大好き
(ピクニックをする)彼らは外へ出て、大地の美しさを喜び、牧草地を踏みにじり、ついにはたくさんの花や枝をもぎ取り、すぐまた投げ捨てるか、家でそれがしおれるのを眺めるかする
〜ヘッセ〜
『ただいま戻りました』
『やぁ、遅かったね凛君』
粉雪ちゃんと共に部屋の中に入ると雪さんがソファの上で丸まって本を読んでいた。
彼女は本を読む時だけは年頃の少女のように可愛らしい表情になる。
その時の彼女を見るとなぜか微笑ましくなるのだが、まあ、例によって例の如く本の内容が難しすぎてなにを読んでいるかはわからない。
雪さんは頭が無駄にいい。
世界のありとあらゆる本を貪るかのように読みふけり知識を吸収し更にまだ求め続ける。
まるで、知識の猛獣だ。
『頼んだものは全部買えたかい?』
『はい。知人に分けてもらったりして全部揃えることが出来ました。…でも、なにに使うんですか?あんなの』
『ふふ、秘密だよ』
本を近くにある机に置き髪を自らの矮躯に絡ませてソファへとダイブする。
このまま、ソファの上で眠るんだろうか?
雪さんにしては珍しい。
普段ならお風呂かベッドでしか眠らないのに。
少し待って彼女を見ていると静かな寝息が聞こえてきた。
どうやら、本当に眠ってしまったらしい。
雪さんを起こさないように静かに歩きながら自室へと向かっていく。
とりあえず、上着を置かなくては。
『粉雪ちゃんはどうするの?雪さん眠っちゃったけど』
『んー…私は、七花さんの部屋でテレビゲームでもやりに行って来ます』
そう言ってすぐに部屋を出て行った。
つか、七花さんの部屋って。
ボクですら行ったことないのに。
まったく、羨ましいことだ。
七花さん…
ゲームとかやるんだな。
今度、訪問させてもらうか。
『さてと…』
上着を自室に置きまたリビングへと戻ると雪さんが寝ているからか凄く寂しい空間へとなっている事に気付いた。
そのまま、雪さんの寝ているソファの横に座り込むと雪さんの寝顔がよく見えた。
この世の物とは思えないほど整ったいつもニヤニヤと笑っているいつもの彼女の顔立ち。
それが今では年頃の少女のように可愛らしい表情で眠っていた。
やはり、雪さんは寝てる時と本を読んでる時は可愛く見えるんだな。
その二つ以外は最悪だけど。
『雪さん。こんなところで寝たら風邪引いちゃいますよ』
彼女の頭を撫でながらそうボヤくとくすぐったいのか、雪さんは首を竦め寝顔に笑みを浮かべている。
いい夢でも見ているんだろうか。
羨ましい。
『凛…君』
『はい?』
雪さんから呼ばれるがどうやら寝言だったらしい。
彼女はいまだ丸くなりながら目を覚まさない。
『だい…しゅき…』
また、寝言でなにか言ったらしいが、何を言ったのかまではわからなかった。
『雪さん、おやすみなさい』
寝ている雪さんを撫でながらボクも目を閉じる。
すると、睡眠の波がさざ波のように襲い掛かってきた。
だから、ボクはその波に逆らわず眠りについた。




