秘密の追跡
桃色娘との話し合いの翌日。現在、昼休みというこの時間に、私たちは王立学園の廊下にいた。
桃色娘の話によると、ルークとは幼馴染の関係らしい。桃色娘は教会で育ったらしく、幼き頃に信心深いマディアス公爵に連れられて来ていたルークとよく会っていたらしい。親しい間柄のようだが、桃色娘はいつから疑っていたのだろうか?疑問はちらほらとあるが、まずはだ。
「まずはルークの動きを探りましょう!」
そう言いだしたその時からいきなり尾行をはじめた桃色娘だった。が、気配を消す気があるようには見えず、行き交う人々よりちらちら見られている。上級生の様子を廊下の影から見ているのは相変わらず不審者にしか見えない。あまりにも稚拙なこれは、わざとやっているのかどうなのか判断しかねるな…。あえて怪しんでいますよと伝え、揺さぶりをかけたいのだろうか。
と思い、私も気配を消すことなく尾行ごっこに付き合っている。まさに不審者その二である。
「今のところ普通ね。やっぱり普通すぎて怪しいのよ…」
ぶつぶつと言いながら見つめるのは癖なのかわざとなのか。よもや未来予知とやらが無ければただの変な小娘なのだろうか。私は一体何に付き合わされているのか。お、こちらにそろそろ来るか。
「おい、桃色娘よ」
「マーガレットよ!変な呼び方しないでよ!」
呼び方一つで即座に吠えてくるとは狂犬か。
「ではマーガレットよ」
「だからなんなのよ!?」
きゃんきゃん子犬のようだ。こやつガルシアと気が合うのではないか?
「こちらにくるが良いのか?」
「何が!」
もはや掴みかかるような形で私に向き合っている。声も大きい。やはり隠れてはいないのだろうか。
「おい、何してるんだ?」
「ひょおおっ!?」
背後から声をかけられて奇声をあげる桃色娘。まさか本当に気付いていなかったのだろうか?振り向いた先には勿論と言うか何というか、監視に気づいたルークがいた。
「さっきから見てただろ?何か用なのか?…ってあれ?一緒にいるのって…」
「な、なんのことかしら?見てなんてないわ!」
言い訳をする姿は本気で狼狽えているようにも見えるが、これもわざとなのだろうか?今ひとつ真意が測りきれない。
「逃げるわよ!」
「はあ!?」
叫んでいきなり走り出す桃色娘。なんだ、逃げるまでが狙いなのか?驚き声を上げるルークだったが、狩猟慣れしているからかその後の反応は早い。
「いや、ちょっと待て!」
ルークが慌てて追いかけるが、桃色娘の腕を掴もうとしたところで煙玉を投げる。
「ぶわっ…って何だこれ!?」
「きゃああ!」
「火事か!?」
もくもくとあがる煙に狼狽えるルーク。と、その他数名。室内用に煙は少なめに抑えてあるためすぐに視界は開けるだろう。しかし逃げるには十分な時間だ。桃色娘も案外逃げ足は速いようで、既に姿はない。私一人なら瞬時に移動できる。さらばだ、ルークよ。
ちなみにこの日謎の煙が発生したと言う理由により午後の授業は潰れた。全く迷惑なことだな。




