おじさん、女の子たちを戦艦に招く
土煙が晴れて、少しして。俺たちは撃ち落とした昆虫キメラの元まで向かっていた。その間、女の子たちから何か聞かれるかと思ったが、彼女たちは黙っている。遠慮しているのだろうか?
目的の場所に到着し、昆虫キメラをアイに収納してもらう。色々見られてるからな。もう今さら女の子たちに隠す能力でもないだろう。しかし、どこまで説明したものか。
「おお! あの規模の魔物が一瞬で消えたぜ?」
驚きの声を上げる茶髪の女の子、彼女はメグという名前だったか。さて、とりあえず話をするとしよう。彼女たちもそれを望んでいるはずだ。
「昆虫キメラの方は、後で解体するとして、とりあえず、俺が運びます」
「そういうことでしたら、倒した魔物はあなたに差し上げますわ。良いですわね? ルリカさん、メグさん」
「私は構いません」
「あたしも構わねーぜ。会長」
会長? 彼女たちの会話を聞く限り、どうやらこの会長という人物がリーダー的な存在のようだ。さて、彼女たちは信頼に足る人物か? 魔物の素材をもらえるのはありがたいが。
「長々と話していると、集団キャンプから人が集まってくるでしょうね。その前に話しておきたいことがありますわ」
「話しておきたいこと……それは何でしょうかね?」
「我々は最近のダンジョンの異変を重要な問題と考えていますの。そのため、強力な探索者の協力を求めていますわ。そうすることで、ダンジョンの非常時に備えたいのです」
「つまり、スカウトってこと?」
「スカウトというよりは、もう少しゆるい繋がりと考えてくださいな。ひとまずは、連絡先を交換しておきたいのです」
「なるほど?」
面倒な強制をこちらに敷いてくる気は無いのか? それとも、最初は油断させる考えだろうか。もっと、彼女たちを信じられる情報があれば良いのだが。
「……それと、自己紹介が遅れました。わたくしはハナヤギ。探索者協会の会長をしています。探索者としてはSランクでもありますのよ」
え!? Sランクで、探索者協会の会長!? お嬢様っぽい見た目だとは思ってたけど、凄い人だった。
「で、あたしはメグ。これでもSランクの探索者だ。そして、こっちに居るのが……」
「ルリカです。あの、あなたにはこれで二度助けられました。本当にありがとうございますっ」
彼女たちの自己紹介の後、ルリカさんは深々と頭を下げる。その姿に、俺の警戒心は解けていく。そもそも、俺が探索者になったのは、ルリカさんに影響されてのことだ。
俺はルリカさんが配信画面の向こうで活躍する姿に心を動かされたのだ。それは憧れと言っても良い。そんな憧れの人物が、俺の前で深々と頭を下げている。それだけで、少なくともルリカさんを信じるには充分じゃないか。
決めた。ルリカさんを信じようと思う。だから今は、ルリカさんのパーティメンバーも信じる。それは、ちょろすぎる考えだろうか?
「俺は……ヤマモト・ヨータです。ひとまず、あなた方を信用します」
「信用していただけて嬉しく思いますわ。あなたのことは裏切らないと約束します」
裏切るというのは、穏やかな言葉ではないね。約束を守ってくれると助かるよ。なんて、考えているとメグさんが耳を澄ましているのに気付く。彼女は何を聞いているんだろう?
「会長、遠くから人の足音がいくつも近付いてる。この調子だと、あと十分くらいではち合わせになるぜ」
「先ほどの戦闘がありましたからね。やはり、落ち着いて話をするというわけには、いきませんわね。では、手短にいきましょうか」
メグさんに答える会長の顔を見るに、少し残念そうにしているのが分かる。本当は、もっと話をしたいのだろう。確かに、集団キャンプの方から人らしき気配が近付いているからな。どうするか。
「会長、話を続けたいなら、一旦第六層にでも逃げるか。もしくは、多少面倒になるかもだが、来たやつらに適当な説明をして、改めてこの兄さんと話をするとか」
「ふむ……」
メグさんの話を聞きながら、会長はこの後どうするべきか考えているようだ。ルリカさんは二人を見ながらオロオロしている。なら、この状況を解決するために俺から提案をさせてもらおう。
「お三方。俺なら、落ち着いて話ができる場所を用意できますぜ」
「よ、ヨータ様!? まさかっ」
アイ、さっきまではだんまりだったのに、急に喋るね? おじさん、ビックリしちゃったよ。
「ヨータ様、良いのですか? 私たちの時空戦艦に客人を招こうというのでしょう? 失礼ながら、少々相手のことを信用しすぎでは?」
「良いの良いの。俺は人の善性を信じる方だから」
なんて、アイと話をしているとメグさん以外の二人が目を丸くしている。そうか、アイの紹介もしないといけないか。
「ああ、今喋ってるのはアイ。彼女については後で説明するとして、話し合いの場を用意できますけど、どうします?」
「もう、私の承諾は無しですか。本当にお人好しなんですから……分かりました。彼女たちの返事があれば、いつでも時空戦艦に転送できます」
「ありがとう。アイ」
それで「どうします?」と三人に聞く。会長は何か考えている様子だったが、やがて頷く。残る二人も会長に従うようだ。そうと決まれば、彼女たちを時空戦艦に招くとしよう。




