女子の探究心
翌朝。女子寮の門の外に立っている人物がいた。遠目からでもわかるあの珍妙な髪色はルークだ。
「まぁ、ルーク先輩?」
ちなみに今日は同室のターナやその友人と一緒だ。三人とも驚きの目をむける。やはり門の前に立つ不審者が気になったらしい。
「知っているのか?」
「えぇまぁ…。女子に人気ですもの、ほら」
私の言葉に、ターナは周りの女子たちの反応を目で指し示した。確かに門の前に仁王立ちしているルークを皆ちらちらと見てはいる。そういえばいつだったかの剣術の授業の際にも、女子に騒がれていたことを思い出す。
「真面目だし格好いいし剣術もお強いしで人気なんですよ」
ターナの友人で子爵令嬢のユミナが、付け足しのように教えてくれた。
ルークは此方に気づいた様だが、さすがに女子寮の門は潜れないため黙って立っている。
一瞬知らぬふりをしようかとも迷ったが、目的が気になるため声をかけることにした。
「ルーク。何をしている?ここは女子寮だぞ」
「レディに会いにきた。守ると誓ったからな」
辺りがざわっ…とした。ターナも目を丸くして驚いている。
「私を守るくらいならクロード様を御守りせい。私と違って替えの効かぬ存在ぞ」
「キリルシュカ。貴女の代わりだってどこにもいない。そんな風にいう貴女を騎士として放ってはおけない」
私を真っ直ぐに見つめて言ってくるルーク。会話ができぬ。
「あの…騎士の誓いをされたのですか?」
おずおずとターナがルークに質問をする。
「そうだ。誓い果たされるまでこの身はキリルシュカに捧げる」
ルークがやたら大声で返事をしたため、周りもまた騒ぎ出した。
「きゃああああ!誓いですって!!」
「捧げるって…捧げるって…そんなぁ!」
「もう決めちゃったってこと!?」
何をそんなに騒がれているのかよく分からぬが、忍びにとっては迷惑以外の何物でもない。
「いらぬ。断る」
「昨日は赦しを得た。無効にはできない」
きっぱりと断ってみたが、さらにはっきりとそれを否定された。
赦した覚えはない。あれはロティの言ったことをおうむ返ししただけだぞ?拒否できないなど、悪質すぎないか?騎士の誓いとやらは。
「キリー…、そんな嫌そうな顔はさすがに…」
私の迷惑そうな顔を見たターナが小声で注意してくる。いかん。顔にでてたか。
「で、会ったからもう良いか?授業に遅れる」
本当はそんなに急いでもいなかったが、この辺で切り上げたかったのである。
「学園まで送ろう。どんな危険があるか分からないからな」
「では有事の際は肉壁にでもなるんだな」
それならば少しは使い道もあろうと言うもの。でなければ邪魔でしかない。そう言いながら私は歩き出す。
「き、キリー、さすがにそれは…」
ターナが私の後を追いながらも、おろおろと私とルークを交互に見る。ミニスやユミナも同じくだ。
「それは本望だ。バーレリアの盾と呼ばれるマディアスが力をお見せしよう」
無駄に爽やかに笑いながら私の横をついてくるルーク。
「カッコいい…!」
「ステキ…!」
何故かミニスとユミナが頬を染めてルークを見やる。いや、格好良くはないだろう。肉の壁だぞ。
そしてそのまま何故か五人で学園に向かって歩く形となってしまった。その間、ユミナやミニスがルークに向かっていくつか質問をしていた。
「騎士の誓いはいつたてたんですか?」
「誓いはどんな誓いを?」
「今朝は何時から門の前に?」
「朝ごはんは食べたんですか?」
「男子寮のメニューって美味しいですか?」
「今日の日替わりなんでした?」
だんだんどうでも良い質問になっていったが、ルークは律儀にも一つ一つ簡潔に答えていた。
まぁ適当に話している内容は私に関係もないな。そう思いながら歩き、学園に着いたその時。ミニスがした発言により、場が凍りついた。
「ルーク先輩ってキリーさんのこと好きなんですか?」




