06
「何でマルティナ教官の鬼特訓を受けている俺よりボロボロになって…。」
「…マルティナ教官、アルに甘いのか?」
宿舎へ戻ると、談話室にはウーゴとチームメイトが集まっており、独特の薬草の香りで溢れている。俺は顔を顰めて窓を開ける。
「…軽口言える内は大丈夫か。」
「アル、時間あれば薬草の軟膏塗ってくれよ。」
半裸で背中を見せて苦笑するウーゴ、そしてウーゴの横にはウーゴのチームの正式な戦士であるクラウス。クラウスも全身に痣と擦り傷があり、エリシアとウーゴのチームの射士であるパメラが軟膏を塗っている。
「何処の猛者に挑めばこうなる?」
「ゴブリン3体。内、討伐出来たのは2体。」
本来、養成学校を卒業すれば宿舎も退所して、チームで部屋を借りるか、1人1人家を持つが、ウーゴのチームは部屋を借りる金が無く、マルティナが次の養成学校生の来るまでを条件として、宿舎での生活を許可してくれている。
「…2体って言っても、内1体はウーゴがほぼ1人で仕留めてくれた1体だけどね。」
クラウスは長身を屈めて恐縮する。
身長は高くツェーザルにも匹敵するが、マルティナの基礎訓練の居残り常習犯で、『案山子』よりはマシ程度の実力と聞く。
「ポロは?」
「帰りに冒険者組合で煽られて、今は部屋で1人拗ねているよ。」
「相変わらず短気な奴…。」
「まぁゴブリン2、3体も倒し切れなくて、この怪我で帰って来ては…ね。」
俺はウーゴに軟膏を受け取り、容赦無く塗る。
「痛ぇ!アル、優しく塗ってくれよ。」
「優しくして欲しければエリシアとパメラの順番を待て。それに塗れば結果は同じだ。」
エリシアとパメラは揃って笑顔を見せる。
「…てか、珍しい軟膏。何処の?」
「あぁ、エリシアのお手製。お陰で治療費を削減出来て食費に回せているよ。」
「エリシア…凄。」
「そんな事ないです。実家が薬屋で。」
ウーゴは目の前にある帳簿と机にある端金を見て苦笑し、エリシアは謙遜する。
「パメラ、そこの包帯取って。」
「はい!」
俺はパメラに声を掛けて包帯を受け取り、ウーゴの軟膏を塗り終えて包帯を巻く。
「アルこそ、調子は?」
「…まぁ、マルティナ教官とカミロ先輩の指導のお陰で多少は。まだパリィも上手く出来ないし、剣に慣れないけれど。」
「早く俺のチームの戦力になってくれよ。」
「…まだ入るとは言ってないぞ。それに戦士の枠はクラウスで…。」
「そこは2人戦士体制で。」
「アルブレヒト君、僕からもお願いします。」
ウーゴは当然のように告げて、本来怒る所であるクラウスも俺の加入を懇願する。エリシアとパメラも俺を見つめて頷く。
「…反則だぞ。」
「何の話?」
ウーゴは涼しい表情である。
「…俺は射士になりたかった。」
「知っているよ。」
「それが叶わなくなって…お前に乗せられて今は戦士の訓練をしている。」
ウーゴは頷く。
「…使えなくても文句言うなよ。」
「…あぁ。あぁ、勿論!ようこそウーゴチームへ。」
湧く拍手、ウーゴは怪我をしているのも忘れて俺の肩を抱いて来る。エリシアは安心したように笑顔を見せた。俺はウーゴに肩を組まれる中で、この金欠の中で、どのようにして中盾と剣を揃えるかを想像するのであった。




