宣言
人間?
それは俺にとってなんでもなかった
ただの白紙だった
〜ヘンリー・リー・ルーカス〜
『ごちそうさまでした』
それから一時間ほどした後、全員が夕食を食し終わった。
うん、流石七花さん。
大変美味でした。
『お粗末様。おら、凜。あんたは手伝え』
粉雪ちゃんが食器を下げる中、ソファーに座ろうとすると七花さんに首元を掴まれ引きずられていった。
『えっ…雪さんはいいんですか?』
七花さんは、自分と同じように椅子で熱いミルクを飲んでいる雪さんには見向きもしない。
『当たり前でしょ。雪ちゃんに雑用をさせる気?』
さいですか。
そう言われ仕方なく腰を浮かすとすでに粉雪ちゃんが手伝っていた。
あの年で偉いものだ。
『ほら、粉雪ちゃんが手伝ってんだからあんたもやんなさい。それにしても粉雪ちゃん偉いわね』
『いえ!私こういうこと好きなんです!』
そう言いながら粉雪ちゃんは笑う。
本当に心の優しいいい子だ。
そんな子をボクは殺そうとした。
いや、彼女の両親すらボクはきっと殺してしまっている。
それなのに、彼女はボクに笑顔を向ける。
まぶしい笑顔を。
それを見てまた自分に吐き気がする。
ボクは…ボクは…
『またくだらない事を考えているのかい?凜くん』
後ろから雪さんの声が聞こえてきた。
ボクの顔色を見もせずによくわかるものだ。
流石に勘は鋭い。
『いいえ、なにも』
それを否定し七花さんのいる場所へと歩いていく。
そうだ。なにを考えているんだボクは。
ボクはもう戻れないんだ。
なにが吐き気がするだ。
ボクは粉雪ちゃんの両親を殺してしまった自分に酔っているだけだ。
ふざけるな。
なにが粉雪ちゃんの両親を殺してしまっただ。
ボクは今までどれだけの人を殺してきたと思っているんだ。
食器を洗いながら粉雪ちゃんを見る。
この小さい体でどれだけつらい思いをしてきたのか。
想像すらしたくない。
逆に七花さんをみる。
この人はここまで強くなるまでにどれだけの物を犠牲にしてきたのか。
こちらもまた想像したくない。
最後にボク。
考え直すとボクはほとんど苦労していない。
ボクだけ。
明らかに。
二年前の夏前、春までボクは普通で妥当な中学生活を送ってきた。
時たま苦労はしたがそれでもそこまで突拍子もないことなんてなかった。
そんなボクが、粉雪ちゃんやほかの様々な人を殺して人生を狂わしてしまった。
確かにボクは、大量虐殺をしたことに後悔はしていない。
だが、反省はしている。
だから、ボクはもう一度宣言しよう。
ボクはどこの誰に殺されても文句を言うつもりはない。




