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おじさんと三人の女の子

 周囲の景色が歪み、時空戦艦の艦橋へ転移する。今回はルリカさんたちも一緒だ。彼女たちは驚いた様子で周囲をキョロキョロと眺めている。まあ、驚くよね。俺も最初は驚いたし、今でも、こっちに来る度にテンションが上がる。


「うおおっ! すっげぇ! 瞬間移動だぜっ! ってかここどこだー?」


 特にメグさんが大きな反応を示してくれて、なんだか嬉しい。ルリカさんや会長は周囲を眺めるのをやめ、俺の方を見てくる。な、なんでしょうか?


「……確かに凄い能力ですわ。それに、ここなら落ち着いて話せそうですわ」

「ただ、こんな凄い手の内を私たちに見せてくれて良かったのですか?」


 感心した様子の会長と、少し申し訳なさそうにしているルリカさん。彼女たちに手の内をさらしたことについては、それほど問題視していない。今の彼女たちは配信をして居るわけではなさそうだし。


「できれば……ここのことは、俺たちだけの秘密にしてもらえると嬉しいです。皆さんのことを信じます」


 俺の言葉に会長が頷き「もちろんですわ」と答えてくれた。その返事を信用させてもらう。


「今日しばらくここに居てもらい、その後の適当なタイミングで第五層に戻れば、俺も、皆さんも目立たずにいられると思います」

「……そのようですわね。では、ヨータさん。その間に話をさせてもらいましょう」


 会長たちから最近のダンジョンの異常について教えてもらう。それらの情報の多くはネットでも公表されていることだったり、噂になっていることだったりした。その中で会長が話したあることに興味をひかれる。


「ヨータさんは魔王種と呼ばれる魔物についてはご存知でしょうか?」

「魔王種、いえ……それは初耳ですね。何なんです? そいつは?」

「一年前、エジプトのカイロダンジョンにて確認されたものです。エジプトのSランク探索者を総動員して、なんとか討伐したとのことですわ」


 ええ!? エジプトじゃそんなことになってたの!? 俺、ちょっと世間の事情に疎すぎるかも。ちょっと反省だ。


「さらにその一年前、カイロダンジョンでは、とある異変が確認されていましたの」

「ある異変? ですか?」

「ダンジョン内の魔物たちの活発化、強力な魔物たちの低層への移動。これは今の渋谷ダンジョンの状況と似ているのではないかしら?」

「なるほど……」


 それ、結構な大事なんじゃないか? 魔王種とやらが登場するまで、まだ時間的な余裕はあるのかもしれないが……。


「とはいえ、ですわ。人類は、まだダンジョンについて知らないことが多すぎます。もしかしたら、わたくしの不安は杞憂に終わるかもしれない。そうであると、願いたいところですが……」

「会長は最悪の事態も想定していると」

「ええ、そうです。もしかしたら、今日にでも、問題の魔王種が現れるかもしれません」


 なるほどねえ。さて、この話を聞いて俺はどうするのが正解かな? ただ、大きな問題が新たに起ころうとしているのなら、協力したい気持ちはある。


「わたくしたちは、一旦第五層にて諸々を整えるつもりですの。ヨータさんは、今後どうなさるつもりでして?」

「俺は……第十層を目指してダンジョンを進んでいます。ですが、俺にできることがあれば……そちらに協力したいとも考えています」

「ふむ……ならば、ヨータさん。あなたはこのまま第十層を目指してくださいな。当初の目的があるのなら、そちらを優先してくださいまし」

「そちらは、俺の協力をとりつけたかったのでは?」

「先にも言ったように、わたくしたちは、あなたとの連絡を取れるようにしておくことが目的です。ただ、いつ魔王が現れるかも分からない今、あなたを単独でダンジョンの奥へ向かわせることに不安がないわけではありません」


 ふむ。会長の言うことももっともなように聞こえる。異常の起きているダンジョンで、せっかくコンタクトの取れた人物を一人にしておきたくはないか。


「そこで、提案なのですが」

「提案?」

「わたくしか、メグさん、あるいはルリカさんの中から一人を選び、行動を共にしてもらうというのはどうでしょうか? ヨータさんさえ良ければですが」

「えぇ!? そ、それはルリカさんたちもご存知の話なんですか!?」


 いきなり三人の女の子から一人を選べと言われたら、おじさん驚いちゃうよ!?


「私たちは会長からこの提案は聞いています」

「だから遠慮なく、あたしたちの中から一人を選んでも良いんだぜ。ヨータの兄さんさえ良ければだがな」


 え、えぇ……?


「四人を二人づつの二組に分ける。悪い提案ではないでしょう?」


 そう言って会長は微笑む。なんだか話を上手く運ばれているような気がする。


「ヨータ様。惑わされないでください。それに、あなたには拒否権があります」


 ここまで黙っていたアイが困ったように言う。そ、そうだね。俺には拒否権もあるもんね? し、しかし本当にどうしたもんかな? 俺も困ったぞ。


「はっ!? それともヨータ様、本気で迷ってらっしゃる!? あなたはムッツリスケベだったのですか?」


 こらこらアイさん。やめなさい。そのからかいは本気で困るんだから。


「……ところで、ヨータさん。その声の方はどなたですの?」


 会長に言われてハッとする。アイの紹介が遅れていたな。これはいけない。


「えーと、こちらはアイさん。俺の秘書みたいな、透明人間とでも思ってもらえると助かります」

「……アイです。よろしくお願いします」


 なんだか、思ってたよりも大変なことになってきちゃったぞ。

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