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剣術稽古

 放課後。


 教師の挨拶が終わるか終わらないかの内に、桃色娘が教室を飛び出して行く姿を見た。先程行っていた妖精の衣だか何だかを入手するのに忙しいのだろう。昼休みも姿は見えなかった。さて、これからどうしたものか。私だけでもルークを見張るかどうするか考えながら立ち上がった時、隣にいたガルシアから声をかけられる。


「師匠、この後西棟の演習場に付き合ってくれよ」

「西棟の?あそこは剣術用だろう。騎士の型は分からぬし、単純な剣術はもうお前には敵わないぞ?」

 犬ころの様な目をしたガルシアを見ながら答える。


 そう。私による基礎鍛錬だけでなく、幼少より騎士団長である父親に鍛えられ、ガルシアは剣術においてかなりの手練れとなっているのだ。上級生でも単純な剣術勝負ならば、こやつに敵うものはいるかどうかだろう。そんな相手と剣術勝負とな。そもそも女子には剣術の授業はなく、私もこの国の剣術は全く習っていない。子供の頃にこやつと良く手合わせをしていたため、見様見真似なら出来るがそれで勝てるとは思えない。手段を選ばなくて良いならば負ける気はしないが。


「面倒くせぇルールはなしだ。禁止事項も無し。ただし攻撃は剣のみ。これでどうだ?」

「なるほどよかろう」

 それで勝てると思っているのがこやつの甘いところだ。ちなみにクロード様は午後から公務で王城にいらっしゃるので、護衛の面でも問題ない。こやつもだから声をかけて来たのだろう。


「まずは西棟まで駆け足勝負だ。行くぞ」

「よっしゃ負けねぇ!」

 単純な速さ勝負で何故負けないと思ったのか知らぬが、駆け足は勿論私が勝った。




 ーーー演習場。


 すでに体操着に着替えた私たちは、演習用の剣を手に持ちじりじりと対峙していた。


 単純な力勝負では勝てる気がしない。受けることもなるべくしたくない。ならば全てかわすのみ。右へ一歩。


「はっ!」

 ガルシアが踏み込んできた。そのまま打ち込まれる一撃。それをかわして前へ一歩。斬りかかると見せかけて後ろへ跳躍。剣をガルシア目掛けて投げる。


「おっと!」


 ギィンッ!


 飛んできた剣を弾いて一気に飛び込むガルシア。


「貰った!」


 ドシュッ…!


 ガルシアの剣がと私の腹に当たったかに見えたようだが、馬鹿め。それは丸太、空蝉の術だ。


「えっ」

「勝負あり、だな」

 ガルシアの背後からひたりと短めの剣を首元に当てた。


「…まいった」

 がらりと剣を置き、両手を挙げるガルシア。降参だな。私も首元からゆっくり剣を下げる。


「全く、相変わらず考えが足らぬな。剣が一本とは言ってないだろう?」

「くっそー!そう来たかー!」

 そう。先程投げた剣とは別に、もう一本短剣を忍ばせていたのだ。


「ってか丸太はどっから出てきたんだよ!?そもそも剣じゃねぇし!」

「攻撃は剣のみ使ったろう。あれは防御だ」

 まだぎゃあぎゃあと騒ぐガルシア。やはりまだまだ子供だのう。


「お主は規則に則った剣術なら強いが、明らかに実戦不足だな」

「お前だってほぼ実戦経験はないはずだろうが!」

 ふむ。今世ではな。この王国は実に平和だった。


「よーし!もう一回だ!次は勝つ!」

「やれやれ、単純なところがいかんと言うのに」


 その後五回ほど勝負したが全て負かしてやった。こやつは腕は確かなのに絡め手に弱過ぎるのだった。

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