第92話 アデラ
アデラの提案でタイチとラファエルを残してお店に行く事になった。
何故なら輸入商品についてアデラの方が詳しいとの事で、昨日の買い物が途中だったという話から案内を買って出てくれたのだ。
若草色の長い髪に明るい琥珀色の瞳の愛嬌のある美人さん、ビビアナの様に注目される程では無いので商人には向いていると思う。
人懐っこくて移動の馬車の中で既に『希望』の一員かと思うくらい馴染んでいる。
店に到着してからは貴族のガブリエルが居ない事もあって案内から商品説明までアデラがしてくれた。
麺類は2つの国の間にあるセゴニアを通過する途中で全て売り切れてしまう為、この国の王都近くの小麦を作っている村で生産しているらしい。
「あれ? こ、この麺…!」
「あ、それね。生産している村で試行錯誤して作られたんだけど、ひやむぎみたいに乾燥させるとダメになっちゃうのよ。だけど食感が面白いからって結構人気があって村の近くだけで売ってるの」
コレ絶対中華麺でしょ!!
試行錯誤してくれた村人さんありがとう!!
中華麺とうどんは茹でる前の状態で売っていた、ウドンは細めで乾燥させた物もあったけど。
「ふっ、ふふふ…これでラーメンと焼きそばが食べられる…!!」
海外で産まれて日本で育ったみんな大好き国民食、カレーに続いてラーメンが!!
焼きそばはウスターソースを賢者アドルフが伝えてくれてたからいつでも食べられるしなぁ。
やはり私が1番好きな豚骨醤油のスープから研究…、いや、鶏ガラであっさり塩というのも捨て難い…、ああ、考えるだけで涎が出ちゃう。
「ジュル…」
「おい、それで美味いモンが出来るのか? 醤油や米見つけた時と同じ顔してるぞ」
「ふふふ、ホセも絶対気に入ると思うよ。だけど先にスープの研究しないといけないからウルスカに帰ってから暫く掛かると思うんだ、とりあえずここにあるだけ買っていくよ」
王都民には申し訳ないが、店内にあった麺類を全て買い占めさせてもらった。
店員さんが腐る前に消費出来るかと持てるか心配していたが、私は鞄経由でストレージにポイポイ入れていく。
「あら? そのマジックバッグ変わってるのね、普通は開くと空間が歪んで見えるのに普通の鞄にしか見えないわ」
アデラの言葉にギクリとした、商人だけあって目端が利く様だ。
「そ、そう? 所変われば品変わるって言うじゃない? コレは祖母の遺品だからこの辺りで作られてる物と少し違ってるのかもね~」
「へぇ、凄く大事に使ってるのね、まるで最近作られた鞄みたい」
「あはは…、お婆ちゃん子だったから大切な形見なの」
あばばばば、このまま問答してたらボロが出ちゃう気がする、こういう時は…助けてエリえもーん!
目が泳ぎそうになったが、バレない様に目を細めて愛想笑いしつつエリアスを探す、可愛い店員さんに声掛けてる場合じゃないよ!?
エリアスは商品が気になったのか、可愛い店員さんに声をかける切っ掛けが欲しかったのかわからないけど話に夢中で全然こっちに気付いてくれない。
なんかアデラに凄く観察されてる気がする、掌にジワリと嫌な汗が滲む。
「アイル、欲しいものは全部買ったか? 今日は他の酒屋も回るんだろう?」
「あっ、うん! そうだね、多分買い忘れは無いと思うから次の店に行こうか」
リカルドが声を掛けてくれて助かった、リカルドに駆け寄り、ホッとして額から噴き出た汗をこっそり拭った。
悪意は感じられないけどアデラには気をつけよう。
酒屋巡りはまたホセに試飲のお酒を減らされるという一悶着があったが、ウォッカを見つけた。
セゴニアからの輸入品を扱っている店では熟成させるお酒が人気らしく、ウィスキーと紹興酒らしきお酒も手に入れる事が出来た。
ウルスカでもウィスキーは手に入るけど、流石王都なだけあって種類が豊富だ。
ホクホクしながら酒瓶を収納していたらホセが肩を掴んできた。
「約束、忘れてねぇよな?」
既に3軒の酒屋を回ったせいか試飲でちょっとフワフワした始めた私の頭がホセの鋭い視線でピャッと正気に戻った。
しかしコクコクと小刻みに頷いたら頭がシェイクされたのでそろそろ屋敷に戻った方が良さそうだ。
「アイルはお酒好きなの?」
馬車へ戻る途中でアデラが話しかけて来た。
「凄く好きって訳じゃないけどね、皆で楽しく飲むのは好きかな。……でも…もう皆で飲めないけど…」
「え? どうして?」
「………酒癖が良くないみたいで…、凄く怒られて人前で飲まない約束したから……」
「じゃあ私と飲みましょうよ! 酔っ払いには慣れてるから多少酒癖が悪くても大丈夫だし」
アデラの誘いにグラリと心の天秤が傾きかけた。
だけど聡いアデラと飲んでる時に酔ってポロっと私の秘密を漏らす危険がある、ホセとも約束したし、でもこれからずっと寂しく独り酒というのは悲し過ぎる…!
「う…、でも…、う~ん…ぅひゃぁっ」
その時背後から頭を掴まれた、この手の感触はホセだ。
疚しいやり取りとまではいかないけど、約束を破る事になるであろう話をしていたのでリアクションが大きくなってしまった。
「アイル」
「はい」
静かに名前を呼ばれただけなのに声が重いというか、心にズシリとのし掛かった気がする。
まだ約束を破ってないけど醸し出す雰囲気に目が見れない、というか頭を掴まれているのもあって振り向けない。
「……はぁぁ~~~…、自室で飲めとは言ったが1人じゃなきゃダメだとは言ってねぇ。獣化はしてやんねぇけどな」
凄く大きく重いため息の後に諦めた様にホセが言った。
「え!? 一緒に飲んでくれるの!?」
「お前は3杯までだからな」
「うん!!」
嬉しくて抱きつこうとしたら避けられたけど、私の気分はとても上昇した。
アデラの誘いは有耶無耶になったが、その時一瞬獲物を逃したと言わんばかりに悔しそうな顔をした気がした。
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キリの良い100話になったら初っ端から銀貨1枚すら奢らないケチだという感想を他のサイトでも貰ってしまったリカルドの過去のお話を投稿したいと思います。




