おじさん、決死の覚悟
空中で俺とウーは肉薄する。このままやつを盾にし時空戦艦の主砲をぶち当てる。決死のプランだ!
「貴様……本気か……!」
「もちろん本気だぜ。魔王さんよ」
アイなら俺に応えてくれる。そう信じ、砲が放たれるのを待つ。敵から鎧を殴られながら、その時が来るまでは、それほどの時間はかからなかった。
ウーと肉薄した状態でも分かる。やつの背後が光った。そして、凄まじい攻撃がウーを襲う。俺は、やつを離さないようにしながら、必死で砲撃に耐える。やべえ、生きた心地がしねえ……!
「貴様ぁ! 離せぇ!」
「お前も必死だな。それだけ、この攻撃が効いてるって分かるのは嬉しいぞ!」
時空戦艦による攻撃はいつまでも続くように思えた。もしかしたら、さっきのように時間が伸びるように感じているのかもしれない。
時間が遅く感じるというのも考えものだな。強い敵を掴み続けるっていうのは、結構辛いんだ。手からは血が溢れている。生暖かいそれは、俺の手を滑らせようとしていた。せめて、目の前の敵を倒すまではもってくれよ。
「貴様あああぁ……!」
ウーの叫びを聞きながら、やつが弱っていくのが分かる。もう、お前も辛いんじゃないか? 楽になっちまえよ。
お互い辛い。そんな状況で、光が収まっていく。時空戦艦の砲撃が止もうとしていた。ウーはほとんど死にかけ……だが、耐えやがった! 砲による攻撃を耐えやがったぞ、こいつ。敵ながらすげえな……けどだからこそ――お前はここで倒す!
今、俺はウーを両手で掴んでいる。その状態から片手を離した。手は痺れて、力なんかほとんど入っていない。それでも何か、鋭いものをこいつの首に差し込むくらいの力はある。だからこそ、鋭い武器を! この手にと、そう願った。
「……ヨータ様。武器を……!」
「アイ、待ってたぜ。君の助けを……!」
空間が歪み、宙に現れたのは一本の刀。俺は刀を上手く扱う技術なんか持ってないけど、それでも目の前の敵に押し込むくらいなら、できるはず! いや、やるんだ!
俺は刀を手にとって、残る力を振り絞る。もう、刀を離してしまいたいくらいには辛いけど、それでもやる。きっとそれが、この戦いを決める最後の一撃だから!
「いっけえええぇ……!」
鋭い一撃が、魔王の喉を貫いた。それが決定打になったのだろう。ウーの体から力が抜けていく。俺も結構ギリギリの戦いだったが、なんとか勝った……勝ったんだ! 今は、そのことを喜びたい。
「……ぐ、く……くくく……」
ウーが不気味に笑う。こいつ、この期に及んでまだ何かやろうってのか? 勘弁してほしい。強がりだと信じたいところだが。
「我は魔王……しかし……数ある魔王の一人にすぎぬ……我は尖兵に過ぎぬ……くくく……」
「何がおかしい?」
「死なば……諸ともだ……!」
ウーのボロボロの体から、ゾッとする気配を感じた。無数の何かが、この魔王の体内から出てこようとしているのだと、直感で分かる。俺はウーから急いで離れた。直後、ウーの体を食い破るかのように、無数の魔物があふれでる。
空中の群れは、まだどう動くべきか決めかねているようにも見えた。時間があるのは好都合。だが、どうしたもんかな?
「ウーのやつ……こんな切り札を用意してやがったとはな……!」
ウーの体から現れたのは、無数の黒いワイバーン。一体一体がAランク以上の強さなのだろう。もしかしたらSランクの強さかもしれない。正直、今の俺には倒しきれない。俺にはな……だから、こちらも最後の切り札を使わせてもらう!
「アイ、聞こえるか?」
「はい、聞こえています。ヨータ様、まずは無事で何よりです」
「無事とは言いがたいし、こっちはまずい状況だ」
「ええ、上の様子はこちらからも見えています」
「だから、プランB。切り札の使いどころだ」
「ヨータ様、そうすれば間違いなくあなたは平穏には生きられなくなりますよ」
「敵の群れを前に、光の探索者を名乗った時から、それくらいは覚悟してる。大事なのは、助けられる人を助けることだ」
「……分かりました。ヨータ様、あなたが主で、本当に良かった」
「何? 今さら気付いたのかい?」
なんて、長話をしている間もワイバーンの群れが動かないのは助かった。もしかしたら、相手の準備中は狙わないとか、そういう美学を持っている……訳はないか。とにかくだ。こっちの準備が完了するなら何でも良い。
「アイ、俺は正直頑張った。めちゃくちゃ頑張った……だからさ、ここからはバトンタッチだ。俺たちの力で、勝つぞ」
「お任せください。ヨータ様」
俺の背後で空間が歪む。そして現れるのは巨大な時空戦艦! 今までは砲を撃ったり、拠点として使うだけのものだったけど、ここからはこいつを外に出して戦ってやる! 俺たちは、容赦をしないぜ!
「ヨータ様。時空ミサイル、発射します」
「許可する。ミサイルを発射しろ」
時空戦艦から大量のミサイルが放たれ、ワイバーンの群れに襲いかかる。次々に倒されていく敵を前に、俺はふぅと息を吐く。どうやら、なんとかなりそうだ。
「ヨータ様、ワイバーンの群れは今も増殖中。増殖しながら、移動を開始するようです。どうします?」
「もちろん、殲滅だ。ところで、アイ。地上の戦いはそっちに任せて良いかい?」
「ええ、Sランクのお二人が活躍中です。おそらく、こちらは大丈夫かと」
なるほどね。それじゃあ、ここからは殲滅戦といきますか。素材大量ゲットのチャンスだぜ。




