友達と師弟と主従
「そういやお前たち婚約したんだって?」
あの騒動から数日後、久々に王城で会ったガルシアに言われた。
ちなみにあれから薬草園の管理人は増員し鍵の管理も厳重となった。
クロード様の御心遣いにより不問にはされたが、ロティは反省のためしばらく外出禁止。お父上様もクロード様には頭が上がらないらしい。
そして私はというと…
「その件で相談がある」
クロード様は重々しい口調でガルシアに仰った。
「へ?相談?」
「キリー、いるんだろう?でておいで」
「は!」
「うぉっ!いたのかよ⁉︎」
クロード様のお呼びにより木の上から飛び降りる。ガルシアが来る前からいたのだが、全く気付いていなかったようだ。未熟者め。
「お呼びでしょうか」
「うん、だから潜むのはやめて、今まで通り一緒に過ごしてくれ」
なぜか疲れたお顔だ。
「いえ、どこに敵が潜んでいるかわかりませぬ。御身をお守りするためには必要なことなのです」
「守らなくて良いから!君は僕の婚約者でしょう?護衛は別にちゃんといるから…」
肩をがしりと掴まれ止められる。解せぬ。
「ガルシアからも言ってくれ。これじゃあ友達の時よりも遠くなってしまった…」
「んー、何だかよくわかんねぇけど、師匠が決めたんなら止められないんじゃないか?」
うむ、こやつ意外と物わかりがよいな。
「いや、というか師匠って?キリーのこと?この前まで名前で呼んでなかった?」
気にされるのはそちらか。
「なんだかんだ色々世話になってるし、師匠って呼ばなきゃなって思ってさ」
明るく笑うガルシア。うむ、それ以来私もカエル少年とは呼ばなくなった。不肖の弟子だが期待しているぞ。
「脳筋め…!なんだか君たちの方が仲良くなってないかい?」
「いやそんなことないぜ?鍛錬中の師匠は本当に厳しいから!」
クロード様の刺々しいご様子に慌てて弁明するガルシア。うむ、別に仲良くはないな。
「えーっと、そうだ!この前師匠にもらった傷薬!あれすっごく効くのな!先日兄上にも貸したんだけど、お陰で助かったよ。あの薬がなかったら破傷風になってたかも知れなかったって後から医者に言われてー…」
「そういやガルシア、君キリー手ずから薬を塗ってもらっているらしいね?」
どうやら墓穴を掘ったようだ。そういえばその件でなぜかお怒りになられていたな。
「いや、背中とか届かないし…ただの治療行為だからな?変に嫉妬とかするなよ?」
「嫉妬?そんなわけなかろう!クロード様は御心広きお方ぞ!」
今のは聞き捨てならぬ、ガルシアめ!
「えー。だってあれ明らかに…」
「私はクロード様の所有物!物に嫉妬などせぬわ!」
「待ってキリー、本当にちょっと待って」
さらにつまらぬ事を言いそうになったガルシアを止めるが、そんな私を更にクロード様が制止する。
「お前…自分の婚約者を物扱いとか…」
「違うから!キリーが勝手に言っているだけで、僕はレディとして丁重に扱いたいんだ!」
うわぁ…と言いつつ、やや身を下がらせるガルシアにくいつくクロード様。
「キリー、このままでは僕は最低男になってしまう。だから、頼むからゆっくり座って茶を飲んでくれ…!そうだ!もうこれは命令だ」
「クロード様のご命令とあらば…」
従うよりあるまい。クロード様に引かれた椅子に渋々ながら座ることにする。
「お、今わかった!命令って言やぁいいだけじゃねぇか」
む。痛いところをつくなガルシアよ。
「うーん…そうなんだけど、それはそれであまり多用したくないというか…」
私の隣に座り苦々しそうなお顔をされるクロード様。しまった、御心を煩わせてしまったか!
「クロード様、私は貴方様の僕にございます。どうぞ如何様にもお使いください」
「だーかーらー…」
!
「曲者!」
手元のフォークを飛んできた塊に向かって投げる。
と、謎の塊はガッ!と音を立てて落下した。
クロード様を背に庇いながら謎の塊がなんなのかを確認する。それは細長い形をしていた。
「何だこれは?式か…?」
見てもさっぱりわからない。と、こちらに歩いてくる人物を確認する。
「あーあ、せっかく作ったのに〜」
クロード様と似たお顔、しかし髪色は珍妙な金に緑の瞳。これは確か…
「兄上。今日はお加減はよろしいのですか?」
クロード様が兄と呼ばれる人物。確か名は…
「うん、調子がいいよ。そうだ、婚約おめでとう!エイル公爵家のご令嬢だなんてこれで後ろ盾もばっちりだよね」
にこりと微笑むこの国の第一王子。
名は…なんだったかのう…




