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おじさん、断る

「アイさんアイさん、どうして外が真っ暗になっていますの?」

「それはこの戦艦が時空の狭間を漂っているからです。会長」

「不思議ですのねー」


 艦橋の、窓の近くで会長がアイにあれこれ質問している。アイには、会長の質問に答えてあげるように言ってある。アイは渋々という感じだったが、ちゃんと言った通りにしてくれて助かる。


 メグさんは会長の側に立っている。ああして、いつも会長のガードをしているのだろうか? 刀一本で要人を守る少女……かっこいいな!


 そんなわけで今、俺はルリカさんの横で、どうしたものかと考えている。ルリカさんと話をしたかったのではあるが、いざ話すとなると、何を語るべきか迷ってしまう。


「……あの、ヨータさん」

「あ、はい」


 迷っていたらルリカさんの方から話を振ってくれた。とても助かります。


「さっきの話……誰を連れていくかという話についてです」

「それ、今かなり悩んでます」

「で、ですよね。急に一人を旅に同行させろなんて言われても、迷っちゃいますよね」

「まあ、そうですね……」


 俺とルリカさんとで互いに笑みを向ける。なんだか気まずい。


「それで……なんですけど」

「はい」

「旅にはSランクの探索者である……会長か、メグさんを同行させてあげてほしいんです」


 会長かメグさんを? それはどうして?


「そう考える理由を聞かせてもらっても良いですか?」

「はい、今の渋谷ダンジョンは強力な魔物が何体もうろついています。普段の渋谷ダンジョンなら、私でも十層くらいまでは難なく行けます」

「けれど、今は異常事態」

「そうです。今は異常事態です。だから、私では何かあった時に、きっと足手まといになってしまう。それは嫌なんです」

「なるほど……」


 もっともな理由だ。ルリカさんが冷静にものを考える人だとも分かった。それでいて、人を思いやる気持ちも強いのだろうと思わせる。正直、凄く好感が持てる。


 しかし、足手まとい……か。そんな言葉は使ってほしくないが……事実なのかもしれない。そして、俺は彼女たちにどう答えるべきか。


「俺は……」


 そこで言葉が止まってしまった。言うべき言葉がすぐには出てこない。言葉を決めるためには、まだ必要なものが足りない。それはなんだろう?


「ヨータさん」

「はい」


 ルリカさんが俺に真剣な表情を向けている。何か大事なことを話そうとしているのだと分かる。なら、俺は彼女の言葉へ真剣に耳を傾けるべきか。


「ヨータさん。一番、大事なのは、あなたが何を優先したいかです。私は会長かメグさんを連れていくことを勧めはしましたが、ヨータさんの判断を一番に尊重したいと思っています」

「俺が何を優先したいか……」


 今一度、考え直してみよう。俺は何を優先したいと思っているんだろう?


 そもそも、俺がこのダンジョンへやって来たのはルリカさんに影響を受けてのことだ。こうして彼女にあって話をしていることも嬉しく思う。


 なら、俺がもっとも求めているものは、ルリカさんとこうしていることだろうか? それは、少し違う気がした。


 今の俺は、ダンジョンを楽しみながら攻略している。それは……アイと共にのんびりと進んでいく楽しさだ。俺は……アイとの旅を何よりも楽しんでいる?


 俺にとっては……自分で思っていた以上にアイという存在が大きくなっていたんだな。今回のことで改めて、そのことに気づいた。そうか。そう、だったんだな。


「ルリカさん……俺は、どうしたいのか分かりました。向こうの皆さんを呼んできてもらっても良いですか?」

「分かりました。少し待っていてください」


 そうして、ルリカさんに会長とメグさんを呼んでもらった。緊張しつつ、俺は自分が何を優先したいかを彼女たちに告げる。


「会長さんの提案は嬉しく思います。ですが、俺は相方との気楽な旅が性に合っています。ですから、今回の提案に答えることはできません」

「あら、そうですの。残念ですわね」


 俺の言葉に対して、会長は肩をすくめつつも、こうなることが予想できていたかのような様子だった。ほんと、すいません。


「ヨータ様、私はヨータ様を信じていましたよ」


 対して、アイからは、ホッとしている様子が感じられた。彼女の方は結構不安だったのかもしれない。それとも、そういう演技をしているだけだろうか? どちらにせよ、可愛いやつだ。


「そんなわけですので、今は連絡先だけ交換するというところで、どうでしょうか?」

「……分かりました。ただ、今のダンジョンはいつもと違いますわ。くれぐれも、無理はなさらないでくださいね」

「ええ、善処します」


 俺の答えは出た。今後も、アイと共に第十層を目指す。そう伝え、女の子の連絡先が三つも増えることになった。彼女たちからは、いつでも連絡してほしいと言われたが、おじさんは少し、躊躇しそうだ。


「では、そろそろ第五層に戻っても大丈夫そうかしら?」

「いや、会長さん。まだ時間的にはあまり経過していません。もう少し、ゆっくりしていかれても良いかと思いますぜ」

「確かに。ではヨータさん、せっかくですから、艦内を案内していただいても?」


 艦内を案内か……ゆっくりしていけと言ったのは俺の方だし、艦内をちょっと案内するくらいは、別に良いよな。


「アイ、彼女たちを案内したいんだが」

「……承知しました。それでは、皆さんを案内しましょう」


 そうこないとね。せっかくのお客さんだ。交流を楽しませてもらおう。

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