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不穏な朝

 あくる日。寮を出て学園へと向かおうとしたところに桃色娘と会った。こちらを目視するや否や駆け寄って来た。


「昨日一日中どこ行ってたのよ?武器工房がどうだったかの話を聞きたかったのに!」

「昨日は呼び出されて邸に帰っていたのだ。武器工房は弓がすごかった。威力と精度が両立されていてだな…」

 そういえばまだこやつに土の曜日に解散した後の話をしていなかったなと思い出す。あの弓は実に興味深かった。


「ガチ武器の話はいいのよ!…って、親に呼び出されてたの?公爵様に?」

 意外な方の話にくいつくな。武器には興味はないのか。


「あぁ。私も今年で16になるから夜会に参加するよう言われてな。エイル公爵家で開催してくださるらしい」

 昨日はクロード様好みの女性客を熟考していた。あらゆるお好みに対応出来る様にせねばな。


「公爵家の夜会…」

 ん?何やら桃色娘が呆けておるな。さてはこやつも夜会が何か知らないのだな。


「夜に開かれる宴のことらしいぞ」

「知ってるわよ!…ん?宴?うん…いやそれより!それイベントよ!」

 またいべんとか。つまりはこやつの言う未来予知のことだな。


「格の違いを教えるために平民の私を招待するつもりでしょう?」

「いや、別に考えていなかったが。来たいのか?」

 なぜわざわざそんなことを私がせねばならぬのかは知らんが、こやつの予知ではそうなのだろう。どちらにせよ来たいのならばくれば良い。


「公爵家の夜会…共通イベントはある程度起こしておかないとバッドエンドが怖いのよね…うん、いやでももうどこまでがゲームと同じと分からないし…」

 うんうんと悩み続ける桃色娘。


 よく分からぬが大変そうだな。そういえばクロード様のお好みがとんちきな女の可能性もあるな。そう考えるとこやつも呼んでおきたいな。


「悩むくらいなら来るといい。こちらで招待状を用意しておこう」

「そうね…うん、そうさせて貰うわ。よし!そうと決まれば妖精のドレスイベントを起こしてくるから、忙しくなるわ!じゃ、また!」

 さっと片手を上げる桃色娘。


 頭がどうかしているとしか思えない発言をして、そのまま桃色娘は走り去っていった。本当に大丈夫かあやつは。まぁいい。改めて学園に向かうか。


 数歩ほど歩いて行くと、後ろから早足で近づいてくる気配を感じた。この足運び、ルークか。私に何か用だろうか。試しに歩調を早めてみよう。すると奴もまたそれに合わせたかのように歩みを速くする。そうすると私もまた早める。そしてさらに奴も速くなる。それを繰り返して暫くすると…。


 ざわざわざわ…


 校門を通り過ぎる辺りになると、周りからかなり見られていた。そろそろ止まって用を聞いてやるか。と、思ったその時。


「何やってんだよ師匠」

 歩みの先にガルシアがいた。そしてその隣にはクロード様も。


「おはようございます、クロード様。本日もご機嫌…」

「麗しくはないかな?」

 挨拶の途中で遮られた。ふむ、何やらご機嫌が悪いようだ。


「はあ、はぁ…。で、殿下…。おはようございます」

 息を乱したルークが追いついて挨拶を述べる。


「やあおはよう。二人ともどうやらとても仲良しなんだね?朝から楽しくじゃれてるなんて」

「い、いえ!そのようなことは!先日の比例を詫びようと追いかけていただけで…」

 なるほど。クロード様には戯れてるように見えたのか。朝から騒いでいて不快だったのかもしれぬ。と、考えているとルークがこちらに向き直り頭を下げた。


「先日は王太子殿下のご婚約者とも知らずに失礼しました。ご令嬢に対して無礼なことを申しました」

「いや、別に何も…」

 特に無礼はされていないが、王家に忠実とされる家系だ。王太子の婚約者である私にも礼儀を尽くそうとしているのだろうか?桃色娘のいう様にそれが表向きの態度であろうと、学園内で頭を下げられているのは困るな。


「いや、頭を上げてくれ。十分紳士的な態度だったではないか。また機会があれば是非試させてもらいたい。」

「紳士的?試す?」

 む、クロード様からさらに怒りの気配を感じる。何かいけなかったのだろうか。ここはご機嫌を良くすることを何か…そうだ!


「クロード様、お耳を少々よろしいでしょうか?」

「え、み、耳…?」

 ささっとクロード様の方に向き直り、つま先だちして耳元に近づく。なぜか頬を赤らめながらクロード様が固まる。


「クロード様がご不自由されぬ様に、幾人かご用意いたします。歳の頃、胸囲等お好みが御座いますれば是非お教え下さい」

「へ」

 お耳元で小声で囁く。よし、これでご機嫌もよくなるだろう。


「いや待って?そういえばまだ何か誤解したままなのかな??違うからね?不自由してないから!」

「いえもちろんご自分で調達なされるのも結構ですが、ぜひこちらからもお勧めの女性を…」

 なにやら慌てて否定なさるクロード様。ご自身で適当に見繕われるのも良いが、是非一度取り揃えさせて欲しいものだ。


 そこで鐘が鳴った。これは予鈴か。


「そろそろ教室行かないと遅刻するぜ!ほら行こうぜ!それじゃ先輩、失礼しまーっす!」

 鐘の音に慌てたのか先程まで何故か気配を消そうとしていたガルシアが騒ぎ走り出した。こやつ遅刻とかあまり気にしない奴だと思っていたのだが、やはり高等部になって成長したな。確かにクロード様を遅刻させるわけにはいかぬ。


「それでは失礼する。クロード様…」

「いや、お姫様抱っこは止めて!」

 両手を出したところで制止され、走って逃げられてしまった。先手を打たれてしまっては仕方ない。私はそのままクロード様を追った。


 また怪訝な顔をしたルークを残して。


「不自由してない…?調達…?」






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