桃色注意報
桃色娘ことマーガレット視点です
昼休みが終わって教室に戻ろうとした時、クロード様とキリルシュカの様子がおかしいことに気づいたわ。
クロード様は少し困った顔をしていたし、キリルシュカは…まぁよくわからないけど、二人の間が何かギクシャクしているのかなと感じたのよ。
さてはとうとうルークが何か動き出したのねと思って、クロード様に忠告をしなきゃと思ったの。イケメンが憎くて憎くて仕方がないルークなら、イケメン王太子の婚約者であるキリルシュカを狙ってくるかもしれないんだから。それで放課後キリルシュカの身の危険についての大事な話があるから時間を下さいと言ったのよ。そしたらやや怖い顔で了承したわ。何その顔?
…でもあのポンコツ王太子!
ピリピリしているせいか、婚約者の誘いを断ってまでわたしの話を優先するみたいな言い方になっちゃってるじゃない!?これじゃわたしって悪女みたいじゃない!しかも隠れて聞いたりもするなって、言い方最低じゃないかしら!?
…まぁ仕方ないから、とにかく話をするため校舎裏に移動したのよ。今ここね。
「…で、キリーの身の危険とは何だい?」
真剣な顔をして聞いてくるクロード様。こういう顔をしている時はゲームと変わらないんだけどな。
「…誰、とは言えないんですが、最近キリルシュカさんに近づいている男性に心当たりはありませんか?」
私の言葉にクロード様がぴくりと耳を動かす。
よし、心当たりはありそうだ。脳内と現実の婚約者の区別がついているか心配だったけど、とりあえずは話ができそうね。
「それで?いたとして、それが?」
およよ、やっぱり少し苛立っているみたいだわ。人当たりが良く柔らかい物腰と言う設定はどこへいったのやら。しかも我ヒロインぞ。
「その男性がキリルシュカさんを狙っているかもしれません。方法は分かりませんが…狙った人物の人格を変える能力があるのです」
「狙う?キリーの人格を変える?そんなことをして一体何が…」
やはりすぐには信じてもらえないらしい。わたしのセリフに怪訝そうな顔をしているわ。
「理由はまだ分かりません。…ただ単純に考えて、キリルシュカさん、美人ですよね?」
ぴくっとクロード様の耳が動く。
「美人が自分好みの性格になって手に入ったら、大抵の男性は嬉しいですよね?」
びくっとクロード様の体が動く。
「好きって言って自分に夢中になられたらもうたまらないですよね?」
がばっとクロード様が両手で自身の顔を覆う。
「理由はそれだけでも十分じゃないですか?だって、キリルシュカさん美人でスタイル抜群ですもん」
「キリーは僕の婚約者だ!!」
とうとう堪えきれずに叫び出したクロード様。
ふーん、やっぱりね。脳内か現実かは分からないが、ゲームと違って婚約者のことが好きなのねこの王子様は。まぁそれともぼっち時代が辛くて、婚約者に対する変な独占欲があるだけなのかもしれないけどさ。でもそれなら話は早いわね。
「ではその様なことにならない様に、注意して下さい。これは聖なる乙女の予感です」
本当はただの勘だけど。まぁ嘘は言ってない…わよね?ぎりぎり。
わたしの言葉にクロード様は何かに気づいた様に顔をあげ、叫び出した。
「こうしてる今も危ないじゃないか!」
イケメン顔がうるさいな。だからそう言ってるじゃないの。何て考えていたらクロード様は、突然バッと振り向いて走り出した。
「あ、ちょっと、私も行きます!」
慌ててその後ろ姿を追うことにした。
あのポンコツ王太子を放っておいてもいいけど、わたしのせいで何か変なトラブルになっても困るのよね。なんかあのままだとドブとかに落ちそうじゃない?
ってかなんで婚約者を探すのに木の上とか校舎の壁とかを探してるの?混乱状態なの?ちょっとポンコツすぎないかしら??
王太子の奇行をなんとなく口出せずに見守っていると、急にきゃああああ!と言う黄色い声が聞こえてきた。
「え?何?」
「キリーの気配だ!」
草の中を探していたクロード様が声のする方へ走り出した。え。それ脳内婚約者のほうじゃなくて?
不安に思いながらも追いかけると、そこには人混みができていた。
人が邪魔でよく見えないわね。クロード様の身長なら見えているのかしら?…と、隣を見上げると、目と口をぽかんと開けたまま完全にフリーズしていた。何それ!?乙女ゲームのメインヒーローの顔じゃないわよ??放送事故レベルだし!
とんでもないものがあるのかと人混みをかき分けて見たその瞬間、放送事故の原因がわかったわ。
…何でルークが跪いてキリルシュカの手を握ってるの?いくらなんでも急に話が進みすぎじゃない??




