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俺等は今、ディアナの紹介で、ザルラバと砂漠地帯を離れて北上し、温泉で有名な観光業の町ロンゴへ、湯治へ来ている。ロンゴ自体は、地理上はテルアより2日程の場所で、折角の湯治であり、エリシアとディアナの配慮でパメラも現地集合にして、合流してくれている。
俺は湯に体を浸けて長く息を吐く。
跡は痛々しく見えるがエリシアの軟膏のお陰で早々に傷も塞がり、左腕を湯に浸けても大丈夫。後は実戦復帰へ向けて徐々にトレーニングを再開して行くようになる。
「極楽。」
隣でクラウスが巨体を伸ばす。
チームは俺を欠く中で仕事自体休止している。
そしてウーゴは俺を避けている。
「先に出るぞ。」
ポロは早々に逆上せて出ている。俺はクラウスを置いて温泉を出て、目の前にある店に寄り、名産である饅頭と茹で卵を買って帰る。
「ウーゴ。」
部屋に戻ると逆上せて寝ているポロと窓際で町の景色を眺めているウーゴ、女性陣3人は俺以上に湯治を満喫しているようである。俺は左腕でウーゴに饅頭を投げた。ウーゴは饅頭を納め、俺も座椅子に座って饅頭を食べる。
「ウーゴ、俺は腕の事、あの事故の事でお前を責めたりはしねぇ。但し、言いたい事があるのであれば言え。俺等は聞く。」
「…あぁ。」
久々のウーゴとの会話は気の抜けた声が返って来る。俺は饅頭を食べ終えると、次は茹で卵に手を出した。
「…皆、少し話がある。」
ウーゴが切り出したのは夕刻、全員部屋に戻って来ており、クラウスは寝ているポロを起こす。
「まずは直近の事を謝りたい。色々ミスをして、挙げ句の果てにはアルに怪我を…。」
「俺は気にしてねぇよ。」
「皆もお察しの通り兄のレオに遭遇して以降、調子が出なくて…少し長くなるけれど、俺の話を聞いて欲しい。」
ウーゴは話し始める。
「パメラの家と同じで、俺の家も軍部と冒険者の家系で、父のパウロは軍部の将軍で、兄のレオも部隊長をしている。姉のデボラは現国内唯一の白金等級冒険者のカンデラリオの率いる国内最大派閥のカンデラリオクランの一員で、若くして銀等級冒険者。言ってしまえば俺の家はエリート家系で…その中で俺は凡庸で…。」
ウーゴは言葉を切り、息を吐く。
「家柄のお陰で恵まれた生活は出来たけれど、父は早々に俺を身限り、王都の家に俺の居場所は無かった。周りの空気を読む事、身の丈を弁える事、それが、俺があの家で家族を必要以上に刺激しない処世術だったよ。15才になり、軍部に入る才能が無い以上、冒険者を目指す以外俺に選択肢は無かったけれど、王都の養成学校に入れば将軍の息子、デボラの弟として見られる。それは耐えられなくて…俺は王都を逃げるように離れてシエラへ来た。」
ウーゴは天を仰ぐ。
「兄のレオの言う通り…俺は家柄、家族、王都、全てから逃げ、結局俺は皆の為に作ったチームに見せかけて、皆の事を利用して俺が1番で居る事の出来る、1番になれるチーム…俺が俺の居場所を作りたかっただけで…。」
「何だよ、そんな事かよ。」
涙するウーゴに対してポロが告げる。
「冒険者はエゴの塊っしょ。俺は今も世界一の剣豪、諦めてねぇぞ。」
「ポロの世界一の剣豪は無理として…ウーゴの聖人君子には逆に心配していた程で、正直言ってウーゴも人間らしくて私は安心したよ。それに、私を救ってくれたのは間違いなくお前だ。」
ディアナも続く。
「そうだよ。そもそもウーゴがあの時誘ってくれなければ、僕等は冒険者になれていないし。」
クラウスの発言にエリシアとパメラも頷く。
「…お前がお前の為に作ったチーム、居場所は、俺等の大事な居場所でもある。今更変な事、気にするなよ、リーダー。」
俺はウーゴの肩を叩く。ウーゴはそれ以上は何も言わずに涙を流し続けた。




