おじさん、第十層へ
昼過ぎ、いよいよ第十層に到着した。辺りの空には第九層で見たのと同じ、キラービーの亜種が何匹も飛んでいる。嫌な感じだ。
また、この層は古代都市のような景色がずっと遠くまで続いているようだ。遠くには要塞のような建物が見える。あそこが第十層の集団キャンプだとは調べ済みだ。皆、無事だと良いのだが。
「ヨータ様、キラービーの亜種について、調べていて分かったことがあります」
「でかした。報告を頼むよ」
「はい、これらの魔物は魔力によって操作されているようですね。魔力は第十層の最深部から流れていると分かりました」
「つまり、黒幕はこの層の最深部に居るってことかい?」
「そのようです」
ふむ……となると、俺が最終的に向かうべきはこの層の最深部かもしれない。けれど今は、集団キャンプの方がどうなっているかの方が気になる。
「とりあえず、先にキャンプ地を目指そう。問題の解決はそれからだ。魔物に囲まれているという話も無視できないからな」
「承知いたしました。しかし、先にお客様のようです。ヨータ様」
「そのようだ。戦闘する必要がありそうだ」
第十層に入って早々、魔物たちがやって来る。どの層でも入口付近は比較的安全という話だったんだがな……魔物が群れで来るなんて聞いてないぞ。しかも、魔物の数はおおよそ百! とはいえ、恐れる必要は無い。
「ここまで来た俺なら、なんとかなるさ」
「ポジティブなのは良いことですよ」
俺たちの前に出てきたのは、等身大の球体関節人形みたいな魔物。そして、二メートルはありそうな鉄の鎧めいた……あるいはロボットのような魔物。俺がこのダンジョンへと来た目的。そいつらと会えたことにワクワクする。
「マリオネットとアイアンゴーレムの群れですね」
「第十層の最深部に行く前に、集団キャンプへ行く前に、一つの目的を達成しちまおう」
「私の体を作るための素材集め。ファイトです」
「さあ、やるかっ」
俺は光線銃を手に取って、トリガーを引く。狙うは大柄なアイアンゴーレムだ。基本は鎧の繋ぎ目を狙うようにして戦う相手らしいが、光線銃の火力であれば問題ない。むしろ、その重装甲は狙いやすくて助かるぞ!
アイアンゴーレムの胸に風穴が開く。一撃で鉄の魔物はひざを突く。まだ動ける同種の魔物が群れに数体居る。そいつらを優先して光線銃で倒していく。その間も、魔物の群れはこちらに迫っているわけだが、落ち着いて戦えば大丈夫だ。
「ヨータ様、マリオネットの群れが来ます」
「アイ、カニバサミを」
「はい。ご武運をっ」
アイからカニバサミを受け取った直後、人形の魔物と肉薄。思い切り得物を振って魔物の首を吹き飛ばす。あまり綺麗な戦い方ではないが、今は勝てれば、それで良い。力押しで勝てるならそれで良いのだっ。
人形たちを手近なやつから倒していく。そこそこの速さはあるが、硬くはない。であれば、倒すのに苦労はしない。俺の愛用する武器で片っ端からボコボコにしてやるっ。魔物をぶっ飛ばすのは気持ちいいぜっ!
「どんどんかかってきやがれ。全員倒してやる!」
カニバサミで魔物を叩く。叩く。叩いて、叩きまくる。そうして、時間が経過していき……気付けば周囲の魔物を全滅させていた。ふう、思ってたより楽に終わったな。
百を越える数の魔物が相手でも、余力を残して戦える。我ながら恐ろしいくらいに強くなったな……自分の力にちょっと引く。そして、俺はついに当初の目的を達成したぞ!
「アイ! マリオネットとアイアンゴーレムの素材を集めたぞっ」
「はいっ。これで私の体を作れますね。ありがとうございます」
「今は集団キャンプへ急ぐべき時ではあるが、少し休憩する。その間に体を作ることは可能かい?」
キャンプへ行く前にアイの体を作ることができれば、キャンプ地の中でアイと話しても不審には思われないだろう。ここからの冒険は、体を得た彼女と共に行動した方が、何かと不便はない……気がする。
「少々のお時間をいただければ、私の体を製作します。デザインなどのご所望はありますか?」
「デザインはアイに任せるよ。君が想像する、君の姿を作ってくれ」
「分かりました。では、少々お待ちください」
アイの言葉に合わせて、俺が倒した魔物たちは時空戦艦に送られた。俺はその場に腰を下ろし、アイを待つ。彼女を急がせてはいないかと、少し悪い気がした。同時に、アイが姿を持つとどんな感じになるのだろうと、期待する気持ちもある。
ドキドキしながらアイを待っていた。そのうち、アイから「準備ができました」と声をかけられる。おお、待ってたぜ。アイ。そう思いながら、俺は立つ。
「今から、ヨータ様に私の姿をお見せします。ただ、少し恥ずかしいですね」
「アイがどんな姿でも、俺は受け入れるよ」
「その、笑ったりしないでくださいね?」
「笑ったりなんかしない。約束する」
実際、アイがどんな姿でも、俺は喜ぶと思う。ここまで一緒に旅をしてきた仲間で、とても大切な友だちだから。
空間が歪む。その歪みから人の姿が現れる。そうして、俺の前に立ったのは……。




