夜会デビューに向けて
久しぶりの公爵家です
日の曜日。私はお父上様に呼び出されて公爵邸に来ていた。
「夜会…ですか?」
ゆったりとした椅子に腰掛けているお父上様を見やる。隣には何故か不安そうな顔をされているお母上様がいる。
「あぁ。キリーも今年で16になるし、そろそろかなと思ってね」
いつもと変わらない朗らかな笑顔でそうお父上様が言った。
夜会…。家庭教師に教わった気もするが、何だったか…。確か酒宴のようなものだった気がするのだが。一芸を用意しておいた方がよいのだろうか。腹踊りくらいしかできるものがないのだが、この世界でも通用するだろうか?
…と考えを巡らせている途中、お母上様がこちらを胡乱な目で見ていることに気づく。
「キリー、あなたまさかと思うけれど、夜会がなんたるかを知らないわけではないわよね?」
「はい、夜に行われる貴族たちの宴かと」
お母上様のお言葉に即座に答える。
「んー…?間違いではないのだけど、何かしらこの不安…?」
顔を手で覆いながらぶつぶつと呟きながら考えだすお母上様。
なんだ?何か言葉が不足していたのだろうか。
「まあまあ、いいじゃないか。夜会デビューは我が家で行うからそんなに構えなくてもいいんじゃないかな?なんならキリーの親しいお友達も呼ぶといい」
はははと笑いながらお父上様が言う。元々器の大きいお方だが、お年を召されてさらに大らかになられた。
「あなたは本当にどうして家族のことになるとそう緩くなるのよ…」
なぜか力なく項垂れるお母上様。どうしたのだろう。何かお疲れなのだろうか。
しかし親しい友人か。特に考えたこともなかったが…。公爵家からすれば誰か呼んだほうが良いのだろうか?
「あ、ちなみにクロード様にはエスコートを頼んでいるよ。婚約者だからね」
なんと!クロード様が!これはなおさら失態ができない。楽しんで頂けるよう最大の努力をせねば!
「お父上様、承知いたしました!つきましては当日に向けて準備を始めます!これにて失礼いたします!」
「うん、じゃあまた分からないことがあればなんでも聞いておくれ」
お父上様は私の言葉に頷くと、退出の許可をくれた。
「それでは御免!」
これこそ女性たちをご用意する時だ。今後ご不自由されないように2、3人程側室候補も絞りたい。
急ぎ出て行く私を見てお母上様はまた頭を抱えていたようだが、それはまた別のお話である。
「急いでまた家庭教師を用意しなきゃ…。というかまた何か勘違いしてないかしら?」




