桃色吐息
桃色娘ことマーガレット回です
おかしい。おかしいわ。
10歳で前世の記憶が戻った時、ここは乙女ゲームの世界なんだと、理解したわ。しかも私が大好きだった『バーレリアの乙女』シリーズの第2作目!そのヒロインのマーガレットが私!オリジナルもリメイクも両方コンプしたんだから、知識チートヒロインの私に落とせないヒーローはいないと思ったわ。将来は完全勝ち組!イエイ!
だったはずなのに…。
何でも卒なくこなすパーフェクトヒューマンなはずのクロード様は、何だかヘッポコだし妄想癖の噂まである。時にはぼっちがつらくて幻術まで見せてくると言う。何それ怖い。
女好きでチャラ男枠のはずのガルシアは、ガサツな感じで男に囲まれていた。ゲームではロン毛でスラリとしていたはずの外見も、短髪でムキムキしている。しかもなぜか嫡男たる兄が生きていて、公爵家を継がずに武者修行に出ると言う。前向きニートか!
あざと可愛い年下枠のロティきゅんは、ただの痛い厨二病患者になっていて直視できない。見ていたらこちらも古傷が痛む。つらい。
温厚大人枠であるエルンスト先生は、犬猿の仲であるはずの医療学の先生と仲良く薬品実験を重ねているらしい。口調もおかしい。ってかマッドサイエンティストみたいで近づくの怖い。
儚げに腹黒枠で実はクーデターを企んでいるはずのナーシス第一王子は、王太子様には見向きもしないただのナルシストと化している。シンプルにうざい。
幼なじみ枠の辺境伯息子ルークはゲームと同じっぽいけど、もはや逆にそれが怪しくて怖い。なんであんただけ普通なの??
隠しキャラは18禁ギリギリの存在だったため、時代と共にZER○が厳しくなったリメイク版では存在を消されていた。これはおそらく最新版だろうから気にしないでおこう。
あと何よりお助けキャラのはずの猫!クッキーをあげて懐かせるはずだったのに、誰かが先に餌をやっていたため食べてくれなかったのよ!しかもいつの間にか学園のアイドル猫となり、見つけるといつも誰かに囲まれている。実は人語を話せるという設定で、ヒントや各種好感度を聞けるはずなのに、話しかけるチャンスがない。危ない奴認定される王太子の二の舞はごめんだわ!さらに餌の食べ過ぎでゲーム中の可愛い子猫ちゃんな姿じゃなく、完全にただのデブ猫じゃない!…いえ、よくよく考えたら人語を話しているところを確認してないし、本当にゲームとは別の猫なのかもしれないわね…。
で、まぁここまでで導き出した答えは…
「わたしの他に転生者がいる!」
各キャラの出会いイベントからして軒並み失敗しているのだもの。これはもう確実にゲームプレイ済みの誰かが邪魔している!
乙女ゲームなんだし、ユーザー層を考えたら女の子かな?ならまずは悪役令嬢が怪しいけど、キリルシュカはやや口調が変なだけで言ってることは大体ゲーム通りなのよね。ゲーム知識があるならわざわざ破滅するようなことは言わないはず。これはシロね。
次はモブのパターンだけど、これは探すの苦労するわね…。なにせモブゆえに沢山いすぎて探せない。
でも待てよ。転生者が女ならゲーム知識で攻略し放題なんだから、今頃気付いた私なんてとっくに出し抜いて、好みのイケメンを落としているはずよね?でも今のところメインキャラの色恋の噂はなく、クロード様がキリルシュカと婚約している元々の設定しかない。しかも攻略対象者たちは軒並みキャラ崩壊させられている。目的は恋愛ではない…?となると…
「犯人は男なんじゃないかしら!」
それならやっぱり一見ゲーム通りの性格に見える辺境伯息子ルークが1番怪しい!何が目的かは分からないけど、一見怪しくないのがもう怪しい!これはクロだわ!
「きっと前世ではモテないオタクで、変に拗らせ過ぎて乙女ゲームを憎んでいるに違いないわ!」
だから他のイケメンたちをキャラ崩壊させたのよ!どんな手を使ったかは知らないけど!うん、これならしっくりくるわ。完全に真っ黒じゃない!許すまじルーク!!
「わたしの大好きなこの世界を壊させるわけにはいかないわ…!」
見てなさいルークめ!この世界は私が守ってみせる!
ーーーこうしてバーレリアの乙女は世界を守る使命に目覚めたのだった。




