目覚め
守ってあげたい異性なんか、その内うっとうしくなるだけだ
〜一条ゆかり〜
突然の爆発音は、少女、篠宮雪を起こすには十分だったらしい。
篠宮雪は、ゆっくりと目を開き辺りを見回した。
『やぁ。粉雪くん。随分楽しそうじゃないか。何かいいことでもあったのかい?』
すると、粉雪を見つけたらしい。
粉雪に向け意地の悪い笑みを浮かべながらそう語る。
自らの腕を貫いている杭は気にもしていないらしい。
だが、そんな彼女の意思など関係なく血液は流れ続け世界に拒絶されるかのように蒸発していく。
『あら、雪さん。ようやく目を覚ましたんですか?不死身の吸血鬼の割りには長かったですね?』
そんな彼女に対し粉雪は嬉しそうに笑いながらそんな軽口を叩く。
もう、自分の勝利を確信し切っているかのように狂気的に笑い続ける。
『ふふ、まあボクはか弱い女の子だからね。こんな目に合わせられたら流石に辛いさ』
凛の方を見ても彼女の笑いは減らない。
それどころか軽口を叩いて余裕の様子すら感じさせる。
そんな彼女に対し粉雪はつまらなそうに口を尖らせ杭を蹴り飛ばす。
『ふんっ…つまんないですね。折角、凛さんの醜い死に様を見せてあげようと思ったのになー』
このシーンには不釣り合いなくらいに可愛らしく笑いながら雪の首に顔を近付け舐めあげる。
『んっ…』
雪の口元から吐息が洩れる。
が、粉雪はやめない。
口元から胸。
胸から足元へと舐め上げその舌は顔へと向かって行く。
『雪さん、甘いですねー。流石、鬼の一族・篠宮の姫宮。今まで食べてきたどんな人間よりも貴方は…
美味しそう』
そう言って雪の腕を囓る。
しばらく、囓った後口を離す。
雪の白い腕から赤い液体が流れ出し粉雪の歯型が残る。
『ふふ、痛いね。それにしてもいいのかい?ボクにこうしている内に他の子達に襲われるかもしれないよ?』
『それは、凛さんや七花さん。霊華さんのことなんですかね?来ませんよ。絶対に。私の家族が殺しちゃいましたから』
粉雪はニヤニヤと笑う。
それはそうだろう。
七花は黒い死神に。
霊華はハンマーの女に。
そして凛は合成獣と紅葉に。
既に倒されてしまったのだから。
『殺した…ねぇ?』
だが、雪の反応は粉雪の予想通りではなかった。
普通は絶望するであろう状況にあろうことか彼女は笑い続けているのだ。
『粉雪くん。君は鬼をあまり舐め過ぎない方がいいね。鬼と言う一族は君が思う程に…
甘くはないよ』
その瞬間、凛が吹き飛んだ筈の爆炎の中からナイフが飛びだしてきた。
『なっ⁉︎』
慌てて粉雪は飛んで逃げる。
が、ナイフ自体は粉雪を狙ったわけではなかったらしい。
辺り一面にナイフが突き刺さり何かが光で煌めく。
その後に来るのは全てを切り裂く…
絶望の世界。
突如ナイフの斜線上にあった全ての物質が切り裂かれる。
置いてあったドラム缶にショベルカー。
辺り一面に撒き散らされていたガラス。
そして、合成獣。
一瞬で腕、顔、体、足、頭、全てが切り裂かれ地面に落ちて行く。
『おっ…おかあさーーーぁぁぁぁんっ!なんでなんでなんで…ぁぁぁぁぁぁぁっ!』
それを見て粉雪は叫ぶ。
そんな彼女を見ずに雪は笑う。
爆炎の向こうを見て。
『やあ、おはよう。凛くん』
そう言った彼女に対し…
『…おはようございます。雪さん』
爆炎の中から出て来た凛は…
そう言って笑った。




