータ様と呼びますね」
「様は無くても良いんだけど……まあ良いか」
しかしほんと……まじかよ。俺のスキルって戦闘面以外でもとんでもないんじゃないか? 我ながら怖くなってきたぞ。
「アイさん、確認だ。俺のスキルは戦艦の一部を出し入れして戦闘したり、戦艦の中で物を作ったりできる。あと、君が情報工作なんかができるのも加えて、他にできることは何がある?」
俺の能力のこと。このタイミングで、だいたい何ができるかくらいは把握しておきたい。
「ヨータ様がお好きなタイミングであなたは戦艦内へアクセスできます。そこで休憩を取っていただくなり、自由にお使いください」
「なるほど」
それもまた凄く便利そうな能力だな。ダンジョン内での野宿を気にしなくて良いってのは現代人にとってありがたいに決まってる。今すぐにでも、戦艦内に乗り込んでみようか。実は結構ワクワクしてるんだよね。
「……それと、ヨータ様。報告が遅れてしまいましたが、ファクトリーの機能を一部使わせていただきました」
「へぁ!?」
「渋谷ダンジョンにてヨータ様が疲れない肉体をご所望とのことでしたので、あなたが眠っているうちに、あなたの体を工場で強化しました」
「な、ななな何をやっとるんだ君いいぃぃ!?」
「別に、体を機械に変えたわけではありません。ただちょっと、ナノマシンを注入し、肉体を強化したのです。今のヨータ様は疲れを感じていないはずですし、視力なども格段に上がったでしょう? それに以前よりも若々しくなられました」
た、確かに。ダンジョンに行ってきたというのにあまり疲れを感じていないし、視力も良くなっている気がする。いや、それよりも――今確認するべきは!?
俺は急いでバスルームへ飛び込んだ。洗面台の鏡で顔を確認すると、確かに……十歳くらい若返って見える! 二十代中頃くらいの姿になっているぞ!
お、おおおお! デトックスとかあまり興味が無かったけど、これほど若返ると凄まじい。感動を覚えたぞ。しかし、しかしだな。
「アイさんや、こういう重要なことをする時は前もって一言くださいよ。砲の発射をした時みたいに」
「了解しました。重要プロセスの判定を少々変更するとしましょう」
ほんと、お願いしますよ。ほんと。




