言い逃れ
バカに4人も殺せるか。
この辺で人生を終わらせたかったのだ
〜川俣軍司〜
『つまり、ブランコから滑り落ちて怪我をしたから知藺乃くんに治療してもらったと、そういうことかい?』
場所は雪さんのマンションの最上階。
足を引きずりながら何とか辿り着いたボクは大笑いしている雪さんと心配してくれている粉雪ちゃんに適当にでっち上げた理由を語っていた。
多少無理がある気もしなくもなかったが。
と言うか、一応ではあるが高校生と言う身分でブランコから滑り落ちたは恥ずかしすぎる気がする。
滑り台から滑り落ちたとかの方がよかっただろうか。
いや、あまり変わらないな。
なんにせよ恥ずかしい。
話し終わった後に2人から憐れみの視線を受けた。
やめてくれ、悲しくなるから。
『まあ、そういうことです』
雪さんからの質問に答え近くにあったソファーに座り込む。
そろそろ足が限界だった。
年をとるのはつらい。
いや、もちろんまだ若いが。
そんなボクを気にすることなく二人の少女は甘いミルクを飲みながら談笑していた。
ほんのりと鼻孔をくすぐる甘い匂いが漂ってきて心地がよい。
『そう言えば、雪さんと粉雪はボクが知藺乃 さんに会いに行っている間なにをしてたんですか?』
ふと思いついた質問を聞いてみる。
あまり興味はなかったが時間つぶしには丁度いいだろう。
『なにをしていたと言うわけでもないよ。話をしたりマンション内を案内したり色々さ』
ほう、雪さんが案内をするなんて珍しい。
そんなことボクや七花さんに任せそうなものなのに。
自らやるとはよっぽど粉雪ちゃんが気に入ったのか。
なら、好ましいことだ。
遠慮なく彼女に預けられる。
なんてことを考えていたら不意にコンコンとなにかを叩く音が聞こえてきた。
『入っていいよ、七花くん』
どうやらその音はドアから聞こえていたらしい。
雪さんがそう言うとがチャリと音を立て七花さんが入ってきた。
『雪ちゃん、ご飯よ』
七花さんはボクの怪我を見てニヤリと笑った後雪さんに食卓に行くように促した。
ちなみに七花さんは唯一雪さんと同じ位置で話せる人だ。
これまで、ボクは雪さんにちゃん付け出来る人を七花さん以外に見たことがない。
それほどまでに七花さんのプレイヤーとしての能力はズバ抜けているのだろう。
弟子だからこそその点についてはよくわかっているつもりだ。
そして彼女の日常生活の完璧さも。
掃除、洗濯、料理なんでもござれの万能家でそれに見合った美貌も併せ持つのが七花さんだ。
まあ、目つきの悪さとガラの悪さも最悪だが。
そんなわけで、七花さんの料理は最高級に美味しいのである。
雪さんのマンションに泊まった時の楽しみの一つだ。
粉雪がいるからか本日のメニューは牛肉と野菜をふんだんに盛り込んだカレーライスにシャキッと今にも音が聞こえてきそうなサラダ。
さらに七花さんお手製の南海風ゼリー。
と、言ったお子様系メニューである。
よく気が回る人だ。
その気をボクにも回してほしい。
『それじゃあ、食べようか』
全員食卓についたことを確認し雪さんは手を合わせて言った。
『いただきます』
そうしてボクたちは食べ始めた。
これが、危機的状況に陥る四十五分前の話である。




