おじさん、覚悟の見せ所
ウーが伸ばしていた腕を戻そうと動く。対して俺はやつの腕を掴んだまま。つまり、敵へ近づくことになる。望むところだ。
「ほう、手を離さぬか……ならば」
ウーの体から大量の蛇がわき出た。ウーは魔物を呼び出す力を持っているわけだ。蛇たちは俺に襲いかかろうとするが、問題ない。蛇の魔物程度の攻撃であれば、バリアで防ぐことができる。怖くはないぞ。
俺がやるべきことは、蛇どもに構うことじゃない。それよりも、蛇の向こうに居る敵へ思い一撃をぶちこむことっ! カニバサミはさっきの攻撃を止める時に投げ捨てちまった。だから、相棒を信じて叫ぶ。
「アイィィ!」
「ヨータ様っ!」
俺の叫びに合わせて空間が歪む。そして、投げ捨てたカニバサミが現れる。アイが空間転移で俺の元へ武器を運んでくれた。俺はそのカニバサミを左右の手に受け取る。さあ、やるぞっ!
ウーの腕に捕まっていたことで、俺の体はやつに向かって加速している。加速した勢いを利用して、待ち受ける蛇の群れへ突っ込む! そして群れをバリアで無視し、奥のウーに思い一撃を与える! よしっ手応えアリだっ!
俺に蛇の攻撃が効かないことは想定外だったかよ! このまま、お前に連撃を叩き込んでやる!
「皆! 俺がこいつを引き受けた! 皆は目の前の敵に集中してくれ!」
俺の叫びよ。味方に伝わってくれ。せっかくの士気を、ウーのやつに下げられてたまるか!
「「「う、うおおおお!」」」
俺の祈りは――確かに、皆へ伝わったようだ。味方の士気が上がっていくのが分かる。だから、俺は皆の気持ちに応える。応えるために、ウーヘ近づく。
「俺の連撃を、くらいやがれ!」
たたらを踏むウーヘ、さらなる攻撃を叩き込む。手応えはあるんだ。攻撃を当て続ければ倒せるはず。そう、期待するしかない。
ウーは身を守っている。やつの体内から機械のような音が聞こえる。さっきから気になっていた。この音は何だ? どこかで聞いた覚えがある。この、何かを巻くような――巻く!?
ウーの腕がこちらを向いていることに気付く。同時に嫌な予感がし、俺は咄嗟に縮地で敵の背面へ走る。一瞬遅れて、敵の腕が凄まじい速度で伸びた!
「……ちぃ」
「何となく分かったぜ。お前の超高速攻撃のからくりが」
ウーの背中へカニバサミを叩き込みつつ、俺は言う。少しでも相手の動揺を誘えるならば良しだっ!
「お前……攻撃前に力をためてるんだろう。弓を引くみたいに、もしくはネジを巻くみたいな――予備動作が必要なんだ。魔王を名乗る割りには、ちゃちなカラクリだぜ」
「……それが分かったところで」
「分かるんだよ。お前の底が! お前の不気味な機械音は――ただのちゃちなカラクリなんだ!」
「貴様……!」
大物ぶってたお前の仮面が剥がれてるぜ。徹底的に叩き続けて、壊してやるよ。機械人形!
さあ、次はどんな手を使ってくる? そんな俺の想像に対し、ウーの体が揺らぎ始める。これは、時空転移か!?
「逃げる気か!」
「逃げる? 馬鹿を言え。この状況を利用するのだ……!」
俺は焦る気持ちでカニバサミを振る。が、空振った! やつを逃した!? いや、落ち着け。逃げるのではなく、この状況を利用するのだとやつは言っていた。つまり……そういうことか。
今は乱戦状態。アイアンゴーレムの一体が俺に殴りかかってくる。邪魔をするなと、カニバサミの一撃で粉砕した。そこへ――超光速の腕が迫る!
ああ、分かってたぜ。この乱戦に紛れ、俺を離れた位置から狙おうってんだろ。読んでたさ。とはいえ、他の魔物と戦闘しながら超高速の一撃を回避するのは難しかったな。攻撃がかすっちまった。それだけで、鎧がえぐれ、脇腹が痛む。体に大穴が空いたって訳じゃないけど、これだけでも結構辛い。
息が、乱れて苦しい。カニバサミを投げ捨てた。良いぜ。とことんやってやる。気合いを入れろ! 俺!
じんじん痛む手で、ウーが伸ばした腕を掴む。敵の腕はまだ動いていて、掴んだ手には再び痛みが走る。さっきから痛みを味わっているからよ。お前は絶対に倒すぜ。ウー。
「再び……我を掴んだか……小癪な」
「ああ、そろそろ。決着をつけようか」
何度も転移されて、何度も遠くから攻撃されると流石に辛い。ある程度、やつの気を読めるとしてもな。だから、最大火力で貴様を一気に倒す。
「お前、敵に掴まれたりしてると、ワープはできないんじゃないか? それができたら、さっき、俺を近づけてまで腕を戻す必要はなかったもんな?」
「ならばまた、先ほどの攻撃を繰り返すと……?」
「いや、もっと凄いのをぶちこんでやる!」
俺は鎧から光の鱗粉を吹かせ、上昇する。空に向かいながら、再び叫ぶ! 絶対に、今度の攻撃で決めてやる!
「アイ! 砲撃準備だ!」
「ヨータ様!? しかしっ!」
「構わん! やれ!」
「――はいっ……!」
そのやり取りを聞いて、敵も俺が何をする気か分かったのだろう。やつは腕を縮めて俺に近づいてくる。
「貴様! 我が近づけば、貴様も巻き添えだぞ!」
「ああ! 巻き添えさ! ただし、てめーは盾だ! 俺の盾になれ!」
覚悟の見せ所だぞ。ヤマモト・ヨータ……!




