おじさん、決戦の火蓋を切る
アイからの連絡を受けた俺は、時空戦艦の艦内から第十層へ移動。キャンプ地を確認できる場所でハナヤギ会長たちと合流した。ルリカさんが居ないことを少し残念に思いつつ、彼女たちが一日で駆けつけてくれたことをありがたく思う。
キャンプ地を囲む魔物の群れは、まだこちらに気付いていない。それでは、身を隠しつつ詳しい話をしていこうかと思っていたのだが……会長とメグさんの二人は、さっきからずっとアイのことを見ている。ああ、説明が必要だな。状況も状況だし、端的に話すか。
「こちら、アイさんです」
「いや、端的すぎるだろ」
メグさんに突っ込まれてしまった。かいつまんで二人にアイのことを説明する。メグさんは半ば呆れた様子で「まあ、今更か」と肩をすくめた。会長も同じような反応。変にびっくりして叫ばれたりするよりは良いか。
「……わたくしたち、驚いてはいますのよ」
「驚いちゃいるが、ヨータの兄さんたちは色々と規格外だからよ。いちいちオーバーリアクションしてたら身が持たんぜ」
なるほど。驚いてくれてはいるのね。というか、色々と規格外か……思い当たる節は……あるねぇ。
「今、私のことは良いのです。それよりヨータ様も、お二方も、作戦について話し合う時では」
「お、そうだね」
アイの言葉に頷き、俺は二人と作戦会議を進める。まあ、ほとんど作戦の最終確認だ。皆が問題なく作戦を頭に入れていることが分かり、安心。
「ヨータ様、向こうの代表者とも連絡は取れています。後は思いきり暴れるだけですね」
「ああ、そろそろ行くとしよう」
立ち上がって、面を被る。俺の鎧兜に会わせてアイが用意してくれた顔隠しだ。まあ、アイに頼んで向こうの探索者たちに連絡を取った時点で、俺はいくらか目立ってしまう。が、了承済みだ。むしろ光の探索者として名乗らせてもらった。
アイが光の探索者の代理を名乗った時に、凄く驚いてる探索者が居たのは面白かった。ここ数日の間に第十層は電波が届かなくなっているけど、それまでの短い間に光の探索者という名は広まっていたわけ。世の中結構狭いなぁ。
光の探索者の名前を使うことに抵抗が無かったわけではない。それは、どうしても目立つことになるから。それでも、手っ取り早く向こうの信頼を得るためには、その名前を使うべきだと思った。状況を打開するために、使えるものは何でも使うさ。
「ヨータ様、向こうの信頼を完全に得るためには後一押しが必要です」
「そのために、思いっきり暴れるんだろ? 分かってる」
建物から出る。俺の後ろにハナヤギ会長とメグさん、そしてアイが続く。要塞を囲む魔物たちがこちらを向く中、俺は腰の刀を抜き、その切っ先を天に向けた。かっこいいところを見せてやるぜ。
「俺は光の探索者! いざ、尋常に勝負!」
俺の叫びに合わせて時空戦艦の砲が放たれる。今回は横ではなく、縦方向の攻撃! 空中の歪みから光の一撃が降り、魔物の群れに直撃! 凄まじいぜ! これで連射できれば最高なんだがな。
決戦の火蓋は切られた。ここから先は敵へ容赦なく攻撃していく。アイに指示を送ると同時に、ありったけの槍を出現させる。金色の槍が魔物の群れへ雨のように降り注ぐ。我ながら、恐ろしい範囲攻撃だ。
槍の雨は鉄の魔物たちを砕き、地面を割る。その自慢の装甲も圧倒的な攻撃の前には意味をなさない。が、油断はできない。なにせ、敵の数が多すぎる。今の連続攻撃でも倒せたのは群れの一部……嫌になるね。
「ヨータさん、小さいのが来ますわよ!」
会長が警告した。アイアンゴーレムの下を這うように黒い蛇の魔物が迫ってくる。その数、数百匹。見る人によってはゾッとしそうな光景だ。
「俺に任せろ。新武装を試してやるっ」
刀を地面に突き刺し、腕を前に構える。直後、手の甲から炎が吹き出す。ワイバーンの素材を使った火炎放射器。範囲攻撃にはもってこいだ。
炎に燃えながら蛇たちがのたうち回る。む、妙だな? 肉の焦げるような匂いがしない。というか、小さな魔物の気配が増えてないか? 影から次々に魔物が生まれてくるようで不気味だ。
「ヨータ様、増えているのは蛇の魔物だけのようです。落ち着いていきましょう」
アイの冷静な分析。会長とメグさんも魔物の群れに向かって動き出した。皆頑張ってる。俺も頑張らないと。
「アイ、カニバサミをっ」
「はいっ。私は光線銃で皆様を援護します」
「行ってくる!」
「ご武運を」
アイの応援が嬉しいね。俺は跳躍し、魔物の群れへ。カニバサミを振るい、鉄の魔物や黒い蛇を倒していく。アイアンゴーレムに比べると、黒い蛇からは手応えを感じない。やはり、この蛇は何か異質だ。
電波を妨害するハチの魔物といい、妙な魔物が出現している。嫌な感じはするが、今はとにかく戦うしかない。賽は投げられた。結果は後から出る。良い結果になると、良いのだが。
「いくらでもかかってきやがれっ。俺はやると決めたんだからな!」
今回は皆も一緒に戦ってくれる。そう思うと心強いぜ。




