09
「良し、乾杯で。」
ウーゴの合図で、俺等は安酒場で乾杯する。
俺の加入後、ウーゴチームは順調にゴブリンを討伐して戦利品と途中の採集で、最低限生活して行くだけの資金集めが出来ていた。
「今日は少し今後の話をするよ。」
乾杯を終えて、ウーゴは切り出す。
「今の所、アル加入以降俺等は順調にゴブリンを討伐出来ている。でも時々失敗もする。失敗する時は大抵、4体以上のゴブリンを相手にしてアルとクラウスでも捌けなくなる時か、戦闘中もしくは戦利品の回収中に第2陣の急襲を受けた時。アルのお陰で前衛も後衛も攻撃し易くなって、ゴブリン討伐に繋がっているその恩恵は計り知れないけれど、アルの『囮』の影響で意図せぬ会敵があるのは欠点でもあり、俺等チーム全員の危険にも繋がり得る。」
ウーゴはそこまで話して討伐依頼書を出す。
「そこで、俺は拠点を変えて、別のモンスターをメインで討伐する事を提案する。場所は何れも周囲にあまり会敵が即死に繋がるモンスターが居なくて、依頼自体余っている田舎、ターゲットのモンスターは白等級でも受注出来て、集団では無く個々で棲息している奴に絞った。1個目は…。」
「お、ゴブ屋!」
ウーゴの会話は、酔った冒険者に絡まれて、意図せず途切れる。クラウスとエリシア、パメラは萎縮し、ポロは機嫌を悪くし始めた。
「…あ?」
「待て待て。最近、戦士をスカウトして漸くゴブ屋に昇格出来て、こうして酒場まで出て来て酒も飲めるんだ。あまり虐めるなよ。」
「そうか、ゴブ屋も立派な勲章か!」
「お前等あまり舐めた事言って…。」
ポロは立って、酔った冒険者2人を睨付け、ガンを飛ばす。
「お、孤高の剣士。」
「孤高って…。」
酔った冒険者の嘲笑の矛先はポロへ向く。
「自惚れ屋の自己中で、同期のチームに振られ続けて暫く1人で居たのを孤高って…。」
「その上偽善者に拾って貰う時も、孤高の剣士が入るのであれば…って辞退者も出たって話聞いているぞ。あまり恩人に迷惑掛けるなよ。」
シエラは決して広い町では無く、良くも悪くも噂は一瞬で広まる。酔った冒険者2人は、ウーゴとポロを見て嘲る。
「あ?」
ポロは怒りで酔った冒険者へ拳を向けたが、そこはウーゴが止めた。
「ポロ。」
「ウーゴ、止めるなよ!」
「言わせておけ。」
「おぉ、流石偽善者リーダー。」
「狂犬には手綱付けておけよ。リーダー。」
酔った冒険者はウーゴが止めに入った事で拍子抜けして席を離れて行く。ポロは暫くガンを飛ばし続けた後で、ウーゴの腕を振り払って座り、酒を煽ると店を出た。俺はポロの背中を見送り、温く不味くなった麦酒を煽る。
「…彼等も、銅等級の腕章で安酒場に来ている時点でお察しだよ。」
ウーゴは呟くと座り、酒を煽る。俺はウーゴを見た後に目を丸くしているエリシアと目を合わせた。
冒険者は組合の定める等級に応じての仕事を受注出来る。新人は白、以降銅、銀、金、白金、金剛と上昇して行く。銀は一人前の証、金は精鋭の証で、白金は金剛まで辿り着く冒険者は一握り、英雄、伝説の類である。
「…ウーゴ、今の話は本当なのか?」
「…まぁ、尾鰭は多少付いているけれど、大凡事実ではあるよ。アルも覚えていると思うけれど、ポロは空気読めなくて有名だったしね。」
俺の質問にウーゴは少し待って答える。
「でもまぁ、俺は剣士として、少しポロの心情は理解出来るよ。剣士をしている奴は大抵、憧れがあって世界一の剣豪を夢見ている。でも実際は自分より優れた剣士はゴロゴロ居て…そして現実を見る時が来る。」
ウーゴは少し遠くを見て酒を煽る。
その後宴会は早々に解散になり、俺等は宿舎へと帰る。ポロの部屋のランタンの灯りは付いており部屋はボンヤリと明るく見えた。




