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灰狼狩りもザルラバへの滞在も、夏の間は暑くて人気が無く、お陰で宿代も安く賄える。俺等は今日も灰狼を狩り終えて、月極で借りている宿に戻る。資金に余裕があり汗も籠るので、今回は男女完全に別の部屋である。
「汗を流して飯に行くぞ。」
「ウーゴ、俺は疲れた。飯買って来て。」
「行くぞ。」
ザルラバの宿はテルアの家とは異なり、高床で家の中の風が良く通るように設計してある。ウーゴは酷暑の影響で伸びているポロの背中を押し、ディアナとエリシアとも合流して、俺等は町へ出る。
「賑わっているぞ。」
「…軍部。」
俺は呟く。日干しレンガの家と、木造の家の乱立する今日のザルラバの町は賑わっており、『軍部』の制服を着ている人間で溢れている。
軍部は民間の冒険者とは異なり王国直轄の組織であり、王族の護衛、王都等各要所の守備、国益にに関わるモンスター討伐を担っている。
「砂漠都市ハーデヴァナティスへの道中か。」
「エリートが偉そうに!」
「…実際、僕等より偉大だよ。」
「喧嘩売るなよ。死ぬぞ?」
俺は軍部の人間を威嚇するポロに告げる。
「…ウーゴ?」
「…お兄様。」
アルバニーに乗る軍部の高官がウーゴを見て呟く。ウーゴは目を見開いて、その高官を兄と称した。良く見ればウーゴと目元が似ている。但し涼しい表情の中にも温和な雰囲気を出すウーゴに対して、ウーゴの兄は完全に冷えた雰囲気を感じる。
「…お前、何故?」
ウーゴの兄はウーゴの銅等級の腕章を見た後、俺等を一瞥する。
「お兄様、御無沙汰しております。」
「お前、今も剣士の真似事をしているのか?」
ウーゴの兄の目線は鋭くなる。ウーゴの兄自体、鋭利な圧を感じるが、アルバニーの上で角度もあり、より強く感じる。
「俺は言ったぞ。お前の剣術は至極凡庸で一家の恥晒しになる、剣を置け、と。」
ウーゴの兄の語気が強まる。ウーゴは黙って目を伏せる。ウーゴの兄はその目線で再度俺等を見た。
「それがお前の、シエラへ逃げて作ったチームか?」
「…そうです。」
「お前にお似合いのチームではあるが…己より更に凡庸な奴等を集めてリーダー気取りとは…呆れるよ。一流では無くても軍師学校へ行けばまだ見込めるものもあったものを。」
ウーゴの兄は深く溜息を吐く。
「お前のそのエゴは、お前の唯一の居場所であるそのチームを蝕むぞ。」
「レオ様。」
「待て。今、行く。」
ウーゴの兄、レオは不機嫌に軍部の人間に答える。
「愚弟に会えて良かったよ。では、失礼。」
レオはウーゴに背を向けて去った。何も言わず、目を合わせず、ウーゴは目を伏せ続ける。
「…ウーゴ?」
「…兄は手厳しくてね。」
レオが去ると、ウーゴは顔を上げ苦笑した。
「あまり兄の言う事は気にしないでくれ。空気を悪くして…飯に行くぞ。」
ウーゴはそう言うと珍しく先頭を歩く。
「…ウーゴの兄、相当な位の高官だぞ。」
俺とディアナはレオの去った先を見た。




