第25話 髪が白いと、罪になるんですか
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郊外を離れてから、エミールはずっと車を飛ばしていた。
バックミラーには、二人と別れた草地はもう映っていなかった。
片手でハンドルを握り、もう片方の手で写真の入った胸ポケットを軽く撫でる。
さっき子供に名前をつけたときのことを、帰って妻に話せば、彼女も笑うだろう。
だが、計器の横に表示された時刻を見て、その手を引っ込めた。
上からの外出禁止命令はまだ解かれていないのに、ヴェルナーは彼に、二人の指名手配犯をひそかに車で送らせた。同じ部隊の仲間たちにさえ知らせずに。
二人のお嬢さんが去ったと知れば、皆、別れの挨拶をする機会すらくれなかったと、指揮官に文句を言うに違いない。
文句を言われるのが、それだけで済めばいいのだが……
後方からエンジン音が聞こえてくる。
エミールが車を少し路肩へ寄せると、軍用車が数台、次々と追い越していった。
最後の兵員輸送トラックが通り過ぎるとき、車体の部隊標識がはっきり見えた。
――第一軍団直属部隊。
荷台には完全武装の兵士たちがびっしりと座り、その後ろには道路封鎖に当たる車両も続いている。
後方支援車両も、物資輸送車もない。
エミールはアクセルから足を離し、前方の車列との間隔を広げた。
臨時の増援か?
だが、第二支隊は今朝、戦闘準備命令を受けたばかりだ。なぜ誰も、受け入れの準備をするよう知らせてこなかった?
ハンドルを握る手に、少し力がこもる。
前方の分岐が近づいてくる。
まっすぐ進めば、軍営へ戻る。
右へ曲がれば、めったに車の通らない田舎道だ。
エミールはハンドルを握り直したが、まだ切らない。
考えすぎなのかもしれない。
上が予定より早く、任務を引き継ぐ者を派遣しただけかもしれない。
今、ヴェルナーは自分に一刻も早く戻ってきてほしいと思っているかもしれない。
だが――そうでなかったら?
エミールは数秒ためらい、それから勢いよくハンドルを切った。
タイヤが道端の砂利を踏み、軍用車は右の脇道へ入った。
「申し訳ありません、ヴェルナー隊長」
低くつぶやく。
「今回だけは、命令に背かせてください」
数分後、エミールは廃倉庫の裏に車を停めた。
エンジンを切ったが、すぐには降りなかった。
辺りは静かで、風に揺れる雑草のさわさわという音だけが聞こえる。
運転席に座ったまましばらく考え、車載の無線機へ手を伸ばした。
送受話器を取り上げ、親指をボタンのそばで止める。
もし通信室にいるのがすでに別の人間だったら、つながったあと、最初に何を聞けばいい?
数秒後、彼はゆっくりと送受話器を戻した。
「……まずは状況を確かめよう」
エミールが車の扉を開けたとき、遠くから再び車の走る音が聞こえてきた。
とっさに車を降り、身をかがめて倉庫の壁の陰に隠れた。
遠くの幹線道路を、二台の軍用車が走り抜けていく。
そのうち一台の側面には、臨時の配車を示す標識が貼られていた。
一目見ただけで、エミールの顔色がさっと変わった。
軍紀調査部門の車両だった。
エミールは倉庫の壁に背を預けたまま、長いこと動かなかった。
考えすぎではなかったらしい。第二支隊に、本当に何かが起きたのだ。
エミールはうつむいた。
胸ポケットから、あの写真の角がわずかにのぞいている。
手を伸ばし、押さえる。
あと二日で、車に乗って家へ帰れるはずだった。それが今は、軍営に戻ることさえできない。
エミールは苦く笑った。
「……厄介なことになったな」
再び顔を上げ、第二支隊のある方角を見る。その顔から、笑みはすっかり消えていた。
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夕方には、第二支隊の兵士たちはそれぞれ別の部屋へ連れていかれていた。
ほかの者がどうなったのか、誰にもわからなかった。
エドワードは硬い木の椅子に座り、両手を膝に置いている。
向かいには、尋問を担当する将校が二人座っている。
机の上にはランプと、彼には内容がよく見えない書類が数枚置かれていた。
「もう一度聞く」
一人が記録簿を開く。
「今日の午前中、副隊長のエミールはどこへ行った?」
「知りません」
エドワードは即答した。
「彼は一台の軍用車を運転して出ていった」
「見ていません」
「白髪の少女二人を連れて営地を出たところを、目撃した者がいる」
「なら、見た人間に聞いてください」
尋問官が目を上げると、エドワードもその目を見返した。数秒、部屋が静まり返る。
「あの二人は何者だ?」
「知りません」
「彼女たちが魔法を使うところを見た者はいるか?」
「知りません」
「彼女たちは、なぜ南区へ入った?」
「知りません」
「ヴェルナーは、なぜ彼女たちを軍営に入れた?」
「知りません」
尋問官はとうとうペンを置く。
「『知りません』以外に、何か言えないのか?」
エドワードは座り直す。
硬い木の椅子の縁が脚に当たっている。長く座り続けていたせいで、もうしびれ始めている。
「言えます」
記録係が再びペンを取る。
「腹が減りました」
もう一人の将校が机を平手で叩き、すぐさま目の前の書類をつかんで、エドワードへ投げつけた。
紙が頬に当たり、膝の上に散らばった。
エドワードはそれを拾おうとはしない。
「エドワード!」
「本当のことを言っただけです」
「自分が今、どういう立場にいるのか、よく考えるんだな」
相手が立ち上がった。
「第二支隊には敵との内通容疑がかかっている。副隊長は行方不明、指揮官は調査への協力を拒否。さらに、素性不明の白髪の女が二人、この軍営に現れている――」
「それで?」
エドワードは顔を上げた。
「髪が白いと、罪になるんですか?」
将校の顔が険しくなる。
次の瞬間、拳がエドワードの頬に激しく叩きつけられた。
木の椅子が床を擦り、耳障りな音を立てる。
椅子ごと横へ傾いたエドワードは、座面に手をついて体を支えた。少ししてから血の混じった唾を床に吐き、再びまっすぐに座り直す。
「質問は終わりですか?」
「貴様――」
不意に扉の外で物音がし、二度ノックがあった。
記録を担当していた将校が眉をひそめる。
「入れ」
扉が開き、兵士が一人、低い声で何事かを告げると、二人の尋問官の表情が同時に変わった。
話の大半は聞き取れず、いくつかの言葉だけがかすかに耳に届く。
南区。封鎖。作戦の前倒し。
それから――白い髪の少女。
別の部屋では、一人の兵士が声を張り上げている。
「彼女たちを連れてきたのは俺だって言ってるだろ! ヴェルナー隊長は関係ない!」
尋問官は記録帳を閉じた。
「彼女たちがいつ来たのかさえ、ろくに答えられないくせに。他人の罪をかぶるつもりか?」
兵士は歯を食いしばった。
「とにかく、俺が――」
バン!
警棒が机の縁を叩き、部屋中に音が響き渡る。
兵士は反射的に身をすくめた。
「これ以上でたらめを言うなら、次に叩くのは机じゃないぞ」
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夜が更けて、ようやく尋問はいったん打ち切られた。
第二支隊の者たちは、もともと軍需品を保管していた倉庫にまとめて閉じ込められた。
ベッドはなく、床に毛布が数枚、仮の寝床として敷かれているだけだった。
窓の外では、絶えず誰かが巡回している。
エドワードは壁際に横になっているが、どうしても眠れない。
隣で誰かが寝返りを打ち、別の誰かが小さく咳をする。これほど大勢が押し込められているのに、倉庫の中は軍営とは思えないほど静かだった。
しばらくして、暗闇の中で誰かが小声で口を開いた。
「エミール副隊長、戻ってきてないんだよな?」
返事はなく、声の主は続けて尋ねる。
「もう捕まってるってことはないか?」
「黙れ」
別の誰かが、小声で言った。
「寝てろ」
「眠れねえよ」
「なら、目を閉じてろ」
また静かになった。
エドワードが寝返りを打つと、隣の者の膝にぶつかった。
相手は体を縮め、少し場所を空けてくれた。どちらも何も言わなかった。
エドワードは天井を見つめる。
午後の尋問で聞かれたことが、何度も頭の中を巡る。
白髪の少女、魔法、南区……
だが、目を閉じると浮かぶのは、前の晩の宴席で、間の抜けた顔で笑っていたフーティアの姿だ。
それから、そのあとの不器用な謝罪の言葉。
「うっとうしいな……」
彼は目を覆うように腕をのせた。
その夜、倉庫の中で本当に眠れた者は、ほとんどいなかった。




