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「アル!」
ティーロックでの妖狐狩りの日々に慣れて来た頃、俺はその日緊張感のあるウーゴの声で目を覚ます。
「…何?」
「冒険者組合支部に赤旗が出ている。取り敢えず見て来る。出る準備をしておいてくれ。」
「了解。」
俺は慌てて体を起こす。冒険者組合支部の赤旗は緊急を知らせる合図である。俺はディアナとエリシアも目を覚ましているのを確認して、隣のポロを雑に起こす。
「アルブレヒトは居るか?」
「アル!」
ポロを起こしていると外で聞こえて来る、出て行ったはずのウーゴの声。俺はディアナ等と目を合わせて皆で家を出る。家を出るとウーゴの隣にはルシオクランの副長バルトルトが居た。更に、都市全体が慌しくしているのも感じる。
「…バルトルト様?」
「私はルシオ様よりアルブレヒトを連れて来いと言われて馳せ参じた。手伝ってくれ、アルブレヒト。」
バルトルトはアルバニー上で話す。
「ティーロック近郊でスタンピードが発生した。モンスターが異常に増えている上に、本来であれば森で暮らすモンスターがティーロックの近くまで現れている。今は人の多く集まるティーロックに集まって来ているものの拡散すれば、近くの町、村に被害が出る。ルシオクランは今クラン総動員で、ティーロックに滞在中のレグロ様にも助力を頂いて対応している。」
「…アースドラゴンの時と作戦は同じですね?」
「その通り。但し、アースドラゴンの時とは異なり、ティーロック周囲のモンスターを漏れ無く誘導する必要がある。前回同様作戦の肝はルシオ様が担当する。私はティーロックに残り、他の冒険者、駐屯している軍部と都市防衛に従事する。誘導場所にはルシオ様の精鋭部隊とレグロ様が居る。」
「了解です。ウーゴ。」
「気を付けて。」
「…アル、気を付けて。」
「エリシアも。お前等も無茶するなよ。特にポロ。」
俺はバルトルトのアルバニーに乗り、ウーゴ等と別れる。バルトルトは言うまでも無く射士装備を載せて来てくれており、俺は射士装備へ着替えた。
「アルブレヒト、久し振り。」
都市の門まで行くと、ルシオが待っている。俺はバルトルトに一礼してルシオと合流した。
「先日振りです。」
「覚悟は良いか?」
「勿論です。」
「…俺は正直勘弁して欲しいよ。」
ルシオは苦笑する。俺はルシオのアルバニーに乗り、ルシオは開門して外へ出た。
「これは…。」
煌々と照るティーロックの壁の外にはモンスターも普段は近付く事を避けるが、門を出るなり大小大量のモンスターが地面を埋め、蠢いているのが見えた。モンスターによる異臭が門の前までする。俺を視認したモンスターは一目散に俺へ向けて特攻して来た。
「行くぞ、アルブレヒト。」
ルシオはアルバニーを都市に沿って走らせて、モンスターを誘導する。俺は矢を射て、迫って来るモンスターを倒し続けた。
「アルブレヒト。今回無事に終われば俺等はティーロックの英雄になるぞ。ハラシュ様にもアホ程報奨金出して貰って、この冬はヌクヌクしようぜ。」
「…ルシオ様、余裕ですね。」
モンスターは無限に俺等を狙って来た。その中でもルシオは揚々として、背後の俺に声を掛けて来る。
「そんな事ねぇよ。それにアルブレヒト、お前個人としても、この間のアースドラゴンの件も含める2個目の偉大な功績を出した事になる。銀等級への昇格も見えて来るぞ。」
「…俺が…銀等級?」
「気張って行くぞ。」
俺とルシオは途中で疲れの見えるアルバニーを素早く乗り換えて2周、ティーロックを周り、多くのモンスターを誘導した。ルシオは門を見る。門の上ではバルトルトが合図を送っている。
「行くぞ、アルブレヒト。」
ルシオは笑顔でバルトルトに手を振ると、モンスターを大量に連れてティーロックを離れた。




