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おじさん、攻略開始

 戦闘は激しくなっていく。アイアンゴーレムをカニバサミで叩き潰し、群がる蛇を火炎放射器で焼き殺す。時折マリオネットなど別の魔物が襲いかかってくるが、それらも倒していく。魔物を倒すほどにテンションが上がるっ!


「ヨータの兄さん、頑張ってんな!」

「我々も負けていられませんわ」


 見れば、メグさんの刀が蛇の群れを一瞬にして切り刻み、会長は拳でアイアンゴーレムを倒している。二人とも凄い! 流石はSランクだ。


「会長やるねえっ。豪腕はあたしの二つ名なんだがなっ」

「メグさん、あなたを正しく表現するならば器用万能でしょうにっ」


 二人とも軽口を叩きながら、魔物を蹴散らしていく。その姿はとても頼もしい。


「ヨータ様、お二人に比べて活躍が足りないのではありませんかっ」


 後方から光線銃を撃ちながら言うのはアイだ。彼女の狙いは正確で、一発のミスも無いように見える。Sランク探索者の二人に負けないくらい、彼女も頼もしい。


「分かってる。俺も全力だ」

「敵の数は多いですからね。ペース管理にも気をつけてください」

「了解したっ」


 アイも頑張ってくれてる。カッコ悪いところは見せられないな。


「ヨータ様の槍の射出も継続中です。魔物の群れが分断されているうちに、目の前の群れを殲滅してください」

「ああ!」


 少し離れた位置で、魔物たちに槍が降っては、また新たに槍が降り注ぐ。アイが俺への掩護射撃と平行して時空戦艦の能力を使ってくれている。無理をしてなければ良いのだが。今は彼女を信じよう。


 そして、戦っているうちに嬉しいことが起こる。ずっと閉じられていた要塞の門が開いたのだ。そこから探索者たちが現れ、彼ら全員がこの戦いに加わってくれる。要塞からの援軍、待ってたぞ!


「ヨータ様の活躍が、要塞の皆さんに伝わりましたね」

「キャンプ地の探索者たちが動いてくれた。期待に応えないとなっ!」

「ファイトです。ヨータ様」


 敵の数はまだまだ多いが、なんとかなりそうだ! そう、期待を得た途端に、悪いニュースがやってくる。


「ヨータ様、第十層全体から魔物が集まってきています。千体以上の魔物が増えますよ」

「そいつは嫌なニュースだな」

「ええ、第十層深部の黒幕も動き出したようです」

「黒幕の到着までどの程度の時間が予想される?」

「すぐにです。気をつけてください」

「……すぐ?」


 その言葉の意味はすぐに分かった。黒い蛇たちが集まった場所が盛り上がり、蛇の群れからそいつは現れる。


 全身に漆黒の鎧をまとった大柄な姿。二本の角は鬼を思わせ、見るだけでゾッとした。そいつの内部からは機械の駆動音みたいなものが聞こえる。もしかしたらゴーレムの仲間かもしれない。


 敵も味方も、全員が、黒い巨躯に注目していた。時が止まったかのように静かな中で、そいつは話す。


「……我は魔王が一人、ウー・ザ・スラである……おまえたちに告げる。我が軍門に下るなら良し、そうでなければ死あるのみだ……」


 重々しく恐ろしい声。それだけで聞くものによっては戦意を喪失するかもしれない。そんな想像が頭をよぎった時、誰よりも早く動いたのはメグさんだった。


「死あるのみだと。上等だっ! やれるもんならやって――」


 目で追うのがやっとだった。ウーの腕が超光速で伸び、メグさんに迫る! 流石、というべきか。メグさんは咄嗟に刀で攻撃を防御。しかし、勢いよく後方へ飛ばされる。


「……ふむ。うるさい虫が居るな。あの者から倒すとするか」


 メグさんは――膝をついていた。刀も折れてしまっている。彼女、スタン状態か? すぐには動けないように見えた。ウーは、そんなメグさんに攻撃を続けようとしている。


 今、他に動ける人間は居るか? ハナヤギ会長は? いや、違うだろ! 誰かの助けを待つんじゃない。俺が、俺がやるんだ!


 ウーの腕が伸縮し、再び勢いよく放たれた。俺は、それより一瞬速く動く。動けた! 自分の足がちゃんと動いてくれたことに感謝する。後は、敵の攻撃を止めるだけだ。


 思考が加速し、周囲が遅くなっていくように感じる。考える時間ができるのであれば好都合。俺はどうやってウーの攻撃を止めるべきか考えていく。


 武器によって攻撃を弾くべきか? いや、俺の武器も破壊される可能性があるんじゃないか? なら、俺にはバリアがある。体のどこかでやつの攻撃を受けるか? 考え、ゾッとした。俺の直感が、それはやめておけと言っている。


 直感的に、やつの攻撃はバリアでは防ぎきれない気がしたのだ。だから、俺は第三の選択を取る。つまり――やつの攻撃を横から掴んで止める!


 やってやらあ!


「――うぐっ!? ぎいいぃ!」


 手で掴み、攻撃を止める。手の平を滑るように進んでいくウーの攻撃が止まるまでは、どこまでも時間が伸びていくように感じられた。辛いが、攻撃の速度が落ちていくのも分かる。止めてやる。止まれぇ!


「……我の攻撃を止めた……? おまえ、何者だ……?」

「はぁ、手がすっげえ痛いな。だが、お前の攻撃を止めてやったぞ。つまり、お前は攻略可能だ。このまま、確実にお前を攻略してやるっ!」


 さあ、こっから黒幕に反撃開始だ。

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