08
「皆様、今日はアルの歓迎会兼初めて治療費を払わず戦闘を終えられた記念お使い会です。普段より贅沢出来る、という事で…乾杯!」
ウーゴの合図で俺等は乾杯をする。『会』とは言っても酒場では無く、宿舎の談話室に酒屋で安く仕入れた酒とテイクアウトの料理を準備しての即席の会である。俺は隣のウーゴと乾杯する。
「5体も倒れたのはアルのお陰だよ。勿論…。」
「3体も倒したのは俺だぞ!」
「アルのお陰で丸腰の背中を斬っただけだろ?」
ポロは声高々に手柄を主張するが、ウーゴは首を横に振る。
「勿論、アルのお陰ではあるけれど、今日は1人1人が役割を全うしてくれたからこそ倒せた。それはチームとしての成果だし、成長の証だよ。」
「アルブレヒト君のお陰で僕も初めて怪我せずに帰れて良かったよ。」
「クラウス、擦り剥いた膝は大丈夫か?」
「あれは…。」
最後転倒した事を弄られてクラウスは頭を掻く。
「まぁ、今日は沢山食べて飲むぞ。」
ウーゴが酒を飲干し、ポロも続く。
「ウーゴ。」
俺は酒を注足しに席を離れたウーゴを捕まえる。ウーゴは苦笑して頷くと酒を準備して、食卓とは離れた席に座る。
「2個言いたい事がある。」
「1個目は理解している。パメラの事を伝え損ねたのは俺のミス。反省しているよ。」
ウーゴは先手を打って謝罪する。
「マルティナ教官の訓練では歩くより遅く走っていて悪く目立っていたが、射士ビルドではそこまで目立ってはいなくてで…逆に俺の記憶の中のパメラは型通りの綺麗な矢を射ていたぞ。」
「射士ビルドのアヒム教官にも伺って、同じ報告を受けているよ。でも、戦場に出ると固まってしまって…アルに敵の注意が向けられて丸腰の背中であれば射る事も出来るか、と半ば期待しての今日ではあったのだけれど。」
「…言っておけよ。」
俺はパメラを責めた事にバツが悪くなる。
「エリシア、その肉取って!」
「ポロ、口の中見せないでよ。」
「煩せぇ。てか、その肉美味ぇぞ!」
卓ではポロが1人騒がしくしている。俺とウーゴは一瞬卓に目を送って、また視線を戻す。
「今度は、何かあれば必ずアルには言うよ。で、2個目は?」
「俺等のチームの最適解はゴブリン討伐かって話。」
「…流石アル。」
ウーゴが満足そうな表情で頷く。
「続けて。」
「…俺の『囮』は多数を対象とするが、俺は一気に多数をパリィ出来ないし、戦闘中に第2、第3の敵に発動して囲まれるのは危険だ。今日も実際、狂ったのは俺がパリィを失敗して盾で受けに回った後だし。」
「アル、素晴らしいよ。俺も同意見だ。」
「…同じ事思っているのであれば、最後まで言わせるなよ。」
「アルが今日の戦闘での事、自身の分析まで出来ている事を確認したくて。」
「…性格悪いぞ。」
「褒め言葉として受け取っておくよ。」
ウーゴは笑顔である。
「アルの言う通り、俺も今日の戦闘を見てもゴブリン討伐は最適解とは言えない。とは言っても、共同生活が出来る宿代が集まるまではこの町を離れる事も出来ない。冒険者組合でも俺等に最適な討伐対象に関して情報を集めてはおくけれど、取り敢えず慎重にゴブリン討伐を続けて、お金を貯める。これでも良い?」
「任せるよ、リーダー。」
俺はウーゴの肩を叩いて席に戻る。
「アルブレヒト君、ポロに食べられないように主役の料理残しておいたよ。」
戻るとクラウスは俺の皿に丁寧に食事を分けて盛り付けてくれていた。
「気を遣わなくて良いぞ。でも、ありがとう。」
「癖のようなもので。」
俺はクラウスに礼を言って食事を始めた。




