ダンスと言う名の戦
ルークの誘いに乗り舞を踊り始めたが、優雅で緩やかな曲調だったため腹ごなしにはなりそうもない。そこで私はふと思いついた。せっかくなのでここらで一つ仕掛けてみるのも悪くない。
「腹ごなしということだが、このままただ踊るだけではつまらぬ。一つ勝負をしないか」
生演奏とやらを背に、ルークと緩やかに舞いながら私はある提案をしてみた。
「勝負?」
「左様。次の曲はたんごだ。その曲の中で私は5回ほど貴様の腹を蹴り上げる。それを全て交わし切れたらお主の勝ちだ。一撃でも入れば私の勝ち。どうだ?」
おうむ返しのように聞いてくるルークに、私は勝負の内容を大まかに説明した。
「俺に大分有利な気がするんだが…。まぁいいか。で?何をかけるんだ?」
「命だ」
私の言葉にルークは一瞬よろめいた。が、舞を続けるのはさすがだな。
「腹ごなしには重すぎるだろう!?もっとこう…ライトな感じのものがあるだろう??」
ふむ。賭けにはのらなんだか。流れで始末してしまおうかと思ったが、意外と慎重な奴だ。まぁ半分冗談だからよいのだが。
「では敗者は勝者の言うことを一つ聞く、というのはどうだ?」
「別に賭けなくても聞くんだが…」
次になされた私の提案に否定はしなかった。
「では、良いのだな?」
「ああ、まぁ命に関わることでなければ構わない」
一気に畳みかけるように約束をさせた。よし、目論見通りだ。
そしてちょうどそこで曲が終わった。そのため一度お辞儀を交わす。勝負は次の曲だ。そう思いつつ待ちの姿勢に入ると、横から手を差し出された。
「よろしければ一曲お願いします」
そう言って手を伸ばしてきたのは、どこぞの令息だった。邪魔だな。
「断る。まだ次の曲もこのまま踊る故、な」
次の曲まで時間がない。私は簡潔にきっぱりと断った。
「へ??いやでも続けては…」
「悪いな。レディのご要望だ。退いてもらおうか」
なぜだかおろおろとする令息をルークが追い払う。すごすごと去っていく令息だったが、ほぼ初対面というのに断られない自信でもあったのだろうか。解せぬ。
そのまま次の曲が鳴り始めたため、ルークは私に手を差し出し、私はその手を取った。
蹴りを入れる機会は五回。それ以上は許されない。素早く、そして確実に仕留めなければ。まずは小手調に一撃。
曲に合わせて腹部を蹴り上げたが、ルークにさっとかわされてしまう。
「なるほど。これはいい腹ごなしだ」
「ふっ…。そのようなことをいつまでも言っていられるかな?」
まだ余裕の表情を見せるルークだが、まだ勝負は始まったばかりだ。
次はここで二撃め!…と見せかけて仕掛けない。には引っかからぬか。では次はまた罠と見せかけての二撃め!と見せかけてのやはり仕掛けない。と、思ってからの…
「な、なんか凄い鬼気迫ってないか?」
「もの凄いキレッキレね??」
「あれはエイル公爵のご令嬢よね?お相手は…王太子様じゃないのね」
「一緒に踊っているのは確か…辺境伯のご嫡男ではないか?」
周りの来賓客たちは、ざわざわとしながらもこの勝負を見守っていた。
「お主、なかなかやるな」
「キリルシュカこそ…、とんだ公爵令嬢もいたものだな」
私の言葉にルークは笑いながら答えた。しかし舞という名の勝負はまだ続いている。
まだ二撃残ってはいる。だが次が最後だ。悪いが確実に仕留めさせて貰おう。
そう思い、ルークの金的を思い切り蹴り上げようとしたその瞬間…
バチンッ…!
宴会場の灯りが消え、辺りは暗闇に包まれた。




