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「お帰り。大丈夫?」
「まぁ、明日ルシオクランのアースドラゴン狩りに同行する事になった程度で。」
「アースドラゴン!…程度で?」
ハラシュの取ってくれた宿は高級旅館で、ティーロックの現代建築と和の融合を感じる。既に浴衣へ着替えている皆に迎えられて答える俺、ポロは言葉を詰まらせ、他の皆を目を丸くしている。
「…大丈夫なのか?」
「恐らくは。それより風呂は?」
「先に入ったよ。大理石の大浴場。食事は御膳で運ばれて来るって。」
「俺も風呂入って来る。」
俺は1人で大浴場へ行く。正直先程参加した作戦会議での戦術眼、熱量、組織としてのレベルを目の当たりにして、負ける気はしなかった。
「アルブレヒト、眠れた?」
「ハラシュ様のお陰で良く眠れました。」
翌朝、俺はルシオ、ルシオクランと合流する。参加するのはルシオクランの大多数、8チーム合計60人程。多くは既に先行して準備を進めている。
「では、行くよ。」
ルシオはアルバニーに乗る。荷車を引く牛車の牛とは異なり、アルバニー早く走る事に特化している。東ではアルバニーの競争を賭けの対象とする娯楽もあると聞く。俺はルシオの背後に乗る。周囲には同じくアルバニーに乗るクランのメンバー、俺等はアースドラゴンの巣食っている山へ出発する。
「次!右、来るぞ!」
山に入ると、俺等は次々モンスターに襲われる。ルシオは左右のメンバーに指示を出し、モンスターを討伐し、最短コースを維持してアースドラゴンの巣へ走った。
「アルブレヒト、普段大変だな。」
「昨日の作戦会議でも申し上げた通り、手放しで使える便利技では無いので。」
俺は答える。
「着くぞ。」
「俺を認識すれば成立です。その後は…。」
「他のメンバーを気にせず逃げる。」
ルシオはそう言って丘の上に出た。山の窪地には深緑の鱗に全身と両翼を覆われたアースドラゴンが居る。ルシオは近くの岩を落とす。音が響いて、アースドラゴンは俺とルシオを見た。直後、アースドラゴンは目の色を変えて翼を広げる。
「行くぞ。」
アースドラゴンは飛翔して真っ直ぐ俺等へ向かって来た。ルシオはアルバニーの手綱を取って走らせる。俺は、揺れるアルバニーの上で体を反転し、ルシオに背中を預け、体幹と内股の筋肉をフルに使って体を固定してアースドラゴンと正対した。
近くで見るとその迫力は凄まじく、黄色の眼球に縦長の黒の眼光は鋭く俺を捉え続けている。独特の獣臭が鼻を刺す。
俺はアルバニー上で矢を構える。
素早く一矢、矢は鱗に当たり、跳ねる。
俺は一度天を見上げた後で再度矢を構えた。今度はすぐ射る事は無くタイミングを見る。
「森を抜けるぞ。」
ルシオが俺に合図する。この先の開けた場所はクランとの合流地点である。俺は森を抜けて視界が開け、逆光になるその瞬間を狙って矢を射る。矢はアースドラゴンの右眼に命中した。アースドラゴンは咆哮する。
「良いぞ、アルブレヒト。」
ルシオが笑顔で腕を上げる。合流地点まで来るとルシオをアルバニーを止めた。そしてアースドラゴンと俺の間に入り、ルシオの代名詞であるレイピアを抜く。
アースドラゴンは、そのままルシオへ特攻する。ルシオは体を素早くアースドラゴンの右下へ移してアースドラゴンの四角に入ると、レイピアで髭を斬り落とした。アースドラゴンは首を左右に振り、俺を追うのを一旦辞めて距離を取る。
「右側を狙え!眼はアルブレヒトが潰してある。」
ルシオはクランメンバーを鼓舞した。クランメンバーも呼応しアースドラゴンへ斬り掛かる。
後は終始、ルシオクランのペースで進行した。
爪も、噛付く攻撃も戦士が抑え、剣士等の前衛は絶えず動いて連携し、アースドラゴンを斬って行く。後衛は翼に集中して矢を放ってアースドラゴンを足止めした。俺はルシオの背後に立って死に行くアースドラゴンを見ているだけ。アースドラゴンは俺を見ているが、俺に辿り着く事は無く、息絶えて倒れた。
「ドラゴン殺しだぁ!」
湧くルシオクラン、ルシオは俺を振り返る。
「お疲れ様、アルブレヒト。」
「お疲れ様です。」
「アルブレヒトが右眼を射抜いてくれたお陰で、想定より楽に進める事が出来たよ。感謝する。」
俺は首を横に振る。
「俺こそ、特等席で素晴らしいクラン戦を見学出来て感謝します。」
「アルブレヒト、また同じような機会があれば誘わせてくれ。君のギフテッドは上手く使えば化ける。」
「是非。」
俺はルシオに頭を下げる。ルシオは俺に軽く手を振ると、大袈裟に両腕を挙げて、クランの仲間の元へ歩いて行った。




