おじさん、超レアスキルを手に入れる
「ヤマモト・ヨータ様ですね。書類はこれで、問題ありません。ダンジョン探索頑張ってください」
「どうも……」
渋谷ダンジョン近くにあるダンジョン監理局で、探索者になるために必要な手続きを終わらせた。おっさんが探索者なんて、と笑われるかもと不安だったが、杞憂だったかも。
どうも俺は自信が無くていけないな。もっと、自分に自信を持てると良いのだが。ともあれここから先はダンジョンだ。充分に気を付けていこう。
監理局で借りた警棒とシールド、ベストを装備し黒い塔に触れる。直後、俺の視界が真っ暗になった。これは誰もがダンジョンへ初めて入った時に経験するものらしい。この時にユニークスキルというものが与えられるそうだ。できれば、最高レアリティのSRスキルを期待したいところだ。
ドキドキしながらスキルが与えられるのを待つ。すると、目の前に金色の輝く文字が浮かび上がった。こ、これはぁ!?
【SSSR スキル『時空戦艦』を入手しました】
うおおっ!? SSSRだと!? 事前に調べていた情報だとSSSRだなんてレアリティのスキルは無い。が、目の前には時空戦艦の文字と共に異常なレアリティが表示されている。
思っても見なかった展開に心臓がバクバクと動く。興奮も覚めないうちに視界が開けた。辺りには草原が広がっている。どこまでも続いているかのようだ。都市にそびえる塔の中にはこんな世界が広がっているというのはなんとも不思議だ。
いや! だが、今はそれよりも、俺のスキルについてだ。時空戦艦というのは、いまいちピンと来ない。
戦艦を召喚するようなスキルなのだろうか? それは乗り込んで戦うものか? 召喚獣のように運用するのか? そもそもこの草原で発動可能なのか? レアリティから考えて強い能力なのだろうけど、分からないことが多すぎる!
「……と、とにかくだ。落ち着け。俺……」
ひとまず、周囲の様子を観察する。ルリカさんのレクチャーだ。草原には涼しい風が優しく吹いている。ところどころに探索者と思わしき人々の姿があり、パーティを組んでいたり、ソロだったり、様々だ。
当然俺はソロ。というか、ぼっち。なんでって俺からダンジョンに誘える友だちが居なかったんだもの。ちょっと悲しい。
けれど! けれどだ! なんか凄そうなスキルが手に入ったのは、凄く嬉しいぞ! 自尊心も少し高まるというもの! が、油断はしない。俺は慎重派の男なのだ。
「まずはスライムから狩ってみよう。ルリカさんも最初の相手はスライムが良いと言っていた」
草原を歩き回り、スライムを探す。後ろを向けば黒い壁がそびえているので、帰り道に迷う心配はない。ダンジョンから出る時はこの壁に戻ってくれば良いのだ。
いつでも帰れると思えば気楽に動ける。ここのダンジョンは上の階層に登っていかなければスライムや弱い魔物しか出現しない。だから、ここらで冒険を楽しむ分には安心だ。
そのうち、ダンジョンに来て初めてのスライムを発見! 黙視できる距離だが、まだ離れている。ならば、試すことは一つ!
「時空戦艦……召喚!」
だが、何も起こらない。
「ラ、ライドオン! 違うか――なら、時空戦艦カモン! ちょっと待て。どうやったら戦艦が出せるんだ……!?」
俺が戸惑っているうちにスライムはリズミカルに跳ねながら迫ってくる。その動きは結構早い……!
スライムの体当たりを受けても少し痛いだけで死ぬことはない――と聞いている……! とはいえ痛いのは嫌だ。戦艦が召喚できない以上、迎え撃つしかない……! や、やってやる!
迫り来る魔物を前にして意を決した時、不思議なことが起こった。俺に飛びかかってきた魔物が空中の見えない何かに阻まれたのだ。まるでそこに壁があるかのような反応。これはいったい?
ともかくチャンスだ。疑問に思っているのは後。地面に落ちたスライムへ近寄り警棒で叩く。
するとスライムが破裂して、その場にキラキラした石が残った。これは……魔石ってやつか。確かスライムの魔石一個で百円だったよな。おお! ダンジョンで初めての稼ぎだ! 結構嬉しいぞ!
正直なところ、ダンジョンには、思い出作りのつもりで来たようなものだった。一度ダンジョンを探索してみて、おじさんには荷が重いと思った時には、新しい会社を探そうと。そう考えていた。
でも、もしかしたら……と考える。俺が手に入れたスキルはまだ謎のものだが、それでも先ほどの不可解な現象、見えない壁の正体は、時空戦艦によるものと思って良いだろう。
もしかしたら、この調子で探索者として生きていくことができるのかも。そう思うと、体内に見えないエネルギーが注がれていくかのような感覚があった。
「よぉし! このままスライム狩りを続けるぞー!」
そして可能なら、今日のうちに時空戦艦がどういうスキルなのかを突き止めてやる。今、凄く楽しいぞ! 若い頃のような活力が今の俺にはみなぎっている!
ヤマモト・ヨータ。三十五歳の夏、ダンジョンのスライムたちを相手に謎のスキル時空戦艦の検証が始まるのだった。




