ルリカ視点、空の向こうから現れたのは
ハナヤギ会長たちと別れて一日以上が経った。その後、上層からの伝令はまだ到着していない。無事であると良いが。
第五層のキャンプで皆さんに事情を説明するのは大変だった。それでも、どうにか上層が大変になっていることと、Sランクの探索者たちが救援に向かったことを伝えることができた。
今日も、もどかしさを感じながら私は会長たちやヨータさんの無事を祈る。そんな折、アイさんから連絡が入った。第十層で黒いワイバーンの群れが発生。ヨータさんが群れを追っているらしい。
ワイバーンの群れは増殖を続けながら、下の層へと移動しているという。その増殖を上回る速さでヨータさんが群れを攻撃。なんというか、私にとっては色々とスケールが大きすぎる。
重要なことは、ワイバーンの群れがこちらに向かっていること。私はそのことをキャンプの探索者たちに伝えた。
パニックを起こしそうになる者も居るなかで、Aランク探索者のリキヤさん、メグさんのお弟子さんが皆を落ち着かせてくれた。流石は高ランクの探索者たちだ。
「ルリカちゃん。私が皆を守るからね。安心してなさいな」
メグさんのお弟子さん、名前はナツさんと言ったか。私よりも歳はだいぶ若いように見えた。お姉さんぶっているのが可愛い。本人には言わないでおこう。
「私も、微力ながら手伝わせてもらいます」
とはいえ、私にできることなんてほとんどないかもしれない。層は思うが、第五層のキャンプでは私も戦力として数えるべきだ。このキャンプには今、Bランク以上の探索者は私含めて四人しか居ないのだから。
「譲ちゃんたちがやるってんなら、俺も戦わないわけにはいかねえよなあ! このリキヤも力を貸すぜ」
「うちの夫がどの程度、役に立つかは分からないけど、Aランク探索者が戦わないってのは、無いわよね」
リキヤさんと、彼の奥さん。夫婦でAランクの探索者をやっているというから頼もしい。何とか、私たちでこの場の皆を守ってみせる。そう、決意を固めた時。
「魔物の群れが来たぞおおぉ!」
キャンプ地の誰かが叫んだ。声のした方向に首を向けると、空の向こうから魔物の群れが飛んできているのが見えた。今まで見たこともない数のワイバーンだ。足が震える。が、グッとこらえ、盾を構える。
「キャンプ地の皆さんを守りましょう……!」
「……え、ええ!」
ナツさんだけではない。リキヤさんたちも足がすくんでいる。あの数のワイバーンはAランクの探索者だって怖いのだろう。だからといって、私たちが逃げるわけにはいかない。
「皆さん、しっかりしてください!」
「お、おう……!」
「Bランクの子が頑張ってるのに、私たちが逃げ出すわけにはいかないわよ。あなた……!」
Aランクの皆さんが決意を固めてくれた。直後、魔物の群れから何発も火の玉が放たれる。私は盾で火の玉を受け止める。ナツさんが刀で火球を打ち消し、リキヤさんは収納スキルで火球を消す。
「戦えない皆は、私たちの後ろへ!」
奥さんが叫んだ。マジックシールドのスキルでいくつもの火球を受け止めている。やっぱり、高ランク探索者は頼もしい。
どうにか皆を守らないと。そうは思いつつも、どこまで戦えるか。不安は大きい。それでもなんとか戦えるのは、きっとヨータさんが魔物の群れをなんとかしてくれると信じてるから。時間稼ぎができれば良い。他人任せにはなるけど、きっとそれがベストだ。
「……頑張れ! 頑張ってくれ!」
そんな声があり、次々に、背後の皆から、声援が送られる。誰かを守るっていうのは力が沸いてくる。それでも、限界はあるだろう。どこまで皆を守れるか。そんなことを考えていた時。
空の向こうに巨大な影が見えた。ワイバーンの何倍も大きい。それは、船と呼ぶべき形をしていた。あれがきっと、ヨータさんの時空戦艦なのだと直感で分かる。なんて……なんて強そう……!
船が現れてすぐ、空が光った。ワイバーンの群れが次々に撃破されていく。圧倒的というのは、ああいうことか。私たちとは戦闘の規模が違う。凄すぎる。
それでも、ワイバーンの群れは新たに増えようとしていた。まだ無事なワイバーンの体から、新たな魔物が現れる。あれは、倒しきれるのだろうか? そんな疑問に応えるかのように、船の先が光る。
いつか見た光の帯。あれを何倍も強くしたような閃光に目が眩む。それが、ワイバーンの群れを倒しきる決定的な攻撃になった。
閃光の後、目が慣れてくる。空から魔物の群れは消えさり、時空戦艦もどこかへ消えていた。
「今のはいったい……」
ナツさんが目を丸くしていた。この場に居る誰もが夢でも見たかのような感覚なのだろう。あるいは狐につままれたとでも表現するのだろうか。けれど、私は知っている。ヨータさんの時空戦艦が確かに私たちを助けてくれたのだ。
私は、青く晴れた空を眺めていた。自然と「ありがとう」と声に出る。あの人は、本当に凄い。あんな風に皆を守れる力が欲しいと思った。だから、私は思う。もっと、強くなろうと。




