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恋だのなんだの

「す…?」

 ミニスの発言により場は凍り、質問全てに律儀に返答していたルークも固まってしまった。


 全く、何事も色事に結びつけようとするのはさすがの若さよ。どう見てもそんなこと考えたことも無いという顔をしておろう。そしてルークのこの沈黙は、それを正直に言うのも失礼に当たるかと考えて困っているからなのだろうな。


「ミニス。駄目よそんなデリケートなこと、こんなところでずけずけ聞くのは」

 側で見ていたターナがやんわりと嗜める。ちなみにここは学園の正門である。


「あ!そうですよね!ごめんなさい、ついつい気になっちゃって…」

 ミニスは言われてその発言の不躾さに気づいたのか、慌て出した。


 まぁ年頃の女子ゆえ致し方なかろう。ルークも適当に流してこの場を収めればよいだけだ。…と思いながらルークの方に目を向けると…


「…俺はそうと取れるような態度や発言をしていただろうか」

 顔を手で覆っているため表情はよく読めない。


「いや、別に。全く好意は伝わってこなかったぞ」

 実際色事の気配は感じなかったため、すっぱりと否定してやる。


「…しかし、側から見ているとそのように感じられたからの質問だろう」

 ルークは私の返答に納得いかないようだが、いまだ表情は見えない。


「あ、あの、ごめんなさい。深い意味はなかったというか、ただの好奇心で…」

 ルークの深刻な声におろおろとし出すミニス。


「あまり女子を困らせるな。適当に返事をしておけば良いだけだろう」


 全く、真面目すぎるのも考えものだな。そう呆れながらもルークの自らの顔を覆う手をどけようと手を伸ばす。と、がしっとその手を掴まれた。


「すまなかった。そのような意図はなかったのだが、配慮がなかった」

「構わぬ。だから無かったことにせい」

 ルークは私の手首を掴んだまま、真っ直ぐに目を見て謝罪をしてきた。


 うむ。これはもしかしなくとも騎士の誓いとやらをなかったことにして解決出来る良い機会だな。ミニスよ、そんなつもりはなかったかも知れぬが良い働きだったぞ。


「誓いを破ることはできない。そうする時は騎士でなくなった時だ」

「いや、破るのではなく無かったことにすれば良かろう」

 やはりこやつ真面目すぎて面倒だな。


「騎士の誓いは絶対だ。それに誓ったことに間違いはない!だから…そうだ!レディに恥はかかせない」

「は?」

 待て待て。何か暴走してきていないか?


「俺の発言をいかように取ってくれても構わない。どうなっても責任はとろう」

 高らかに宣言するルーク。そしてまた騒ぎ出す周りの生徒たち。注目されるのは困るというのに…!


「そうか、では今すぐ腹を切って死ね」

「き、キリー!?」

 ルークの手を振り払いながらした私の発言に、ぎょっとするターナたち。


「いい加減この不毛なやり取りも面倒だ。こんなところで騒いでいるため注目されて迷惑極まりない。よって責任を取り腹を切れ」

 ふう、一息で言ってやったぞ。さてルークの反応はどうだと伺うが…。


「それは断る。まだ貴女の感情と自由を取り戻していない。いや…感情は今少しみえたか」

「何?」

 平気な顔をして断ってきおったなこやつめ。それに感情が見えただと?


「少しだが怒っているのがわかった」

 ははっと笑うルーク。成る程確かにその笑顔にも、いらっとはしている。


「お主なぁ…」

 私は溜息を吐きながらも、そろそろ教室に行かなければと思い出す。何よりこれ以上正門の前で話すのも考えものだ。


「まぁよい。教室に行かねば。話は終わりだ」

「そ、そうね。遅刻しちゃうわね」

 私の言葉に頷くターナ。ユミナは何故かきょろきょろと辺りを見回していた。それに気づいたターナが声を掛ける。


「どうしたのユミナ?」

「いえ…こういう時って王子様が颯爽と現れて、恋の火花が散ったりしないのかなぁ〜なんて…」

 本やお芝居なんかでよくあるじゃない?などとのたまうユミナも、ミニスと同じで年頃の女子ゆえなのだろう。


「クロード様はそんなにお暇では無い。私如きのために煩わせるわけにはいかぬ」

「いや、婚約者のためならそのくらいしてもおかしくないだろう」

 適当にあしらう私の言葉にルークは喰い気味に被せてきた。


「お主、存外夢見がちな男よな」

「狩りの鉄則だ。狙った獲物は逃がさない」

 ふむ、それもそうか。などと変に納得してしまう。


 そしてそんなたわいないやりとりをしながら、私たちは校舎内へと入って行った。


この話を後から噂で聞いたクロード様が、なぜかまたロティの元へと相談に走ることなど知る由もなかった。


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