おじさんVSワイバーン
飛来するワイバーンの口が大きく開く。口の奥が明るくなり、ほどなくして火球が放たれる。俺のバリアはあの攻撃に耐えられるか? それを試すよりは回避を選ぶぜ。慎重でいて悪いことはないはずだ。
足場は多少悪いが、ここでも縮地は使えるっ。俺は一瞬にして地を駆けた。火球の回避――成功だっ! この移動技、やっぱり便利だぜ。メグさんには感謝しなきゃな。
ワイバーンは続けて火球を吐こうとしている。こっちも回避してばかりは楽しくない。そろそろこっちからも攻撃させてもらうぞっ。
手に持つ槍を構えて、ぶん投げるっ!
「どっせい!」
槍は勢いよく放たれ、ワイバーンの片翼をぶち抜いたっ! 大きな風穴が空くのが見えて、正直かなり気持ちいいっ!
ワイバーンは落下しながらも火球を放ってくる。だが、無駄だっ。その攻撃はすでに見切った。縮地を使い火球を回避。いいね、今のところはかっこいいぞ俺。
「ヨータ様、有利に戦えていますよ」
「ああ、応援しててくれ」
鎧の飛行機能を使い、地上から飛び立つ。直後、ワイバーンが地面にぶつかって、周囲の土をぶちまける。今の墜落でやられてくれると楽だったが、まだ動けるようだ。こちらもまだまだ頑張るとしよう。
「そろそろ決着といこうか。アイ、新たな槍を」
「はい、受け取ってください。ヨータ様」
アイに新たな槍を出してもらい、それを手に持つ。自然と、槍を持つ手に力がこもる。あのワイバーンを追い込んでいるという事実に興奮した。
ワイバーンが地上から火球を放つ。さっきは縮地で避けたが、飛行中にその技は使えない。が、飛びながらでも充分に回避は可能だ。飛行しながら魔物の攻撃を回避する俺! さあ、こっからは俺のターンだ!
「第二投! くらえっ!」
空から槍を投げつける。もちろん全力の投擲だっ! 金色の槍がワイバーンの背をぶち割り、辺りに血や臓物、そして大量の土をぶちまける。流石に、これで死んだか?
などと、考えていたら地上から火球が飛んできた。最後っ屁ってやつか!? しゃらくさい。咄嗟に飛行状態を解除して自由落下で回避。すぐさま飛行状態に戻り、地上スレスレで墜落を避けた。ふぅ、やれやれ。
「勝った……かな?」
ちょっと離れた位置に、舌をだらりと垂らして動かないワイバーンの姿を確認できる。こうして見ると……結構怖い顔をしているな。
「ワイバーンの生命活動の停止を確認。絶命です」
「アイさん、そういうことも分かるのね?」
「ええ、私は最高に優秀なサポートAIですから」
アイったら自画自賛だね。しかし、勝ちか。あのワイバーンを……俺が倒した……! その事実に歓喜したくなってきた。俺は素直に喜ぶぞっ。
「よっしゃああああ! しゃあああ!」
「ふふっ喜びのあまり踊ってしまうとは、よっぽど嬉しかったのですね」
小躍りしていることをつっこまれてしまったが、まあ良いだろう。それくらい嬉しい気持ちなのだから。
「だって! 時空戦艦の砲を使わずに、俺の手で強敵を倒せたんだっ。こんなに嬉しいことは、あんまりない!」
「あんまり、ですか」
「まあ、あんまりだな。とはいえ、嬉しい気持ちに嘘はない。できればこの嬉しさを形にしたいところだが」
「でしたら、この様子を写真に納めますか」
「え、できるの!?」
「以前にも写真については話したではありませんか」
「いや、それは映像の話だったじゃん?」
「それで、どうしますか?」
どうしますか? って、そんなの答えは決まってる。せっかくの機会だ。記念撮影できるのなら、やらない選択肢はないっ!
「それじゃあ、お願いするよ。倒したワイバーンのところに行ってくるから。ナイスな一枚を頼むよ」
「ふふっ言われずとも、ベストな一枚を撮影してみせます」
ちょっと移動し、ワイバーンの前で刀を抜く。今回の戦闘で刀は使ってないけど、こうやって掲げるとかっこいいからね。仕方ない。
「アイ、撮影頼む」
「承知いたしました。三、二、一……! はい、撮影終わりました」
パシャリと音が鳴ったりはしなかったが、アイの言葉で撮影が終わったことは分かった。アイ曰く、すぐに写真を確認することも可能らしい。いいね、見せてもらうとしようか。
「このような感じで……どうでしょうか?」
アイがホログラムで見せてくれたのは、倒したワイバーンの前で誇らしそうに刀を掲げる俺の姿。なかなかいいっ! ただ、血とか臓物が見えてるのは、人によっては気になりそうなところだな。
「うん、良いよ。バッチリの写真だ。ナイスッ」
「ありがとうございます。さて、ヨータ様。ワイバーンを倒したところで、この魔物の素材はどうしましょうか?」
「それはおいおい考える……と言いたいところだが……ワイバーンってどんな味なんだろうな? 爬虫類っぽいし、鶏に似た味をしてるんだろうか?」
「気になりますか? では、艦内に戻って確かめてみましょう。私が上手く調理します」
「よろしく頼む」
その夜、艦内の食堂で口にしたワイバーンはかなりの美味だった。スライムの魔石もたんまりと集まったし、充実した一日だったね。
ただ、やっぱり今のダンジョンは何か妙なのかもしれない。俺はダンジョンに潜った経験は少ししかないけど、配信で知るダンジョンとはどこか違う。不安を感じつつも、明日に備えて眠るのだった。




