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「…レ、レグロ!」
ディアナが目を見開いて呟く。
「レグロ様、お越しで…。ルシオ様まで。」
「爺、お邪魔しているよ。」
レグロは穏やかな表情を店主に対して見せると俺へ向けて歩いて来る。金髪、青瞳のレグロは、その姿も含めて神々しく見える。そしてレグロの背後にはルシオ、相変わらず軽薄にも見える笑顔で俺に向けて手を振っている。
「よ、アルブレヒト。最近は妖狐狩りしているって?まぁお前を以てすれば、あれは只の狐か。」
「ルシオ様、御無沙汰しております。」
「初めまして、レグロです。」
「初めまして…ア、アルブレヒトです。」
「囮のアルブレヒトの事は耳にしているよ。特異なギフテッドを逆転の発想で利用する戦士で、射士としても、アースドラゴンの目を射抜く実力者と。」
「…それは。」
レグロは俺を見て告げる。俺もレグロを見た。レグロの名自体は有名、レグロは北側有数のクランであるレグロクランのリーダーで、国内の射士として3本の指に入る程の実力者である。
「初めましてレグロ様、アルのチームメートのディアナと申します。宜しければ矢を…。」
「勿論、良いよ。アルブレヒト君も良ければ。」
ディアナは柄にも無く興奮してレグロに近付く。射士の世界には尊敬する射士、師匠の矢を貰って御守りにしたり、飾ったりする文化がある。レグロは気さくに応じて、俺とディアナに自身の矢を贈ってくれる。
「…レグロ様。」
「何?」
「…そ、その矢羽は以前より?」
「綺麗でしょ?元々我々レグロクランがティーロックを拠点にしていたんだけど、後輩のルシオクランに覇権を奪われてしまってね。今のレグロクランは更に北で仕事をしているんだけど、矢だけはこの爺の矢が譲れなくて。この矢も矢羽も、以前より爺に作って貰っている特注だよ。」
レグロは俺を真っ直ぐ見て答えた。
「レグロ先輩、何を言って…勘弁ですよ。レグロクランに喧嘩売ったりしないですって。普通に負けます。後は任せたって余計な仕事まで押し付けてフラッと出て行ったの、レグロ先輩でしょ?」
「あれ…そうだっけ?」
「変な汗出て来ましたよ。」
「レグロ様、準備出来ております。」
「世話を掛けるね。感謝するよ。では。」
「ありがとう御座います、レグロ様!」
ディアナは礼を言って深々と頭を下げてレグロとルシオ、店主を見送り、貰った矢を眺める。
「アル、凄いよ。」
「…あぁ。」
「何だよ、テンション低いぞ?」
ディアナは俺の背中を叩いて、買物へ戻った。
「アル、ディアナ、お帰り。」
「エリシア、お土産買って来たぞ。」
ディアナ自身で使用する矢を購入し、帰りに菓子を買った俺等は、ティーロックでの拠点に戻る。拠点は暫く過ごすので宿では無く、テルアの時同様一軒家を借りて共同生活である。家に戻るとエリシアが共用スペースに居て、掃除をしてくれている。ディアナは菓子をエリシアに渡す。エリシアは俺とディアナの持っている矢を2度見した後で俺を見た。
「アル、その矢…。」
「お、エリシア!お目が高い。これは…。」
「アルの命の恩人の矢?」
「…え?」
「…恐らく。」
エリシアの発言にディアナが驚く。俺はエリシアに頷いてディアナに俺の過去を話した。
「成程、アルを昔救ってくれたのが、藍紫の矢羽の矢を装備した射士で、この矢はレグロ様の特注の矢…レグロ様に言えば良かったのに。」
「言ってどうする?それにレグロ様も何年も前に田舎村で救った少年の事を覚えては…。」
「…まぁ、それは。」
「でもアル…会えて良かったね。」
「あぁ。」
俺はエリシアの言葉に頷く。
「それにしても凄い縁。その矢も一生モノだな。」
「そうだな。ディアナのミーハーのお陰で俺も貰えたし大事にするよ。」
「別にミーハーでは…。」
ディアナが苦笑する。
俺は藍紫の矢羽の矢をじっくりと眺めた。




