03
「ウーゴ、お前昼間は善くも…。」
「まぁ怒るなよ、アル。」
甲冑を片付け、汗を流すべく行水をして、漸く宿舎へ戻った俺は、談話室で呑気にお茶をしているウーゴを見つけて詰め寄る。
「お陰で見えて来た事もある。」
ウーゴは涼しい顔で俺を見る。
「アル、改めて君をチームへ勧誘するよ。戦士として俺のチームに来てくれ。」
「戦士?…あぁ、成程。」
俺は合点する。
「俺を文字通り『囮』にするって事ね。」
「戦士であれば、そのギフテッドを活用出来る。」
「…何度も言わせるなよ。俺は射士だぞ。それに現に今日も甲冑に大盾では歩くのも精一杯で、あれでは囮では無く土嚢だぞ。」
俺は苦笑する。身長は同世代と比べても低く、射士として俊敏性を強化して来たので、筋力も他の冒険者に劣る。
「甲冑に大盾では無くて…。」
「ウーゴ、これ以上議論するつもりは無い。感謝はしているが放っておいてくれ。」
俺は離席して部屋を戻る。早くも腕が重く、俺は布団に体を投げて目を閉じる。
…暫くして聞こえるノック音。
俺は目を開け、溜息を吐く。
「ウーゴ、何度言われても!…エリシア?」
俺はウーゴのつもりで扉を開けて驚く。
扉の先にはウーゴでは無くエリシア。エリシアも扉の前で俺の反応に驚いて目を見開く。
私服で少し化粧もしているエリシアを見るのは初めてで、普段幼気無く見えるエリシアとは少し違って大人っぽく見える。
「悪い、ウーゴかと思って。てか、男子宿舎…。」
「あ!、あの…違くて。」
エリシアは耳を赤くして首を横に振る。
「アルブレヒト君に御礼がしたくて。」
エリシアは紙袋を俺に見せると、半ば押し付けるようにして渡して来る。
俺は思わず紙袋を受け取る。
「私…戦闘が怖くて、それで肝心な時にビンを投げられなくて試験も不合格になって…でも、今日はアルブレヒト君のお陰で合格出来ました。」
「…俺は別に。」
「今日も途中までは無理だと思ってました。でも、アルブレヒト君がゴブリンと戦っているのを見て私も逃げてはダメだと思って。それを伝えたくて。それではお邪魔しました!」
エリシアは最後逃げるように離れて行く。それでも最後は階段の手前で止まると、律儀に礼をして去って行った。
「…何なんだ?」
残ったのは、俺と紙袋、受け取ってしまった紙袋を見て取り敢えず開ける。中はハンカチのセット、俺は有難く受け取る事にして机に置く。
「俺のお陰で…か。」
俺はそのまま椅子に座り、今日の戦闘での一連の流れを頭の中で反復する。
「甲冑は重くて、大盾も取り回しが…軽ければ…何している、俺は。」
俺は頭を掻く。
エリシアが来る前は寝ている最中であった。
俺は布団へ戻る。
それでも頭が冴えてしまって寝付けず、俺は漫然と天井を眺める。
「軽ければ、或いは…。」
そしてまた、戦闘を反省するのであった。




