レヴニル「嘘から出た実」
ちょっと差別的な表現があるかもしれません。R15なのもほんのり出てきます。だからこのフラグ回収したくなかったんだよー(泣)
特定の宗教や人物とは一切関係ありません。ご了承ください。
草木も寝静まる真夜中。僕たちは息を潜めて行動を始める。
「じゃあ、ルベンス殿とアルフにはこのリストを渡すよ。参考になるかはわかんないけど、この人達を探して欲しい」
「わかった」
「任せとけって!」
フィベルテ侯主催パーティーで繋ぎをとった貴族の領地で、部下たちが聞き込みしまくって作った分厚い行方不明者リストを手渡す。
いやあ、多いねえ。ざっと二百はいそう。移住者も多い地域なので、多種多様な種族が混じっている。
ただ、半分くらいは流石に魔大陸を旅しているだけだと思うんだけどなー。
「レヴニル殿はどうするのだ?」
「僕は聖職者とオハナシしてくるよ。二人とも、健闘を祈る」
僕は信者どものところへ、キルヘイヴ宰相、宰相の配下の淫魔族の者は王城の高官やその妻、使用人のところへ、諜報部隊が集めた情報の裏づけや新しい弱みを握りに行くのだ。
「レヴィもな」
アルフが尾を揺らす。律儀に四つん這いのままだ。僕は透明リボンを巻きつけ、窓から飛び立つ。
無駄に装飾的な教会。いかにも成金趣味だ。人間の信じる、彼らに都合のいい神なんていないだろうに。こんなことに使うなら、布教に使う方がマシだよ。まあ、人間が何を信じようと僕には関係ないしいいけどね。
それなりに厳重な警備も、空を飛んで姿を隠せばバレないものだ。魔力を感じる神官くらいいると思っていたけど、ラッキー!
馬鹿と煙は高いところが好きっていうリリーの言葉を信じ、一際高い尖塔に迫る。わざわざ月を背後に従えて。
窓を覗き込むと、諜報部の資料にあったしわくちゃの白髪の老人が天蓋付きの寝台に横たわっていた。骨ばった死にかけの教皇だ、間違いない。
僕はリリーに用意してもらった色変えの魔法陣を起動させた。羽が白くなる。透明リボンをしまい、老人の目の前に光を作りだす。
あれ、なんか頭に光の輪が付いているよ!?
やや歪なガラスに反射する光を見て驚いた。リリー!こんな変更聞いてない!これは後で魔法陣を検分しないと。
内心は慌てていたが、突然の強烈な光に老人が起きた。目を見開き、此方を凝視している。彼はしばらく呆然として、ふかふかしていそうな布団をはねのけ、僕の目の前の窓を開け、僕の足に口づけた。
キモっ!鳥肌が立つよ!後で入念に洗わないと!こればかりは白い衣に裸足で、なんて指示したリリーに腹が立つ!
「御使さま……!わたくしは、望外の幸せを感じております……!存命中に尊き方に見えるとは……!」
平伏しながら紡がれるキチガイの台詞に僕は現実に戻った。
うわぁ、完全に勘違いしてるぅ。ごめんね、エセ天使で!笑いそうなのを必死に堪える。
黙っている僕を不審に思ったのか、顔をあげた。逆光で僕の顔そんなに見えないと思うけど。
「御使さま?」
「……」
やば、それっぽく取り繕わないと!
不審げに此方を見る老人を見下ろす。
「……私に何か弁解するべきことはありませんか?」
「御使さま、わたくしどもは蛮族に理不尽な扱いを受けております。どうかどうか、わたくしどもを哀れみ、そのお力をお貸しください」
滔々と魔族がいかに悪しき存在か、人間に対し高圧的かを語ってくる。最終的に人間に劣る魔族は人間に下るべき、奴隷になるべきなどと宣った。
どちらかというと、お前達が魔族を下に見ているんだろうと言いたい。僕らは友好的な人間には友好的にしているつもりだ。
全く、ぶっ殺したい。
でも我慢我慢……。作戦が台無しになるからね……!
「そうですか……、主にお伝えしましょう。して、貴方はなにか懺悔することはありませんか?」
居もしない神には伝えられないけど、上司には伝えるよ、僕たちが大嫌いってさ。
でも僕の欲しい情報はそれじゃない。君たち教会の悪事だ。こっそり市販の使い捨て素直になる魔法陣を使う。魔族には大して効かない不良品も、人間には効果抜群、のはず。
「……お赦しください、御使さま。わたくしは先代教皇を暗殺しました。色欲に負け、幼い少年少女を貪りました。孤児を売り、日銭を稼いでおりまする……」
色々と吐かせたけど、ちっとも僕らの同族に対して反省することがないことがわかった。お前の趣味なんてもう聞きたくない。
「ほう。あなた方は私達の同族を捕え、あまつさえ暴行を加えた、と聞いたのですが?」
「まさか。有翼の奴隷はおりましたが、あれは魔族ですよ?」
明らかに魔族を自然と下に見る視点に虫唾が走る。
ブチ、と我慢の手綱が切れた音を聞いた。
「私の兄弟です」
嘘だけど。怒りは本物だ。
口調は侮蔑を含みつつも優雅に。僕も西の貴族の端くれだからね、演技は得意だよ。
「さぞかし気分が良かったでしょうね。あなた方が崇める私達に似た種族を奴隷のように扱い、優越感に浸ったことでしょう。弱いあの子は下界を見るために似た種族に擬態していただけなのに」
「お、お赦しください、お赦しください……」
今にも死にそうな白い顔で、必死に頭を床につける。
「あの子たちはどこに?生きているのでしょうね」
「城下の、ファーリ司教の部下、ルコルッテ司祭の別荘の地下でございます。こ、殺してはいません」
「首謀者は」
「奴隷商人とサルア辺境伯、その派閥の貴族と、ファーリ司教でございます」
サルア辺境伯、ファーリ司教ね。もう少し上が関わっているかと思ったけど、事前調査通りか。ただ、詳しく知りすぎているからコイツも噛んでいるだろうね。
「貴方は黙認した。その事実、努努お忘れなきよう」
発光の魔法陣をもう一度起動し、同時に透明リボンを身につけ飛び立つ。なんか喚き立てる声が聞こえたけど、僕知らなーい。
風呂で身を清めた後、集合場所に向かう。
「お、戻ったか」
客用に割り当てられた社交室で、ややツヤツヤしたキルヘイヴ宰相とぐったりしたセレナイト殿が優雅に葡萄酒を傾けていた。
手招かれて僕も席に着き、宰相付きの侍女に一杯入れてもらう。まあまあかな。あと五百年くらいは寝かさないとだね。元の葡萄が弱いから無理かな?
「お早いですね〜」
「まあな。この国は夜になると淫蕩に耽る奴が多いから楽だぜ。そのかわり、味は薄くて微妙だがな」
「口が軽くなりますからね、行為中は。情報を頂ければあとはどうでもいいのですけど。下手ですし」
淫魔族の宰相と侍女には、腹ごしらえにはなるけど物足りないらしい。
「私には勘弁して欲しいですよ。夜這いされるのは懲り懲りです。うっかり殺すところでした」
サラッと問題起こしそうにならないで、セレナイト殿。ミネルヴァ様じゃないのだから、人間は簡単に死にますよ?
僕は曖昧に頷いて、使った魔法陣を解読する。えっ、光の輪だけじゃなくて、たぶん顔の認識阻害と変声……かな?の効果も入ってい……る!?よく詰め込んだな!?
まあ、助かるけどね。うっかりあの老人に再会でもしたら面倒だから。
リリーにはお礼しないと。何が良いかな?東の大陸でお土産買っても、質が微妙だよねー。どうしようかな?
解読が終わると、次々と同僚たちが戻ってくる。
「よし、揃ったなー。んじゃあ報告してくれ」
調査に出た者たちが、今日の戦果を発表する。裏づけが主で新しい情報はないかなー。とのほほんと聞いていると、素っ裸アルフがトンデモ報告をしてきた。
「裏帳簿を見つけたぜ、ファーリ司教の屋敷の金庫の中にあったから取ってきた。結構色んな貴族が関わってるから国ぐるみっぽいぞ。それと、言いづれえんだけど」
そこで一度僕をチラッと見た。何だろう。
「あー、レヴィの兄ちゃんのハインリヒさんが捕まっててな?それが王弟のコルドバルア公爵家の一室でな?」
えーっ!!確かに真実の愛がどうこうとか言って飛び出したって母さんから聞いていたけどさ!なんでこんなとこにいるのっ!?
またしばらく更新しません。ごめんなさい。




