ガルシアとルーク
バーレリア王国の騎士たちが使う剣は、日本刀に比べて太くて大きい。力強いが、その分重量がある。この演習場にあるのは木刀か模造剣だが、やはり作りは大きく重たい。だからこそこやつらの剣術は、斬るというよりも叩きこむという印象だ。明らかに筋力がある男の方が有利なため、この国の剣術を学ぶことは早々に断念した。基本的には主命を果たせればよいので、正攻法を目指す必要はないのだ。が、敵がもしれぬ相手の力を知ることは必要だ。
ルークは狩猟で鍛えられているからか、目が良い様だ。ガルシアの太刀筋をしかと見ている。反応速度も良い。だが単純な腕力ではガルシアの方が上の様子だ。受け流すのがぎりぎりで、鍔迫り合いになればルークの方が力負けする。二人の実力的には拮抗してるか、ややガルシアの方が上だろうか。
「ふんっ!」
ガルシアが思い切り叩き込む。
ガラーンッ…!
ルークの手にあった剣が演習場の床へと落ちた。柄と僅かな刀身だけを残して。つまりはまぁ、へし折ったんだな。腕力で。やはりガルシアとは正式な剣術では戦いたくないな。もしあの勢いで身体に叩きこまれれば、たとえ模造剣であろうとただでは済むまい。
さてルークの反応はというと…
「すごいな…!さすが噂に聞くバルク家の子息だ」
何やら感動している様だ。というか噂に聞くのか。
「いやあ、ルーク先輩も凄かったです。攻撃を全部見切られていて驚きました」
爽やかに笑いながらガルシアは言う。
そうだな。太刀筋を見られて受け流されたのが殆どだ。だから力ずくで折りにいったものなお主は。などと思っていると、ちらりとルークがこちらを見る。
「さっき、キリーが師匠だと言っていたということは…。そうは見えないがこれ以上に腕力が強いのか…?」
ちらちらと折れた剣と私を交互に見やりながらルークが青ざめる。そんなわけなかろうに。
「師匠にはそもそも攻撃が当たらないんです。だから力ずくでは絶対に勝てないというか…」
こらこらガルシアよ、人のことをぺらぺらとしゃべるな。敵かもしれぬ相手に手の内を明かす必要はない。
私は折れた刀身を拾いガルシアへひょいと渡す。
「ん?なんだよ師匠」
「弁償物だぞこれは」
そう告げた言葉に青ざめるガルシア。当たり前だろうに。学園の備品だぞ。
「げっ…!」
「力にばかり頼るからだな」
あの瞬間右足側が空いていた。足払いでもすれば勝てただろうに。まぁ、とはいえ…。
くるりとルークの方に向き直り、声をかける。
「次は狩猟の腕前をぜひ見たい物だ。弓の方が得意なのだろう?」
「え?そうなのか?」
私の言葉にガルシアが間の抜けた声で口を挟む。
「え、ええ、いや、うん。まあ…」
?なにやら歯切れの悪い返事だな。
「この前武器工房で試し撃ちしていた時の方が楽しそうだったからな。実力も然り」
「辺境にでる獣を狩るのには弓の方が有利なだけだよ。田舎だからね」
はははと笑いながらルークが答える。
「辺境は野蛮なところだって良く言われる。まあ王都から見れば間違いではないか」
やや自虐的なのか、苦笑いだな。どんなところか見たことはないが、故郷があるだけよかろうに。まあそれにそもそも、だ。
「王都は綺麗すぎるからな」
私の言葉にルークが驚いた顔をして振り向いた。




