男性陣「「「やっと終わった……か?」」」
遅くなり申し訳ありません。
そして短いです。
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◇カーネトリアス
「リリー!」
鷲頭獅子の背に乗り西南の砂浜が見えてきたところで、思わず叫んでしまった。なぜならリリーが倒れたからである。
力なく海に投げ出された身体を風で包んでギリギリで支える。
我、いい仕事をした!
しかし、この夜会服はもう使えぬな。ジェルマリオにまた仕立てさせるか。
我ながら妙案だと機嫌をよくしていると、声がかかった。
耳慣れた媚びた声だ。慣れたくなどなかったが、立場が許さぬ。
「カーネトリアス様、お助けいただきありがとうございます」
顔を上気させて話すのは、誰であったか……。
「我はリリーしか助けておらぬ。礼はリリーに申せ」
鋼色の女子は顔を見て取れる程に歪めた。至極当然の事を言ったつもりなのだが。全く、南の貴族は直情的で困る。矢鱈と引っ付いてくるのも不快である。
リリーを鷲頭獅子とヴァンに預け、我はリリーが救出した者たちの名や住所を控え、後日事情を聞くと伝える。聴き終えた者は帰らせてよいゆえ、女子供を優先して処理した。
さて、この姦しい者どもをフィベルテの城に連れ戻らねばなるまい。しかし、どうしたことか、やる気がサッパリ出ぬ。
リリーだけ連れて帰ってしまうか。
それは名案だと思われた。思いつくが早いか、女子たちと我の間に障壁を作り、リリーを抱えて鷲頭獅子に跨がる。そして早急に砂浜と別れを告げた。
何やら甲高い声が聞こえるが、後から迎えが来るであろう。
◇レヴニル
全く、無茶をするものだ……。僕は腕の中の白い存在を見る。本人は気を失っているようだ。仕方ないかもしれない、命を懸けたような戦闘で魔法を放つなんて、令嬢には多くないからね。
例外はたくさんあるけど。リリーとかミネルヴァ様とか。
ばさっばさっと自分ではない羽ばたく音が聞こえて、そちらを見るとリリーを抱えたカーネトリアス様が優雅に鷲頭獅子に乗って来ていた。
「其方はどうであった?」
「上々……とは言い難いですね。船が沈んでしまいまして」
足元を見れば、ブクブクと泡を立てて沈みゆく船がある。所々バシャバシャと波が揺れるのは、船員だろう。
「そちらはどうでした?」
「リリーが救出した者どもは帰したぞ。貴族の女どもは置いてきた。うるさい上に、そのうち迎えが寄越されよう?」
「はぁ……連絡しますね。失礼します」
僕は貸し出された蜘蛛耳飾でキッツェ殿に連絡を入れ、東南の砂浜に迎えを寄越すよう頼んだ。
いつまでも飛んでいるのも疲れるので――現にハクミービアの令嬢を抱えた左手がしびれてきた――近くの群島の一つに降りる。
「彼奴らを捕縛せずとも良いのか?」
「これからやりますよ。資料も本当は抑えたかったのですが、厳しそうです」
チラリとリリーを見る。スヤスヤと気持よさげに寝ていてイラっとくる。リリーが起きていれば船内にあっただろう資料も手に入れられたと思うのだけど。
世の中世知辛いよね……。
ため息を一つついて、手を翳す。
手のひらから打ち出された光の鎖が、溺れかけている人間達を捕まえていく。リリー程広範囲は感じられないけど、僕も目に映る範囲の魔力は見えるから、取り零しはないはず。
それにしても、この人間たちはどこの国の者かな?僕のことを天使って言ってたくらいだし、聖フランシス王国あたりかな。
後始末、面倒だな……。まあ、キルヘイヴ様に丸投げでいいか。外務担当の宰相だし。
ん?あそこに見えるのは……丁度いい、ハクミービアの令嬢を預けてしまおう。
◇ルベンス
ソワソワと自分がうろついて、時折出入り口を確認しているのは、わかる。貴族としてみっともないことも。しかしそうせずには居られないのだ。
私がこんな接待をしている内にも、あの黒髪紅眼の忌々しい魔人が私の愛しい人にあーんなことやこーんなことをしていると思うと、気が気ではない。
いつもいつも彼女を自分に縛りつけて……許せん。今夜を逃せば、いつ彼女にこの思いの丈を伝えられるというのか。一ヶ月、二ヶ月……下手をすれば十年や二十年ではきかないやもしれない。
ど、どうすれば。どうすればいい?
ぐるぐると考えている内に、いなくなっていた令嬢達は戻ってきた。ミルも気を失ってはいるものの、リカンと共に帰還したらしい。これで何とか面目は保てるだろう。
しかし、肝心の彼女がいない。銀髪の、麗しい妖精が。うなだれずにはいられない。むかつく宰相は戻ったのに。
彼女は無事だろうか。屈辱を感じつつ、邪魔宰相に訊ねた。
「彼女は?」
宰相は顔を俯けて首を振った。思わず胸倉を掴む。が、避けられた。
「冗談だ。魔力切れで寝ておるよ」
私はしゃがみこんでしまうかと思った。全く、タチの悪い。しかし、魔力切れとは危険な状態だ。見舞いに……。
「見舞いは要らぬ」
「心を読まないでくれ、ブラディーネル殿」
全く忌々しい。彼女の寝顔をみるだけで……もう……。
「……ま。若様!」
「なんだ?」
いつのまにかあの魔人は消えており、キッツェが背後にいた。私の背後をとるとは、中々やるな。伊達に私が子供の頃から女官長をやっているだけある。
「いえ、ただ単に若様が口にするのが憚られるような妄想に耽っていただけですよ。そろそろ閉会の挨拶をしてください」
「あ、ああ」
心に鉄の爪を受けた。
……私は感情がそんなに顔に出るのだろうか?
きっと後始末はどこかでちゃんと決着をつける予定。




